ゴールマンのリーダーシップスタイル4

前回は階層別におけるリーダーシップスタイルの優先順位について見ていきました。

ここでは、リーダーシップの概念とリーダーシップスタイルの関係見ていきます。

概念とスタイル

上の図はリーダーシップの概念とリーダーシップスタイルの関係を可視化した図です。

Figure 1の構造

Flg1の構造は大きく3つの要素で構成されています。


1. リーダーシップの概念

リーダーがリーダーシップをどのように理解しているかを示した部分で、以下のようなキーワードが挙げられています。

  • 初級リーダー(First-level)
    • 「チームを導くこと」
    • 「人々を鼓舞すること」
  • 中級リーダー(Middle-level)
    • 「協働すること」
    • 「チームビルディング」
  • 上級リーダー(Senior-level)
    • 「組織の方向性を統一すること(Alignment)」
    • 「サーバントリーダーシップ(奉仕型)」
    • 「インスピレーションを与えること」

→ つまり、リーダーの階層ごとに、リーダーシップの定義が異なっていることを示唆しています。


2. 主要なリーダーシップスタイル

各階層のリーダーがどのリーダーシップスタイルを最も多用するかを示した部分です。

  • 初級リーダー
    • デモクラティック(民主的リーダーシップ)
    • コーチング(育成型リーダーシップ)
  • 中級リーダー
    • コーチング(育成型リーダーシップ)
    • アフィリエイティブ(関係重視リーダーシップ)
  • 上級リーダー
    • ビジョナリー(ビジョン提示型リーダーシップ)
    • アフィリエイティブ(関係重視リーダーシップ)
    • デモクラティック(民主的リーダーシップ)

→ これは、各階層のリーダーが適用するリーダーシップスタイルが異なり、役割に応じて変化していることを示しています。


3. 階層ごとのリーダーシップの進化

Flg1は、リーダーシップがどのように進化していくのか も示しています。

  1. 初級リーダー
    • チームを率いる・指示を出すことに重点 → より「協調型(デモクラティック)」のスタイルを採用
  2. 中級リーダー
    • チームの成長を促し、教育を担当 →「コーチング」や「アフィリエイティブ」を活用
  3. 上級リーダー
    • 組織全体の方向性を定める役割 →「ビジョナリー」や「アフィリエイティブ」を活用

つまり、リーダーがキャリアを積み、階層が上がるにつれ、より戦略的かつ長期的な視点でリーダーシップを行う必要がある ことを示しています。


概念とスタイルの意義

  1. リーダーシップの概念は階層ごとに異なる
    • 初級リーダー:「チームを導く」「鼓舞する」
    • 中級リーダー:「協働」「チームビルディング」
    • 上級リーダー:「組織の方向性」「奉仕」「インスピレーション」
  2. 使用するリーダーシップスタイルが階層によって変化する
    • 初級:デモクラティック・コーチング
    • 中級:コーチング・アフィリエイティブ
    • 上級:ビジョナリー・アフィリエイティブ・デモクラティック
  3. リーダーの成長とともに、リーダーシップスタイルが進化する
    • 初級リーダーは協調を重視
    • 中級リーダーは育成を重視
    • 上級リーダーはビジョン構築を重視

リーダー研修の視点からの活用

Figの示すリーダーシップの進化を理解することで、リーダー育成プログラムを階層ごとに最適化できる

階層研修のフォーカス
初級リーダーチームマネジメント、協調性向上、ファシリテーション
中級リーダーコーチングスキル、育成型リーダーシップ、部下の成長支援
上級リーダービジョン構築、組織戦略、リレーションシップマネジメント

Fig1のデータは、リーダーがどのように成長し、
どのスタイルを学ぶべきかを示すガイドライン となります。


まとめ

  • Fig1は、リーダーの階層ごとに「リーダーシップの概念」と「使用するスタイルの違い」を可視化したもの。
  • キャリアが進むにつれて、
    リーダーシップのスタイルが「協調型」→「育成型」→「ビジョン型」へと進化する。
  • リーダー研修では、各階層ごとに最適なスキルを育成することが重要。

このFig1の分析を活かせば、
リーダーシップ開発プログラムをより実践的かつ効果的に設計することが可能になります。

リーダーシップスタイルの詳細ランキング

Table 3a)では、医学教育における異なる階層のリーダー(初級・中級・上級)が
どのリーダーシップスタイルをどの程度使用しているかを、統計データとして示しています

特に、ゴールマンの6つのリーダーシップスタイル(ビジョナリー、コーチング、アフィリエイティブ、
デモクラティック、ペースセッティング、コマンド)のランキングの平均値が掲載されており、
階層ごとの違いを分析するのに役立ちます。

階層ごとのリーダーシップスタイルの平均ランキング

リーダー階層ビジョナリーコーチングアフィリエイティブデモクラティックペースセッティングコマンド
初級リーダー2.932.613.611.864.495.41
中級リーダー3.061.633.632.634.565.50
上級リーダー2.672.673.02.334.755.58

1. 平均ランキングの解釈

  • 値が小さいほど、頻繁に使用されているリーダーシップスタイルである。
  • 初級リーダーは「デモクラティック(1.86)」と「コーチング(2.61)」が最も多い
  • 中級リーダーは「コーチング(1.63)」が圧倒的に多く、デモクラティック(2.63)やアフィリエイティブ(3.63)も比較的よく使われる
  • 上級リーダーは「ビジョナリー(2.67)」と「デモクラティック(2.33)」が多く、より戦略的なリーダーシップを発揮

2. 階層ごとのリーダーシップスタイルの違い

  • 初級リーダー(学生・研修医)
    • 最も使用するのは 「デモクラティック」
      → チームメンバーと協調し、意見を取り入れる必要があるため。
    • 「コーチング」 も多用
      → 自分自身の成長だけでなく、チームの成長も意識している。
    • 「ペースセッティング(4.49)」や「コマンド(5.41)」はほぼ使用されない
      → 上から指示を出すスタイルではなく、協力型のリーダーシップが求められる。
  • 中級リーダー(教育プログラム責任者など)
    • 「コーチング(1.63)」が圧倒的に多い
      → メンバーの成長をサポートすることが重要視される。
    • 「アフィリエイティブ(3.63)」も比較的高め
      → 人間関係を重視し、良好なチーム環境を築く役割がある。
    • 「コマンド(5.50)」はほとんど使われない
      → 権威的な管理よりも、教育的なアプローチが必要。
  • 上級リーダー(学部長・副学部長)
    • 「ビジョナリー(2.67)」がトップ
      → 組織の方向性を示すことが求められる。
    • 「デモクラティック(2.33)」も多用
      → 組織内のさまざまな意見を調整しながら、戦略を決める役割。
    • 「ペースセッティング(4.75)」や「コマンド(5.58)」はほぼ使われない
      → トップダウンではなく、共感を持って組織を動かすことが重視される。

リーダーのクラスによりスタイルが使い分けられていることが明確になっています。
役職により仕事の内容が違うのは明らかですが、
私は、視座の違いもあると感じています。

例えば初級クラスにおいても、高い視座、
この論文の内容だと学部長クラスになると経営者としての視座が必要になってくるからだと考えられるからです。

あなたはどのようにお考えになりましたか。

最後までご覧いただきありがとうございます。

参考資料

Saxena, A., Desanghere, L., Stobart, K., & Walker, K. (2017). 『Goleman’s Leadership Styles at Different Hierarchical Levels in Medical Education』, 2025年2月1日アクセス. https://www.researchgate.net/publication/319922979_Goleman’s_Leadership_styles_at_different_hierarchical_levels_in_medical_education

ゴールマンのリーダーシップスタイル5へつづく