若手のビッグファイブと人間関係の問題2

前回は人間関係円環モデルについてお話を進めました。

ここでは年齢による対人変化とビッグファイブとの関連についてお話を進めていきます。

日本社会の変化ビッグファイブと対人関係の観点

日本も、トルコと同様に 伝統的な集団主義的価値観 から 個人主義的価値観 への移行が進行中と考えられます。
このような社会変化が、
ビッグファイブの性格特性(Big Five Personality Traits) および 対人関係の特性 にどのような影響を及ぼすか、
心理学的視点からお話を進めていきます。

1. 性別による対人関係の違いとビッグファイブの影響


(1) 日本における性別の違いと対人関係の特徴

一般的な傾向:

  • 男性より支配的・自己中心的(Hostile-Dominance) な対人関係を持ちやすい
  • 女性より共感的(Affiliative) で協調性が高い

近年の変化:

  • 女性の社会進出 により、従来の「従順・協調的」な役割が変化し、リーダーシップを取る機会が増加
  • 男性の価値観の変化 も見られ、「強さ」だけでなく「共感性(Empathy)」が求められるようになっている

ビッグファイブとの関連:

ビッグファイブ日本の男性の傾向日本の女性の傾向近年の変化
神経症傾向(Neuroticism)低め(感情の抑制)高め(ストレスの影響を受けやすい)男性の「メンタルヘルス意識」向上、女性のストレス増加
外向性(Extraversion)仕事や地位の面では高い社交面では高いが、伝統的には控えめ女性のキャリア志向の増加により、職場での外向性向上
開放性(Openness)やや低め(伝統的価値観を維持)高め(新しい価値観に適応しやすい)若年男性の価値観の多様化、柔軟性向上
協調性(Agreeableness)低め(競争社会)高め(対人関係を重視)女性のキャリア進出により、自己主張が増加
良心性(Conscientiousness)高め(責任感・計画性)高め(対人関係への配慮)男女ともにワークライフバランス意識の向上

※良心性は誠実性です。


2. 年齢による対人関係の変化とビッグファイブ

(1) 若年層(18〜22歳)

  • 対人関係の問題を多く抱え、未熟な部分が多い
  • 自己主張が強く、支配的になりやすい
  • 競争意識が強く、自己中心的な行動をとる傾向

ビッグファイブとの関連:

ビッグファイブ若年層の傾向
神経症傾向(Neuroticism)不安やストレスに敏感(特に受験・就活期)
外向性(Extraversion)社交的な場面では高いが、オンラインでは内向的な面も
開放性(Openness)高め(新しい技術や価値観を受け入れやすい)
協調性(Agreeableness)低め(自己主張を優先しがち)
良心性(Conscientiousness)低め(計画性に欠ける、衝動的)

(2) 若年成人期(23〜26歳)

  • 職場での適応が本格的に求められる時期
  • 対人関係のスキルが発達し始める段階(チームワークの重要性を理解)
  • リーダーシップと協調のバランスを取ることが課題
  • 自己主張しつつ、共感的な対応を学ぶ段階
  • キャリアに関する「試行錯誤」の時期(転職、昇進、専門性の選択肢を考え始める)

ビッグファイブとの関連

ビッグファイブ特性若年成人期
神経症傾向(Neuroticism)やや高め(ストレス耐性は向上するが、不安を抱えやすい) → 責任が増し、仕事のプレッシャーを感じやすい
外向性(Extraversion)上昇(職場や交友関係での活動が増加) → チームワークが求められるが、対人関係の悩みも増加
開放性(Openness)やや低下(現実的な価値観が強まる) → 新しい挑戦への意欲が減少し、安定志向へシフト
協調性(Agreeableness)向上(職場でのチームワークの重要性を理解) → 周囲に気を遣いすぎて、自己主張が難しくなる
良心性(Conscientiousness)大幅に向上(計画性、責任感の発達) → 完璧主義になりやすく、仕事量を抱え込みがち

(3) 早期成人期(27歳〜35歳)

  • キャリアの方向性を決定する時期(昇進・転職・専門職の選択)
  • リーダーシップを発揮しつつ、他者と調和を取る能力が高まる
  • 組織内での役割が明確になり、責任感が増す
  • 自己中心的な行動が減り、協調的・戦略的な人間関係を築く
  • ワークライフバランスの課題と向き合い始める(結婚・子育て・介護)

ビッグファイブとの関連

ビッグファイブ特性早期成人期
神経症傾向(Neuroticism)低下(ストレス耐性が向上するが、責任の重圧で再燃することも) → 管理職やリーダーの立場になり、ストレスが一時的に増加するケースも
外向性(Extraversion)仕事では高め、プライベートではやや低下 → 業務量増加によりプライベートの時間が制限される傾向
開放性(Openness)やや低下(現実的な思考が強まるが、環境変化に適応する必要あり) → 「新しい挑戦 vs 安定志向」の間で揺れ動く
協調性(Agreeableness)向上(人間関係の重要性を理解し、調整力が増す) → 上司と若手の板挟みになりがち
良心性(Conscientiousness)高め(責任感・計画性が強くなる) → キャリアの安定性が増すが、過剰な責任を抱え込むリスクも

3. 文化的要因と今後の方向性

  • 日本は「伝統的価値観」と「個人主義」の間にある
  • 若年層は個人主義的な価値観を持ちつつ、対人関係では「協調性」を求められる
  • 対人関係のスキルは、年齢とともに変化し、成熟していく
  • 個人の自由と集団の調和をどう両立するかが今後の課題

4. まとめ

  • 日本社会もトルコと同様に、伝統的な価値観から個人主義へ移行中
  • 性別による対人関係の違いは、文化の変化によって変容している
  • 年齢が上がるにつれて、責任感が増し、対人関係のスキルが向上
  • 日本の若年層は個人主義的価値観を持ちつつ、対人関係の協調性を求められる
  • ビッグファイブの観点では、年齢とともに良心性と協調性が向上し、神経症傾向が低下する

今後の課題

  • 個人主義と集団主義のバランス
  • 職場や社会における対人関係の変化への適応
  • メンタルヘルスとビッグファイブの関係

日本社会変化も伝統的な集団主義的価値観 から
個人主義的価値観 への移行が進行中であるという前提でお話を進めていきました。
私たちが受けてきた教育、
皆と同じであることが社会としては正しいという集団主義から個人主義へと変化しています。

この変化に私たちはどのように対応していけばいいのか、
策を講じるよりも、手をこまねいているだけの方が多数であることは否めません。
個性を活かすことができていない社会であるということです。

個性を活かすことの方が、生産性という観点から見ると、
より上がるのですが…
あなたはどのように感じますか。

次は、若手の年齢に合わせた施策について考えていきます。

最後までご覧いただきありがとうございます。

参考資料

Akyunus, M., Gençöz, T., & Aka, B. T. (2019). 『若年成人期における基本的な性格特性と対人関係の問題における年齢と性別の違い』, 2025年1月31日アクセス. https://doi.org/10.1007/s12144-019-0165-z

若手のビッグファイブと人間関係の問題3へつづく