若手のビッグファイブと人間関係の問題5

前回は若手(23歳〜26歳)に対しての施策についてお話を進めました。

ここでは若手(27歳〜35歳)への施策について解説していきます。

早期成人期(27〜35歳)の人材施策

心理学×マネジメント×対人関係円環モデルの視点から

1. 早期成人期(27〜35歳)の特性と課題


(1) 心理学的特性(ビッグファイブ)

27〜35歳は キャリアの確立期 に入り、組織での役割が大きくなる。
この時期の心理的特徴と課題を整理すると以下のようになる。

ビッグファイブ特性27〜35歳の傾向主な課題
神経症傾向(Neuroticism)低下(ストレス耐性向上)責任が増し、プレッシャーが再燃しやすい
外向性(Extraversion)仕事では高め、プライベートでは低下仕事中心の生活で対人関係が狭まる
開放性(Openness)低下(現実志向が強まる)新たな挑戦への意欲が減少、マンネリを感じる
協調性(Agreeableness)向上(チームワークを意識)上司と若手の板挟みになりやすい
良心性(Conscientiousness)高め(責任感・計画性が強い)過剰な責任を背負い、ワークライフバランスが崩れる

(2) 27〜35歳が直面する主な課題

📌 キャリアの方向性に迷いが生じる

  • マネジメント or 専門職 or 転職 の選択に悩む
  • 「35歳転職」リスクが高まる

📌 責任は増すが、権限が増えない

  • 意思決定権がない ため、ストレスが増加
  • 昇進の遅れ によるモチベーション低下

📌 成長の実感が薄れる

  • ルーチンワーク化し、学びの機会が減少
  • 新しい挑戦がしづらい 環境

📌 ワークライフバランスが崩れやすい

  • 結婚・子育て・介護 との両立が困難
  • 健康・メンタル不調 のリスク増

2. 早期成人期(27〜35歳)に有効な施策

心理学とマネジメントの視点から、リーダーシップ・キャリア発展・メンタルケア を支援する施策を4つの視点で整理する。


(1) キャリアの明確化と成長機会の提供

  • キャリアマップの作成(昇進・スキルアップの道筋を可視化)
  • 異動・社内転職の推奨(新しい挑戦の機会を提供)
  • 「35歳転職リスク」を抑えるキャリアセッション実施

期待効果

  • キャリアの方向性が明確になり、不安を軽減
  • 「転職 vs 社内成長」の適切な判断ができる

(2) 意思決定権とリーダーシップの強化

  • 「役職なしリーダーシップ」制度の導入(裁量権を持たせる経験を提供)
  • 意思決定トレーニング研修(マネジメントスキルの向上)
  • 小規模プロジェクトを通じたリーダー経験の積み重ね

期待効果

  • 「責任だけ増えて権限なし」のストレスを軽減
  • 将来の管理職候補の育成につながる

(3) 「学び直し(リスキリング)」の支援

  • 30代向けリスキリング補助制度の導入
  • 副業・社外活動の推奨(スキルの多様化を支援)
  • 社内研修制度を「20代向けから30代向け」に拡張

期待効果

  • 「今の会社で成長できる」という実感を持たせる
  • 転職市場でも評価されるスキルを獲得

(4) 柔軟な働き方の導入

  • 「27〜35歳向けフレックス勤務」制度の導入
  • 育児・介護支援制度の拡充
  • 在宅勤務の選択肢を増やす

期待効果

  • ライフイベントとの両立がしやすくなり、離職リスク低減
  • 働きやすさが向上し、エンゲージメント強化

3. 性別×対人関係円環モデルを踏まえた対応

(1) 男性向け施策

課題施策
リーダーシップを発揮したいが、調整力が不足リーダー研修+チームリーダー経験の提供
意思決定の機会が少なく、不満を抱えやすい意思決定シミュレーション+ロールプレイ研修
キャリアに対する不安が高まるキャリア1on1+転職・昇進相談サポート

(2) 女性向け施策

課題施策
調整役としての負担が大きいタスクシェア制度+プロジェクトマネジメント研修
評価に敏感で、自己主張がしにくいアサーション研修(適切な自己表現の習得)
ライフイベント(結婚・育児)とキャリアの両立に悩む育児・介護支援+リモートワーク推奨

4. まとめ

施策カテゴリ男性向け(支配傾向強め)女性向け(友好・調整傾向強め)
キャリアの明確化キャリアマップ+社内異動推奨スキルアップ研修+育児・介護支援
リーダーシップリーダー研修+意思決定トレーニングアサーション研修+タスクシェア制度
メンタルヘルスストレスマネジメント研修+キャリア相談心理的安全性の確保+リモートワーク推奨

心理的安全性 → ストレス軽減・成長促進
キャリアの明確化 → 離職率の低下・モチベーション向上
リーダーシップ経験の提供 → 将来のマネジメント層の育成
柔軟な働き方 → ワークライフバランスの確保


最終結論

27〜35歳は「キャリアの確立期」 であり、
適切な施策がなければ、離職・転職リスクが増大 する。
企業は、個別の特性や性別に応じた支援策を実施することで、
組織の成長と人財定着を促進 できる。

この年代は管理職層と一般の社員との狭間の時期です。
この年代の人財をどう活かしていくのかが、離職と定着に分かれてくるのではないでしょうか。

だからこそ勘と経験だけに頼ったマネジメントをするのではなく、
人財のデータを利用してパーソナライズなマネジメントや育成の施策を打つ必要があります。

あなたの組織やチームの人財は個性や特性を活かして楽しく仕事に向き合っていますか。
最後までご覧いただきありがとうございます。

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参考資料

Akyunus, M., Gençöz, T., & Aka, B. T. (2019). 『若年成人期における基本的な性格特性と対人関係の問題における年齢と性別の違い』, 2025年1月31日アクセス. https://doi.org/10.1007/s12144-019-016