
前回はマキシマイザーとサティスファイサーの選択における傾向についてお話を進めました。
選択肢が多すぎことにより選択した後でももっといいものを最高のものを求めるのが、
マキシマイザーでした、自分の選択したもので満足するのがサティスファイサーです。
なぜマキシマイザーは最高のものを求め続け、
サティスファイサーは自分の選んだもので満足するのでしょうか。
ものさしが違う
マキシマイザーとサティスファイサーは満足する基準が違うということです。
マキシマイザーは「他人の人生を生きる」タイプ!?
マキシマイザーは常に「他人と比べる」「もっと良いものがどこかにある」と思い続けてしまう傾向があり、
SNSや友達の選択・成功まで気になって、自分の決断に素直に満足できないのです。
自分なりのポリシーよりも、「客観的なベスト」「他人基準のベスト」を追いがち。
結果、後悔や満足度の低下、幸福度ダウン、そして“自分の人生”を生きている感覚が薄れる。
自分のポリシーがないと言っていいかもしれません。
サティスファイサーは「自分の人生の主役」タイプ
サティスファイサーは「自分の満足ライン」を持っていて、
他人がどうこうより「今の自分にとってOKか?」を大事にする。
だから選択肢が多くても、自分軸で「これで良し!」と納得できる。
他人と比べないから、後悔しにくいし、決断したあとの“幸福感”も高い。
まさに「ポリシー(自分なりのものさし)」をしっかり持った人、とも言えるのです。
後悔理論:後悔先に立たず
後悔理論って聞いたことのない人のために簡単に解説しておきます。
普通の経済学(期待効用理論)は「人は損得だけで選ぶ」と考えるけど、
人は“後悔したくない”生き物。「もしあっちを選んでたら良かった…」っていう“後悔”の気持ちが、
実はめっちゃ意思決定に影響してるんだよ、というのが後悔理論です。
身近な事例
身近な事例でいくと、
就職活動:A社とB社で悩んでA社に入社。でも数年後B社が急成長してたら
「B社にすれば良かった…」と後悔→転職市場での行動に影響!
恋愛:告白しようか迷ってしなかった。でも後日、
その人が他の誰かと付き合ったと知って
「やっぱり告白しておけば…」と激しく後悔→次の恋で思い切り行動(笑)
ショッピング:「あの時セール品を買っておけば…」「限定グッズ、買い逃した…」
も全て後悔理論的な現象!
マキシマイザーはこの後悔したくないという気持ちが大きいと考えられます。
ビッグファイブとの関連
【1】誠実性(Conscientiousness)
- 誠実性が高い人ほど、マキシマイザー傾向はやや高い
→ ただし「自分の基準でベストを求める(自己管理型)」傾向が強い - サティスファイサーにも誠実性が高い人が多いが、“こだわり過ぎない柔軟さ”を持つタイプも多い
【2】神経症傾向(Neuroticism)
- 神経症傾向が高い人はマキシマイザー傾向がかなり高くなりやすい
- 「選択後の後悔」「不安」「比較」などに強く反応しやすい
- マキシマイザーの“後悔しやすさ”や“満足できなさ”と強くリンク
【3】開放性(Openness)
- 開放性が高い人は新しい選択肢や経験を求めるので、マキシマイザー傾向がやや高まることがある
- ただし“比較地獄”にはなりにくく、楽しさ・ワクワクで選ぶ傾向
【4】調和性(Agreeableness)
- 調和性が高い人はサティスファイサー寄り
- 他人の意見や和を大事にし、ほどほどに満足しやすい
【5】外向性(Extraversion)
- 外向性はどちらにも明確な偏りなし(研究によって差が小さい)
ではどうすれば選択地獄から抜け出していけるのか。
それは自分に軸を持つことです。
多くの人は自分に軸がないために、他人の人生を生きてしまいます。
自分に軸があれば自分が主役になるため、自分の選択で満足が得られるのです。
自分に軸を作るには
まず自分がどんな傾向があることを知ることです。
それにはマキシマイザースケールとリグレットスケールで自分の状態を知ること。
自己決定論からの考えになりますが、自分に軸がないということは、
マキシマイザー(最大化志向)の「幸せ迷子」現象から考えると、
「自分の軸=自律性」が弱いことに原因があるということです。
SDT的「マキシマイザーはなぜ幸せ迷子になるのか?」
※SDTとはSelf Determination Theory(自己決定論)の略です。
① 自律性が低い
他人軸(SNS・世間・レビュー・比較)で目標や選択を決めている
→「本当は何がしたい?」ではなく「どれが一番評価される?どれが流行ってる?」で動く。
自分で選んだつもりでも、実は他人の評価フィルターがかかってる。
② 動機が「外発的」
「自分を高めたい!」よりも「他人より上に見られたい」「損したくない」が先にくる。
動機が「比較優越」や「承認欲求」寄りで、“自分ごと”になってない
→これってSDTでいう「introjection(取り込み)」とか「外的規制」っぽい動機。
③ 関係性の質が“他人の目重視”
「人からどう思われるか」にエネルギーを使いすぎ。
→承認不安・FOMO(取り残され不安)が強い状態。
本当の「つながり」や「安心」は感じにくい。
④ 「あなたらしさ」=自己受容・自律性が確立してない
「みんなの正解」を探しすぎて、「自分なりの幸せ」を感じる時間や余白が少ない。
その結果、選択後も「もっと良いのがあったかも…」と後悔・迷い・満足感の低下により、
幸せ感が失われているのです。
誰かの正解を求めているから、“幸せ迷子”になっているのです。
他人が主役の人生ではなく、あなたらしく生きることが、
幸せ体質へとあなたを変えていくのです。
まずは「自分で納得して選ぶ」小さな習慣から始めることです。
(例:今日のランチ、何食べたい?を自分軸で決めてみる)
そして、「なぜそれを選びたいのか?」を自分に問うこと、
(他人軸じゃなく“自分の理由”を掘り下げる)
最後に「SNSや世間の正解」より「自分が心地よいもの」に意識を向ける。
これらを意識して自分の生活に落とし込んでいくことで、
自分の軸を作っていってください。
それがマキシマイザーから自分の選択に満足できるサティスファイサーに近づいていくのです。
最後にマキシマイザースケールとリグレットスケールを載せておきます。
Maximization Scale(全13問)
- 選択を迫られると、他にどんな可能性があるか、すぐには思いつかなくても想像しようとする。
- 今の仕事にどれだけ満足していても、もっと良い仕事がないか常に探すのが当然だと思う。
- 車でラジオを聴いているとき、今の番組に満足していても、他の局にもっと良い番組がないかチェックしてしまうことがよくある。
- テレビを見るとき、ひとつの番組を観ていても、他のチャンネルをザッピングしてしまう。
- 恋愛や交友関係は服選びと同じで、完璧に合うものを見つけるまでいろいろ試すべきだと思う。
- 友人へのプレゼントを選ぶのはいつも難しいと感じる。
- ビデオ(映画)をレンタルするとき、最高の一本を選ぶのに毎回苦労する。
- 選択を迫られると、他にどんな可能性があるか、すぐには思いつかなくても想像しようとする。(※1と同じ、原論文どおり)
- 私はマキシマイザー(最高主義者)だと思う。
- 二番目で満足することは絶対にない。
- 間違った決断をしないか普段から心配することが多い。
- 買い物で完全に満足できなかった場合は、もっと良いものを探し続ける。
- 決断した後も、「本当にこれがベストだったのか」と不安になる。
Regret Scale(全5問)
- 私は何かを選択した後、他の選択肢がどうなったかについて情報を集めようとすることが多い。
- 私が決断し、それがうまくいった場合でも、「これがベストな選択だったのか」と感じてしまう。
- 自分の人生の進み具合を考えるとき、よく他人と比較して自分を評価してしまう。
- どんなに良い選択をしても、「他にもっと良い選択肢があったのでは」と気になってしまう。
- 一度決めたことでも、「他にもできたことがあったのでは」と考え続けてしまう。
いかがでしたでしょうか。今回は自分が幸せなのか、
自分らしく生きているかを考えてもらえる内容であったかと個人的には思っています。
VUCAの時代は先が読めない変化が早く、どうすればいいのか迷ってしまう時代です。
だから人は楽な方に流されて、他人がいいとするものを選択してしまう傾向があるのかなと。
だから、他人がいいと言っているものが正しいとなってしまいがちですが、
それって本当にあなたにとってあなたを幸せにするものなのかを考えて欲しいです。
自分に軸があれば、本当に自分にとって大切であり、幸福を感じる選択が可能になります。
それはどんなことについても言え類ことです。お金にしてもキャリアにしても、
何か重要なことを決める際には自分の軸、ポリシーが大切になってきます。
あなたは自分に軸がありますか。
最後までご覧いただきありがとうございます。
参考資料
シュワルツ, B., ウォード, A., モンテロ, J., ライセス, S., & ベンジャミン, I. (2002).
『Maximizing Versus Satisficing: Happiness Is a Matter of Choice』, 2024年6月22日アクセス.
https://www.researchgate.net/publication/11048743_Maximizing_Versus_Satisficing_Happiness_Is_a_Matter_of_ChoiceDeci, E. L., & Ryan, R. M. (2000). 『The “What” and “Why” of Goal Pursuits: Human Needs and the Self-Determination of Behavior』, 2024年6月30日アクセス. https://www.academia.edu/76430355/The_What_and_Why_of_Goal_Pursuits_Human_Needs_and_the_Self_Determination_of_Behavior
ベル, D., & フィッシュバーン, P. (1982). 『Regret Theory: A New Foundation』, 2024年6月30日アクセス. https://ideas.repec.org/a/eee/jetheo/v172y2017icp88-119.html