この研究は、ビッグファイブ性格特性(外向性、情緒安定性(神経症傾向の逆)、
調和性、誠実性、経験への開放性)が職務遂行にどのように影響するかを、
職種や職務基準ごとに分析しています。
対象は、様々な職種とパフォーマンス基準のデータを基に行われました。
ビッグファイブ分析で向いている職業がわかる?
研究の方法
- 1952年から1988年までの231件の研究をメタ分析。
- 測定誤差を補正し、正確な相関値を算出。
この研究は、性格特性が職務遂行に与える影響を定量的に評価し、
特性ごとにどのような場面で有効かを明らかにしています。
調査対象
ビッグファイブ性格特性:
外向性:社交的、積極的、話し好きなど。
情緒安定性:不安が少ない、ストレス耐性がある。
調和性:柔軟性、協調性、信頼感。
誠実性:計画性、責任感、勤勉性。
経験への開放性:知的好奇心、柔軟な思考。
職種分類:
専門職
警察官
管理職
営業職
熟練/半熟練労働者
評価基準:
職務遂行能力(仕事の熟練度、実績)
訓練遂行能力(トレーニングや研修での成果)
人事データ(給与、離職率、在職期間など)
主な発見
- 誠実性:
- 全職種および全評価基準において、一貫して職務遂行の有効な予測因子。
- 責任感や勤勉さなどの特性が、あらゆる職種で成功に寄与。
- 外向性:
- 管理職や営業職など、対人関係が重要な職種で有効な予測因子。
- また、訓練遂行能力とも高い相関を持つ。
- 経験への開放性:
- 訓練遂行能力に対して有効な予測因子。学ぶ意欲や柔軟な姿勢を示す特性が影響。
- 調和性:
- 職務遂行との関連性は低い。
社交性や協調性が重視される職種でも予測因子としての影響は限定的。
- 職務遂行との関連性は低い。
- 情緒安定性:
- 職務遂行との相関は、誠実性に比べて弱い傾向。
ただし、不安やストレスを感じやすい職種では、
逆の相関が観察される場合も。
- 職務遂行との相関は、誠実性に比べて弱い傾向。
- 主観的評価と客観的評価の違い:
- 主観的評価(上司によるパフォーマンス評価など)の方が、
性格特性との相関が強い傾向。
- 主観的評価(上司によるパフォーマンス評価など)の方が、
実務への示唆
- 採用や人材育成では、誠実性の高い人材を重視することが、
職務遂行の向上に有効。 - 外向性や経験への開放性は、
対人スキルが必要な職種や研修プログラムにおいて重要な特性。 - 調和性や情緒安定性は、
特定の職種や条件でのみ効果がみられる。
各特性の職務遂行における関連性
- 誠実性 (Conscientiousness):
- 全職種において最も一貫した予測因子。
- 責任感、勤勉性、計画性が高い個人は、ほぼすべての職務において成功する傾向。
- 重要性が高い職種:
- 専門職、警察官、管理職、営業職、熟練労働者など全般。
- 外向性 (Extraversion):
- 対人関係が重要な職種で高い関連性。
- 社交性や積極性が求められる職務で成功しやすい。
- 重要性が高い職種:
- 営業職:顧客対応が多く、社交性が重要。
- 管理職:チームの調整やコミュニケーション能力が求められる。
- 経験への開放性 (Openness to Experience):
- 訓練遂行能力において高い関連性。
- 学習意欲や新しいアイデアへの柔軟性が必要な業務で有用。
- 重要性が高い職種:
- 専門職:新しい知識やスキルを学ぶ必要が多い。
- 技術職:変化する環境に適応する必要がある場合。
- 調和性 (Agreeableness):
- 職務遂行との直接的な相関は低い。
- ただし、チームワークが重視される環境では有益。
- 重要性が高い職種:
- チーム作業が中心の職種(例:介護職、医療職など)。
- 情緒安定性 (Emotional Stability):
- 不安やストレスが少ないことが、特定の職務で成功に貢献。
- 不安の多い環境やリスクの高い業務では重要。
- 重要性が高い職種:
- 警察官:プレッシャーの中で冷静に行動する必要がある。
- 管理職:安定した意思決定が求められる。
職務別に必要な特性のまとめ
- 営業職:外向性と誠実性が高いと有利。
- 管理職:外向性、誠実性、情緒安定性が重要。
- 専門職:誠実性と経験への開放性が成功に寄与。
- 警察官:誠実性と情緒安定性が鍵。
- 熟練労働者:誠実性が最も重要。
このように、職種ごとに求められる性格特性の優先順位は異なりますが、
誠実性 (Conscientiousness) は全職種で重要性が高いことが明らかです。
この分析は、職場でのパフォーマンス向上や採用基準策定に活用できます。
分析結果の応用例
- 採用と選考:
- 誠実性の高い候補者を優先することで、幅広い職務での成功可能性を高める。
- トレーニングプログラム設計:
- 訓練成果を高めるために、経験への開放性が高い人材を特定。
- 管理職育成:
- 外向性や情緒安定性を基にしたリーダーシップ評価を実施。
このように、この研究は性格特性を職務遂行の予測因子として使用する可能性を広げ、
実務に役立つ具体的な基盤を提供しています。
ビッグファイブ特性と適職の関係
この分析結果を基に、各性格特性がどのような職種で役立つかを以下にまとめます。
- 誠実性 (Conscientiousness):
- 特徴:責任感が強く、勤勉で計画性がある。
- 適職:ほぼ全ての職種で成功を予測する指標。
- 例:専門職(弁護士、医師など)、管理職、事務職、営業職。
- 理由:仕事に対する姿勢が一貫して重要であるため、幅広い職種に適用可能。
- 外向性 (Extraversion):
- 特徴:社交的で積極的、対人スキルが高い。
- 適職:対人関係が重要な職種。
- 例:営業職、カスタマーサービス、管理職、広報職。
- 理由:人との交流やリーダーシップが求められる環境で強みを発揮。
- 経験への開放性 (Openness to Experience):
- 特徴:新しいアイデアや経験に柔軟で好奇心旺盛。
- 適職:創造性や柔軟性が求められる職種。
- 例:研究開発職、クリエイティブ職(デザイナー、ライターなど)、教育職。
- 理由:変化の多い環境や学習が必要な職務で適応力を発揮。
- 調和性 (Agreeableness):
- 特徴:協力的で信頼感がある。
- 適職:チームワークが重視される職種。
- 例:介護職、医療職、人事職。
- 理由:他者との協力が重要な環境で役立つが、個別の成果を求められる職種では限定的な影響。
- 情緒安定性 (Emotional Stability):
- 特徴:ストレス耐性があり、不安が少ない。
- 適職:高いプレッシャー下での仕事。
- 例:警察官、消防士、管理職。
- 理由:安定した判断力が求められる状況で有効。
適職を予測する仕組み
ビッグファイブ特性を基に適職を予測する際には、次のような流れが考えられます。
- 性格診断を実施:
- ビッグファイブ分析で個人の性格特性を数値化。
- 特性ごとのスコアを基に、強みと弱みを把握。
- 職務要件とのマッチング:
- 各職種が求める特性(例:営業職では外向性が高いほど有利)と診断結果を照合。
- 適職の提案:
- 分析結果を基に、適性の高い職種を提案。
- 職務での発揮可能性を検証:
- 提案された職種での実際のパフォーマンスを確認し、フィードバックを活用。
ビッグファイブ分析では適職をある程度予測できると言えます。
その根拠を解説していきます。
なぜ「適職がわかる」と言えるのか
- 科学的根拠に基づく予測:
- 本研究のようなメタ分析により、
特性と職務遂行の相関が明らかになっているため、予測の信頼性が高い。
- 本研究のようなメタ分析により、
- 応用可能性の広さ:
- 誠実性は全職種で有効性が確認されているため、
どの職種が適しているかを検討する起点として利用可能。
- 誠実性は全職種で有効性が確認されているため、
- 実務への効果:
- 採用、配置、キャリア設計の場面で、
性格特性を適職の判断材料として活用する企業が増えている。
- 採用、配置、キャリア設計の場面で、
注意点
ただし、「適職がわかる」といっても以下の点に留意する必要があります:
- 性格特性だけでは不十分:
- スキル、経験、興味、価値観なども重要な要素。
- 環境との相性:
- 職場文化やチーム構成が、職務遂行に与える影響も大きい。
結論
ビッグファイブ分析を用いることで、
適職をある程度予測することは可能です。
ビッグファイブ分析を活用することで、適職を予測し、
自社にマッチした人財を見極め、適材適所に配置することが可能です。
ミスマッチングは1人あたり約200万円の損失に繋がり、
多くの企業ではこのように、経費を有効に使えていない場合が多いのではないでしょうか。
出典:エン転職「早期離職のコスト損失はどれくらい? 費用項目と金額の目安を解説」
特に中小企業では採用した人財を活かすことが重要で、
ビッグファイブ分析はとても有効なツールといえます。
最後までご覧いただきありがとうございます。
参考資料
バリック, M. R. & マウント, M. K. (1991). 『THE BIG FIVE PERSONALITY DIMENSIONS AND JOB PERFORMANCE: A META-ANALYSIS』, 2024年11月12日アクセス. https://x.gd/WVoZp
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