今回はダークとアライド特性が他者を操作して利益を得るという内容についてのお話です。
マネジメントにおいては諸刃の刃を持つと言っても過言ではありません。
しかし、使い方により組織をより良い方向へ導く特性でもあります。
拳銃も使う人によって変わるように、どのような特性かを知れば、
非常に有効であると考えています。
孫氏の兵法「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」です。
この研究では、大学生210名を対象に、
Dark Triadの特性と他者操作方略(行動や感情の操作)との関連性を調べることを目的としています。
パーソナリティ特性「Dark Triad(ダークトライアド)」とは
- マキャベリアニズム (Machiavellianism)
- 特徴: 他者を冷笑的かつ計算的に操作し、自分の利益を最大化しようとする性格。
- 代表的な行動: 説得、情報の隠蔽や開示、機嫌を取るなど。
- 自己愛傾向 (Narcissism)
- 特徴: 自分を過大評価し、賞賛や注目を求める性格。
- 代表的な行動: 自己の成功を誇張したり、他者からの賞賛を求める操作的な行動。
- サイコパシー傾向 (Psychopathy)
- 特徴: 共感性が低く、反社会的な行動を取る性格。
- 代表的な行動: 他者の心理状態を操り、罪悪感や同情を引き出す行動など。
これらの特性は互いに正の相関を持つとされており、
自分の利益のために他者を操作する「他者操作性 (manipulation)」と密接に関連しています。
研究では、これらの特性がさまざまな操作行動とどのように関連するかが詳しく検討されています。
互いに正の相関を持つとは?
心理学の研究において、「正の相関 (Positive Correlation)」とは、
2つ以上の変数が同時に増減する関係を意味します。
つまり、ある特性のスコアが高い場合、
他の特性のスコアも高くなる傾向があることを示します。
心理学的な解釈の深掘り
- 理論的背景:
- この正の相関は「ダークパーソナリティの核 (Core of Darkness)」という考えに基づきます。
- パーソナリティ研究では、これら3つの特性が自己利益の追求、
他者の操作、共感性の欠如など、共通の行動パターンを持つとされています。
- 重要な点:
- ただし、これらの特性が常に一緒に高くなるわけではありません。
- 個々の特性は異なる目的を持つため、
特性ごとに操作方略や行動パターンが異なる場合も多いです。
Dark Triadにおける正の相関の意味
「Dark Triad(ダークトライアド)」の特性(マキャベリアニズム、自己愛傾向、サイコパシー傾向)は、
それぞれが個別の性格特性ですが、心理学の研究ではこれらが互いに「正の相関」を示すことがわかっています。
具体的な意味
- マキャベリアニズム × サイコパシー傾向:
- マキャベリアニズムが高い人は、サイコパシー傾向も高い可能性がある。
- 理由: 両方の特性が冷酷で他者を操作することを正当化するため、
共通の操作的行動が見られます。
- マキャベリアニズム × 自己愛傾向:
- 自己愛が強い人は、自分の利益を最大化するために、
マキャベリアニズム的な行動を取ることがある。 - 理由: 他者を支配し、賞賛を得るためには巧妙な操作が必要な場合が多い。
- 自己愛が強い人は、自分の利益を最大化するために、
- 自己愛傾向 × サイコパシー傾向:
- 自己愛が強い人は、他者に対する共感が低くなる場合があり、
結果としてサイコパシー傾向と関連する。 - 理由: 自己中心的な行動を取る人は、
他者の感情を無視する傾向があるためです。
- 自己愛が強い人は、他者に対する共感が低くなる場合があり、
心理学的回答
心理学の研究において、
マキャベリアニズム、自己愛傾向、
サイコパシー傾向が「正の相関」を持つとは、
これらの特性が単独ではなく、
組み合わさることでより強力な操作行動や反社会的行動の予測因子となることを意味します。
個別の特性は異なる動機を持ちますが、
操作的な行動や共感性の欠如といった「共通する性質」が、
3つの特性の重なりを生んでいるのです。
マキャベリアニズムとサイコパシー傾向の操作方略の例
1. 上からの支配的な操作 (自己優越的操作)
- 例:
- マキャベリアニズム:
他者に仕事を引き受けさせるために、状況を巧みに操作して「断りにくい」雰囲気を作る。 - サイコパシー傾向:
他者を威圧する態度を取り、強引に自分の要求を通す。
- マキャベリアニズム:
2. 劣位を装う操作 (自己卑下的操作)
- 例:
- マキャベリアニズム:
自分の欠点を強調し、「助けが必要だ」と装うことで他者に助けさせる。 - サイコパシー傾向:
自分が被害者であるかのように振る舞い、同情を引いて他者からの支援を引き出す。
- マキャベリアニズム:
自己愛傾向の操作方略の例
主に自己優越的な感情操作(自分を良く見せるための操作)と関連しています。
自己優越的な感情操作 (自分を良く見せるための操作)
- 例:
- 成功した話を過大にアピールし、周囲から賞賛を得ようとする。
- 自分の価値を過剰に主張し、他者に「すごい」と思わせる。
これらの操作方略は、行動操作(他者の行動を変えさせる)と
感情操作(他者の気持ちを変えさせる)の両面で行われ、
異なる性格特性に応じた操作パターンが示されました。
研究の結果、マキャベリアニズムとサイコパシー傾向は幅広い操作方略に関与し、
自己愛傾向は主に自己評価を高める行動に限定されることがわかりました。
いかがでしたでしょうか、
ダークトアライド特性による他者への感情操作方法についてみてきました。
どんな人物像を想像したでしょうか。
映画でいうと、わたしは「羊たちの沈黙」のレクター博士を思い出しました。
何事も良い悪いということはなく、どの方向から見るかで、
よくもなり悪くもなります。
立場によって正義か悪か変わるかのようにです。
次回は組織でこの特性を活かす方法についてもみていきます。
最後までご覧いただきありがとうございます。
参考資料
下司忠大・小塩真司(2019). 『Dark Triadと他者操作方略との関連』, パーソナリティ研究, 第28巻 第2号, pp. 119-127. 2024年12月19日アクセス. https://doi.org/10.2132/personality.28.2.3
「Dark Triad」と「他者操作方略」の関係性2へつづく