日本でもギグワーカーやギグエコノミーは
拡大を目指している状況があります。
特に、労働力不足や経済のデジタル化が進む中で、
企業は柔軟な労働力を求めるようになっています。
ギグワークは短期的でフレキシブルな仕事を提供するため、
さまざまな業種・業態で利用が拡大しています。
ギグワーカーの活躍どれくらいいるのか
推定人数ギグワークが急成長している中、
フードデリバリー(Uber Eatsや出前館など)や
個人のクリエイティブ業務(デザイン、プログラミング)に
携わるギグワーカーが増加しています。2023年の推定では、
ギグワーカー全体の人数は約300万人とも言われています、
これは、日本の労働人口の約5%に相当します。
出典:Nippon.com | Your Doorway to Japan.“The Gig Economy Reaches Japan”.2020/5/8(閲覧日:2024/9/9)
1. 主要な業種・業態
日本でギグワーカーが活躍している業種や業態は以下の通りです:
a. 配達・デリバリー業
コロナ禍で急成長したのが、
フードデリバリー(Uber Eats、出前館など)や
荷物配送(ヤマト運輸や佐川急便との提携による個人配送など)です。
これらのサービスは短期的かつ即時的な労働力を必要としており、
個人が時間に合わせて働けるギグワークが主流になっています。
b. ライドシェア・交通業
アメリカなどではUberやLyftなどのライドシェアサービスが盛んですが、
日本では規制が厳しいため、ライドシェアサービスは限定的です。
それでも、一部でタクシー業界などとの協業が進んでおり、
ギグワーカーが短期的に活躍できる場があります。
c. クリエイティブ・デジタル系
ウェブデザイン、プログラミング、ライティング、
翻訳などのデジタルサービスは、
オンラインプラットフォームを通じて
ギグワークが活発に行われています。
クラウドソーシングサービス(Lancers、クラウドワークスなど)が
この分野を支え、クリエイティブ系の仕事や技術職が多くの
ギグワーカーに機会を提供しています。
d. 家事代行・個人サービス
掃除や料理、ベビーシッティング、
介護補助など、個人向けのサービスもギグワークの
一環として提供されています。
これらのサービスは、時間や内容に応じて柔軟に
対応できるため、家事代行やケアの分野でも広がっています。
2. ギグエコノミー拡大の要因
日本でギグエコノミーが拡大している背景には以下の要因があります:
労働力不足:
人口減少や高齢化によって、特に労働集約型産業ではフレキシブルな労働力が必要とされている。
デジタルプラットフォームの進展:
クラウドワークスやLancersなどのプラットフォームが、ギグワーカーと企業を繋ぐ役割を果たしており、デジタル分野でのギグワークが拡大しています。
働き方の多様化:
特に副業解禁やリモートワークの普及により、働く時間や場所に柔軟性を持たせたい人々がギグワークを選択するケースが増えています。
3. 課題
日本でギグワークが広がる中で、以下の課題が指摘されています:
法的保護の不足:
ギグワーカーは独立請負業者として扱われるため、
従業員と同様の社会保障や労働者としての保護を受けることが難しいです。
賃金の不安定さ:
プロジェクトベースの仕事が多いため、
収入が不安定であることが多く、
生活の安定性が確保されにくいです。
非正規雇用の活躍とどれくらいるのか
総務省の「労働力調査」によると、
役員を除く雇用者のうち正規雇用者の割合は63.0%、
非正規雇用者の割合は37.0%となっており、
約4割が非正規雇用者ということになります。非正規雇用者数は2005(平成17)年に1,634万人でしたが、
それ以降増加傾向にあり、
2023(令和5)年には2,124万人と約1.3倍になっています。そのうち2005(平成17)年に
780万人だったパートは2023(令和5)年までに250万人増加し、
1,030万人になっています。
出典:公益財団法人生活保健文化センター“非正規雇用者はどれくらいいる?”
日本における非正規雇用の初期の広がりは、
主に特定の業種や業態で始まりました。
その背景には、企業のコスト削減や労働力の柔軟化がありました。
以下は、非正規雇用が初期に広がった主な業種や業態です。
1. サービス業
非正規雇用が最も早く広がったのはサービス業です。
特に、飲食業や小売業では、
パートタイムやアルバイトを多く採用することで、
営業時間の変動に対応しやすくなりました。
これらの業種では、正社員を雇うよりも
コストが抑えられるため、
非正規労働者が広く利用されるようになりました。
飲食業:
レストランやカフェでは、
繁忙時間帯に合わせてパートタイム従業員を採用し、
人件費を抑える目的で非正規雇用が普及しました。
小売業:
スーパーやコンビニエンスストアなどの小売業でも、
営業時間に合わせてフレキシブルにシフトを組める
非正規雇用が積極的に導入されました。
2. 製造業
製造業でも非正規雇用は重要な役割を果たしました。
特に、バブル経済崩壊後の1990年代に入ってから、
企業は経済の変動に対応するため、
派遣労働者や契約社員を活用し始めました。
製造業では、特定の生産ラインやプロジェクトに応じて、
必要な期間だけ労働力を補充するために
非正規雇用が利用されるようになりました。
自動車産業や電子部品産業:
生産量の変動に対応するために、
派遣労働者や期間工(契約社員)が多く採用されました。
これにより、労働コストの柔軟性が高まりました。
3. オフィスワーク(事務職)
バブル崩壊後、企業はコスト削減の一環として、
派遣社員をオフィスの事務職に積極的に採用しました。
派遣社員は正社員よりも給与や福利厚生の負担が少なく、
短期間の業務補助や繁忙期の対応が可能でした。
一般事務、データ入力、受付:
これらの仕事で、派遣社員が多くの役割を担うようになり、
コスト削減に貢献しました。
4. 建設業・労働集約型産業
建設業や運輸業のような労働集約型産業でも、プロジェクトのスケジュールや天候などに左右されやすい労働力の変動に対応するために、非正規雇用が活用されました。
建設業:
工事の規模や進捗に応じて短期的な労働力を調達するため、
契約社員やアルバイトを積極的に活用していました。
運輸業:
物流のピークシーズンに合わせてアルバイトや
パートタイム従業員を採用し、
繁忙期に対応する動きが一般化しました。
5. 教育業
塾講師や学校の非常勤講師:
教育の分野で非正規雇用が広がりました。これらの職種では、
授業時間に応じて労働力を調整できるため、
短期的な雇用契約が多く見られます。
まとめ
非正規雇用は、
日本のサービス業、製造業、オフィスワーク、
建設業、教育業など幅広い業種で拡大しました。
当初は、企業がコスト削減や労働力の柔軟性を求めた結果、
正規雇用者よりも低賃金で、
社会保険の負担も少ない非正規雇用が選ばれた背景があります。
しかし、その後、法的な整備が進み、
非正規雇用者の権利保護が徐々に強化されてきたのが現状です。
この状況は、現在のギグワーカーの法的保護の問題と共通する部分が多く、
非正規雇用と同じような歴史的経緯をたどる可能性があると考えられます。
ギグワーカーと非正規雇用2へつづく