サーバント・リーダーシップとフォロワーシップとビッグファイブ2

前回はサーバント・リーダーシップとビッグファイブが、
フォローワーシップに与える影響と影響により引き起こされる行動の
3タイプについてお伝えしました。

ここでは研究調査において定義された、
サーバント・リーダーシップについて解説していきます。
サーバント・リーダーシップはSLと表記します。

研究で定義されたSL

一般に認識されている、SLは、他者への奉仕精神と倫理観を基盤とし、
部下の成長と幸福を支援するリーダーの在り方を強調します。

意思決定では参加型のアプローチを採用し、
組織のビジョンを共有しながら、
信頼関係の構築と組織の発展を目指します。

定義の焦点

  • フォロワー(部下)の成長を促し、組織目標の達成に貢献する行動。
  • 部下の精神的サポート、目標の明確化、説得力のあるビジョンの共有、
    信頼の構築などが重視されます。
  • 日本版SL尺度として
    「部下最重視」「概念化と説得力による指示」が強調されています​​。

特性

  1. 人を成長させること: 部下の潜在能力を引き出す。
  2. 謙虚さと真摯さ: 部下に対する敬意と自己犠牲。
  3. 信頼: 部下との信頼関係の構築。
  4. 受容と共感: 部下のニーズを理解し支援する。
  5. 予見と概念化による指示: 将来を見据えた行動計画の提示。
  6. 奉仕とコミュニティの再建: 部下や組織のために奉仕する​。

違いのポイント

  1. アプローチの具体性:
    • 研究調査では、SLを心理学的尺度に基づいて具体的な行動指標として定義していますが、
      世間一般では、哲学的・倫理的な指針として理解されることが多いです。
  2. 重視する要素:
    • 研究調査では、組織内での行動観察に基づく具体的な影響力(部下最重視、概念化と説得力)が強調されています。
    • 一方、一般的な理解では、奉仕精神や倫理観が中心で、
      リーダーの人格的な側面が強調されます。
  3. 測定の視点:
    • 研究調査ではリーダーシップの影響力を測定可能な特性として捉え、
      行動科学的アプローチが取られています。
    • 一般的には、測定よりも価値観や理想的なリーダー像の提示が多いです。

このように、研究調査ではSLが学術的かつ行動科学的な視点から評価・測定されている一方で、
一般的な認識では哲学的・倫理的側面が強調される傾向があります。

働くことが楽しいと感じ、社内活性化や離職ゼロを確立し、
若手の成長を促し、イノベーションを生み出すための組織構築するなら、
SLは学術的かつ行動科学的な視点からの方が構築しやすのではないかと考えます。

それについて考察していきます。

1. 働くことが楽しいと感じる組織づくり

  • 学術的な視点:
    SLの特性(部下最重視、信頼、共感)は、
    心理的安全性とエンゲージメントの向上につながります。
    • 具体例: 上司が部下のアイデアに耳を傾け、共感的な対応をすることで、
      部下は自分の価値を認識し、仕事にやりがいを感じます​​。

2. 社内活性化と離職ゼロの実現

  • 学術的な視点:
    行動科学に基づいたSLは、
    組織文化を積極的なものへ変え、離職率の低下に寄与します。
    • 理論的根拠:
      • 社会交換理論(リーダーからの支援に対する部下の恩返し行動)
      • 信頼と共感に基づくリーダーシップは、職場の対人関係の質を高め、
        メンタルヘルス問題を予防します​​。

3. 若手の成長促進

  • 学術的な視点:
    リーダーが部下の成長を促す行動(フィードバック、能力開発支援)は、
    学習理論と自己効力感理論に基づき効果が高いです。
    • 具体例: 部下の成長を重視するリーダーの行動が、部下の能力向上とキャリア形成を後押しします。
      部下は積極的な自己成長意欲を持つようになります​。

4. イノベーションの創出

  • 学術的な視点:
    創造性と革新は、開放性と調和性が高いリーダーによる行動が強く影響します。
    学術的なリーダーシップ尺度を用いることで、組織内のイノベーション能力を数値化して管理できます。
    • 研究調査内の示唆:
      • 開放性が高いリーダーは、革新的なアイデアを奨励し、創造的な行動を引き出す​。
      • 調和性が高いリーダーは、チーム内の協力的な文化を育て、意見交換の場を作ります​。

結論

学術的かつ行動科学的な視点からSLを捉えることで、
次の点が明確になります。

  • 測定と改善のしやすさ: リーダー行動を数値化し、組織改善の具体策を立てられる。
  • 体系的な人材育成: リーダーの特性を評価し、教育プログラムに反映できる。
  • 持続可能な組織文化: 信頼と共感、成長支援を基盤とする組織文化が形成される。

これにより、働きがいのある職場づくり、
社内活性化、若手の成長促進、イノベーション創出が一貫した戦略として可能になります。

測定としては評価制度で数値化する、ここでは詳しくはお話ししませんんが、
コンピテンシーを使うという方法もあります。

リーダーシップを発揮するには、リーダーが自己理解をし、相手理解をすることで
部下がパフォーマンスを上げるということにつながるということです。
例外もありますが、ここではその議論はしません。
それは組織における2:6:2の法則のお話になるからです。

今回はいかがでしたでしょうか、何度も言いますが、
自己理解、相手理解がとても重要です。
何も知らずにマネジメントすると、知っているのとでは大きな違いがあり、
時間という観点からはとても効率が悪いということになり、
金額にすると大きな損失につながると考えていただけるのでは…

人により成長速度は違います。しかし早く活躍してくれた方が、
組織やチームにとってはさらなぬ飛躍や成果が期待されます。
またクライアントに対しても良い結果をもたらす可能性が上がります。

今回はここまで、最後までご覧いただきありがとうございます。

参考資料

松山一紀・白築茉耶・中山敬介 (2023). 『サーバント・リーダーシップと性格特性因子ビッグファイブが,フォロワーシップ行動に与える影響』, 2024年12月13日アクセス.https://doshisha.repo.nii.ac.jp/records/29695

サーバント・リーダーシップとフォロワーシップとビッグファイブ3へつづく