スポーツにおけるリーダーシップとフォロワーシップの関連性2

前回はリーダーシップスタイルとフォロワーシップとの関連性を見ていきました。
フォローワーシップの特性合わせてリーダーシップのスタイルを変えて対応していく、
適応型リーダーシップが有効であることが確認できます。

その2ではビッグファイブの特性適性処遇交互作用(Aptitude-Treatment Interaction, ATI) の観点から、
リーダーシップスタイルの適用例を具体的かつ心理学的な視点で詳しく解説します。

フォローワーシップの特性への対応

1. 劣等感が高いフォロワー(情緒安定性が低い / 高い神経症傾向)

心理学的背景

  • ビッグファイブ次元: 神経症傾向(Neuroticism)が高い
  • 性格特性: 不安、自己不信、失敗への恐れが強い。感情が不安定で、他者からの承認を強く求める。
最適なリーダーシップスタイル:
  • 支援的リーダーシップ (Supportive Leadership, PM型またはpM型)
    リーダーは、情緒不安定なフォロワーに対して、
    感情的支援と肯定的なフィードバックを重視します。
    例えば、課題の失敗に対して叱責ではなく、
    改善策の提案を行うことで自己効力感を高めます。

具体例
  • ケース: 部員の田中さん(高校サッカー部の1年生)は劣等感が強く、
    試合でミスをするとチームメイトの前で謝り続けます。
  • リーダーの対応: 主将が田中さんに「失敗は誰にでもある。
    次の練習でこの部分を練習しよう」と言い、
    練習後には「今日はすごく頑張ったね」と声をかける。
    これにより、田中さんは自信を取り戻し、試合でのプレーが向上しました。

2. 社交性が高いフォロワー(外向性が高い)

心理学的背景:

  • ビッグファイブ次元: 外向性(Extraversion)が高い
  • 性格特性: コミュニケーション力が高く、
    集団での活動を楽しむ。他者とのつながりがモチベーションになる。

最適なリーダーシップスタイル:
  • 集団維持型リーダーシップ (Relationship-Oriented Leadership, PM型またはpM型)
    社交的なフォロワーには集団の一体感を強めるリーダーシップが適しています。
    チーム内での良好な雰囲気が、
    社交的なフォロワーのモチベーションを高め、他のメンバーへの影響力も増します。

具体例:
  • ケース: チームの花子さんは社交性が高く、
    練習中も部員同士の会話を楽しむためチームのムードメーカーになっています。
  • リーダーの対応: 主将が練習後の振り返りで
    「花子さんの声かけでチーム全体が明るくなったよ!」と
    フィードバックを与え、対話を促進します。
    これにより、花子さんはますます積極的に行動し、
    練習の士気が上がります。

3. 協調性の低いフォロワー(対立的 / 自己中心的)

心理学的背景:

  • ビッグファイブ次元: 協調性(Agreeableness)が低い
  • 性格特性: 自己中心的で競争的な一方、
    目的が明確な状況では努力を惜しまない。
    対立を避けることには興味がない。

最適なリーダーシップスタイル:
  • 課題志向型リーダーシップ (Task-Oriented Leadership, Pm型またはPM型)
    協調性の低いフォロワーには目標達成重視型の指導が効果的です。
    人間関係を維持するリーダーシップではなく、明確な目標やタスクの達成に集中する環境が適しています。

具体例:
  • ケース: 山田さんはサッカー部で協調性が低く、
    練習メニューの指示に対して「それ、意味あるんですか?」とよく質問します。
  • リーダーの対応: 主将が「次の試合に勝つために、今日はこのメニューを3回繰り返そう」と説明し、
    「山田さん、他の部員のリーダー役を頼むよ」と任命する。
    具体的な目標と役割を与えられたことで、
    山田さんはリーダー的行動を見せるようになりました。

心理学的な考察まとめ

  • ビッグファイブの観点: フォロワーの個人特性(外向性、情緒安定性、協調性など)が
    リーダーシップスタイルの効果を調整する「適性処遇交互作用(ATI)」が働くため、
    リーダーはフォロワーの特性に応じた指導を行う必要があります。
  • リーダーシップの適用:
    • 支援型リーダーシップ: 劣等感が強く、情緒不安定なフォロワーには感情的サポートを。
    • 集団維持型リーダーシップ: 社交性が高いフォロワーにはチームの雰囲気を盛り上げる行動が有効。
    • 課題志向型リーダーシップ: 協調性が低いフォロワーには目標指向型のタスク設定が効果的。

これらの具体例は、心理学的な理論に基づき、
フォロワー特性に応じたリーダーシップの調整が
パフォーマンス向上にどのように寄与するかを示しています。

リーダーが状況を理解し、適切な対応を取ることで、
チーム全体の成果が最大化されるのです。

チーム全体の成果が最も発揮されないマネジメント

フォロワーの性格特性や状況に合わないリーダーシップスタイルを選択することです。
これを心理学的な視点とマネジメントの観点から具体例を挙げて説明します。

1. 過度な管理主義(ミスマッチ: 高圧的なPm型リーダー × 情緒不安定なフォロワー)

心理学的背景:

  • ビッグファイブ: 神経症傾向が高い(情緒不安定)、劣等感が強いフォロワー
  • ミスマッチ: リーダーが目標達成(P機能)を優先し、
    支援的な行動(M機能)を軽視する「Pm型」の場合、フォロワーは不安を強め、
    パフォーマンスが著しく低下します。

具体例:

  • 状況: 主将が「結果が全てだ。ミスするな」と試合前にメンバーに圧力をかける。
  • 問題点: 劣等感が強いフォロワーは試合中に自信を失い、
    萎縮する。自分の失敗がチームに与える影響を恐れ、
    積極的な行動を取れなくなる。

管理上の改善策:

  • 支援的なリーダーシップ(PM型)に切り替え、
    「試合を楽しもう。ミスを恐れず行こう」と声をかけ、
    感情的な支援を行う。

2. 放任型のマネジメント(ミスマッチ: pm型リーダー × 目標志向のフォロワー)

心理学的背景:

  • ビッグファイブ: 誠実性(Conscientiousness)が高い、目標達成志向が強いフォロワー
  • ミスマッチ: リーダーが課題達成(P機能)もチーム維持(M機能)も行わない「pm型」の場合、
    フォロワーはリーダー不在に見える環境に強い不満を抱きます。

具体例:

  • 状況: チームの主将が日常の練習メニューの管理や試合の戦略を考えず、「みんな自由にやっていいよ」と指示。
  • 問題点: 誠実性が高いフォロワーは、
    進捗管理や目標設定がないことでモチベーションが低下。
    無計画な環境が不安とストレスを生み、成果が出なくなる。

管理上の改善策:

  • 課題志向型のリーダーシップ(Pm型またはPM型)を導入し、
    具体的な練習メニュー、試合戦略、成功基準などを設定する。

3. 過度な対人関係重視(ミスマッチ: pM型リーダー × 競争志向のフォロワー)

心理学的背景:

  • ビッグファイブ: 協調性(Agreeableness)が低く、競争志向が強いフォロワー
  • ミスマッチ: リーダーがチーム内の調和を重視し、
    目標達成への具体的な戦略を示さない「pM型」では、
    競争的なフォロワーはフラストレーションを感じます。

具体例:

  • 状況: 主将が「みんな仲良くしよう」と繰り返すものの、チームの練習メニューや戦略は決めずに放任する。
  • 問題点: 自己主張の強いフォロワーが「何を目指しているのか分からない」と不満を持ち、
    リーダーの権威を軽視。チーム内の対立が激化する。

管理上の改善策:

  • 課題志向型リーダーシップ(Pm型またはPM型)に切り替え、
    競争志向のフォロワーには具体的な目標設定と成果に基づく評価を行う。

4. 一律対応(ミスマッチ: 全員に同じリーダーシップを適用)

心理学的背景:

  • ビッグファイブ: メンバーの性格特性が多様(外向性、内向性、協調性の高低など)
  • ミスマッチ: メンバー全員を同じ管理手法で統一的に扱うと、
    パフォーマンスにばらつきが生じます。

具体例:

  • 状況: 主将が「全員自主練習」とだけ指示し、
    フォローを行わない。外向性が高いメンバーは積極的に取り組むが、
    内向的なメンバーは孤立し、練習量が減少。
  • 問題点: パフォーマンスにばらつきが生じ、
    チーム内の不満が増加。弱いメンバーが放置され、
    成果が出なくなる。

管理上の改善策:

  • メンバーの性格特性を考慮し、
    外向的なメンバーにはリーダー役を任せ、
    内向的なメンバーには個別指導や進捗確認を行う。

マネジメントの教訓: ミスマッチを防ぐために

1. フォロワーの性格特性の把握:

リーダーは、メンバーの性格特性(外向性、情緒安定性、協調性など)を理解し、適切なリーダーシップスタイルを選択する必要があります。

2. 状況に応じた柔軟な対応:

チームの状況(試合前、練習時、課題発生時など)によって異なるリーダーシップスタイルを使い分けることが重要です。

3. フィードバックと修正:

定期的なフィードバックと目標の見直しを行い、リーダーシップの効果を評価・改善する必要があります。

成果を発揮しないリーダーシップの要点

  1. 過度な管理主義: 劣等感が強いフォロワーにプレッシャーを与える。
  2. 放任型のリーダーシップ: 自己管理が得意なフォロワー以外では効果が薄い。
  3. 対人関係重視型の偏り: 成果重視のフォロワーには不適切。
  4. 一律対応: 個々のフォロワーの特性を無視することで、全体のパフォーマンスが低下する。

これらの誤った管理スタイルは、チームのパフォーマンスを大きく損ない、
リーダーシップの不適応を引き起こします。
適切な対応策を実践することで、チームの成果を最大化できます。

参考資料

伴在智秀 (1989). 『フォロワーのパーソナリティ特性の関数としてのリーダーシップ効果』, 教育心理学研究第37巻第2号, 1989年10月発行. 2024年12月22日アクセス.https://sucra.repo.nii.ac.jp/records/12261

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