ダークトライアドとビッグファイブ

日本の教育心理学研究とビッグファイブでダークトライアドという言葉が出てきます。
ダークトライアドの詳細について触れていませんでした。

今回はダークトライアドとビッグファイブとの関連性についてここではお話を進めていきます。
進めていく前にダークトライアドとはなんぞやについて解説をしていきます。

ダークトライアドとは

心理学において社会的に望ましくない3つの性格特性を指します。

これらの特性は、個人の行動や対人関係に影響を与え、
特にビジネス、政治、リーダーシップなどの場面で注目されています。

それぞれの特性の詳細は以下の通りです。

ダークトライアドの構成要素

1. 自己愛 (Narcissism)

  • 定義: 自己評価が過度に高く、自己中心的で自己愛的な性格特性。
  • 特徴:
    • 自分に対する過剰な賞賛と認められたい欲求。
    • 他者からの称賛を求め、批判には敏感。
    • 魅力的でカリスマ性を持つことが多いが、他者に対する共感は乏しい。
  • ビジネス上の利点: 自信に満ちたリーダーシップ、困難な場面での大胆な決断。
  • リスク: 権力乱用、他者の意見を軽視する傾向。

2. マキャベリアニズム (Machiavellianism)

  • 定義: 他者を操作したり、戦略的な行動を取る特性。
    名前は政治思想家ニッコロ・マキャベリから取られています。
  • 特徴:
    • 他者を目的達成の手段と見なす。
    • 欺瞞的で策略を巡らすのが得意。
    • 長期的な計画とリスク管理に優れる。
  • ビジネス上の利点: 戦略的な交渉力、危機管理能力。
  • リスク: 不誠実な行動、倫理的な基準の軽視。

3. サイコパシー (Psychopathy)

  • 定義: 他者への共感の欠如と衝動的な行動を特徴とする性格特性。
  • 特徴:
    • 共感能力が低く、他者の感情を理解しにくい。
    • リスクを恐れず、冷静で大胆な行動を取る。
    • 魅力的で説得力があるが、良心の呵責を感じにくい。
  • ビジネス上の利点: ストレス耐性の高さ、困難な状況での冷静な対応。
  • リスク: 無謀なリスクテイク、他者への搾取的行動。

ダークトライアドの評価と測定

  • 測定ツール:
    • Dirty Dozen (DD): ダークトライアドを簡易に測定するための質問票。
    • Short Dark Triad (SD3): 自己愛、マキャベリアニズム、サイコパシーを測定する一般的な尺度。

ダークトライアドの応用例

  • リーダーシップ: 権力を行使するリーダーにはダークトライアドの特性が見られる場合が多い。
  • ビジネスと組織管理: 特定の状況下では、戦略的思考や困難な状況での決断力が組織を成功に導く。
  • 犯罪心理学: 犯罪者の行動分析では、サイコパシーが中心的な研究対象。

倫理的視点からの注意点

  • ダークトアライドの特性は、
    適切に管理されなければ組織や個人の対人関係に悪影響を及ぼします。
  • そのため、バランスを取り、
    倫理的行動規範と組み合わせることが重要です。

このように、ダークトアライドは一面的に「悪」と見なされることもありますが、
状況や視点によっては、リーダーシップや組織運営に役立つ面も持っています。

鍵は、その特性をどのように管理し、活用するかにあります。

ダークトアライドは場面により有効な場合があるが、
管理しきれないと悪影響を及ぼしてしまうという側面を持っています。
まさに心理学における諸刃の剣と言えるでしょう。

ここから少しではありますが、
ダークトアライドとビッグファイブの関連についてみていきます。

ダークトライアドとビッグファイブ人格特性の個人内変動

研究目的: ダークトライアド(自己愛、マキャベリアニズム、サイコパス)と
ビッグファイブ(外向性、協調性、開放性、誠実性、神経質性)の
自己評定値の個人内変動の関連性を調査。

結果: ダークな性格の人は、ビッグファイブの評定値が不安定。
ダークトライアドが高いほど、外向性と開放性は高く、協調性は低い。

この研究結果から次のような点がわかります。
これらは心理学的な特性の理解に寄与します。

1. ダークトライアド特性の影響範囲の広さ

  • ダークトアライド特性(自己愛、マキャベリアニズム、サイコパス)は、
    性格特性の変動を生む要因となり得ることが示唆されます。
  • 特に、自己評定値が不安定になる点は、
    個人の自己認識の揺らぎを反映していると考えられます。

2. ビッグファイブ特性の組み合わせの特徴

  • 外向性と開放性の高さ: ダークな性格を持つ人々は、
    外向性(社交性や積極性)と開放性(新しい経験への興味)が高い可能性が示されました。
    これにより、彼らは魅力的でカリスマ性を持つように見える場合があります。
  • 協調性の低さ: 協調性が低いことは、他者への配慮や共感力の欠如を意味し、
    競争的かつ自己中心的な態度をとる可能性があります。

3. 性格の安定性に対する示唆

  • ダークトライアドが高い人は、
    性格特性が不安定で、状況や相手に応じて行動が変わる可能性があります。
    このため、信頼性が低く見られるリスクがあると考えられます。

4. 応用の可能性

  • 臨床心理学: 心理的支援を行う際には、
    こうした特性の変動性を考慮する必要があります。
  • 組織心理学・ビジネス: リーダーシップ開発やチーム形成の場面で、
    ダークトアライドの影響を理解することで、リスク管理や人材育成に活用できます。

このような視点から、ダークトライアドとビッグファイブの特性間の関連性は、
人間の性格を多面的に評価するうえで重要な洞察を提供しています。

この研究調査によりダークトライアドは、
場面によって影響の与え方が違うということがわかっています。
ダークトライアドにビッグファイブを組み合わせることで、
さらに深くどのような性格特性が現れるのかを知ることができるのです。

ここで推測されるのは、
経営者の性格は外交性と開放性が高い方が向いているとも考えられます。
時に経営者は組織を存続させるために、難しい決断を迫られ、
厳しい決断しなければならないからです。

あなたはどのように感じ考えますか。

今回はここまでです。最後までご覧いただきありがとうございます。

参考資料 

福島治 (2024). 『ダークトライアドとBig Five人格特性の個人内変動との関連: 混合効果位置スケールモデルのWinBUGSによる分析』, 2024年12月15日アクセス.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/pacjpa/85/0/85_PB-041/_article/-char/ja/

ダークトライアドとビッグファブ2へつづく