バーンアウトとビッグファイブ

今回は「バーンアウト(燃え尽き症候群)」について詳しく解説した論文からお話を進めていきます。

特に、ヒューマンサービス職(看護師、教員、ヘルパーなど)におけるストレスや職務環境の影響に焦点を当てています。

ヒューマンサービス職のストレスと性格特性

1. バーンアウトとは

  • ヒューマンサービス職(医療、教育、福祉など)で多発する現象であり、
    「情緒的消耗感」「脱人格化」「個人的達成感の低下」の3つの症状を特徴とする。
  • 特に、最初は意欲的だった人が突然やる気を失い、休職や離職するケースが多い。

バーンアウト(燃え尽き症候群)が起こるメカニズムについて、学術的な知見に基づいて説明します。
特に、Maslach Burnout Inventory(MBI)ストレス理論 に基づいて解説します。


バーンアウトのメカニズム

バーンアウトは、以下の3つの段階を経て進行すると考えられています。


① 情緒的消耗感(Emotional Exhaustion)
  • 【原因】 過剰な業務負担、過度な責任、長時間労働、感情労働(顧客・患者との対人関係による負荷)。
  • 【症状】 業務によって精神的・身体的エネルギーが消耗し、疲労感が蓄積。
  • 【結果】 仕事に対する熱意が低下し、ストレスが蓄積する。

理論的背景

  • ストレス理論(Lazarus & Folkman, 1984)
    ストレスは「環境の要求(仕事の負荷)」と「個人の対処能力(ストレス耐性)」のバランスが崩れると発生する。
    長期間このバランスが崩れると、エネルギーを消耗し続けることになる。

② 脱人格化(Depersonalization)
  • 【原因】 「情緒的消耗感」が一定以上に蓄積し、感情のコントロールが困難になる。
  • 【症状】 クライエント(患者・生徒など)に対して無関心・冷淡・機械的な対応をするようになる。
  • 【結果】 仕事の質が低下し、同僚やクライエントとの関係性が悪化する。

理論的背景

  • 感情労働理論(Hochschild, 1983)
    • ヒューマンサービス職では、業務上「感情を抑える」ことが求められる(例:看護師が患者に常に笑顔で対応する)。
    • 感情のコントロールが続くと、やがて「感情が枯渇」し、クライエントに対する共感を失う。
    • 「感情の枯渇を防ぐために、無意識にクライエントとの距離を取る」 という防衛反応が生じる。

③ 個人的達成感の低下(Reduced Personal Accomplishment)
  • 【原因】 仕事の成果が見えづらい(ヒューマンサービス職特有の課題)、評価されにくい、成功体験が少ない。
  • 【症状】 「自分はこの仕事に向いていないのでは?」という無力感・自己否定が生じる。
  • 【結果】 仕事への関心を失い、最終的に離職・休職につながる。

理論的背景

  • 自己効力感理論(Bandura, 1977)
    • 「自分はこの仕事をやり遂げられる」 という感覚(自己効力感)が低下すると、やる気が失われる。
    • 特にヒューマンサービス職では、成功体験が得られにくいため、「やっても意味がない」と感じやすい。

バーンアウトの発生モデル(ストレスの積み重ねによる段階的な進行)

  1. 【環境要因】 過重労働・感情労働・裁量の少なさ・評価の少なさ → ストレスが増大
  2. 【個人要因】 まじめで責任感が強い・神経症傾向が高い → ストレスを溜めやすい
  3. 【初期段階】 情緒的消耗感が蓄積 → 精神的なエネルギーが枯渇
  4. 【中期段階】 脱人格化(対人関係の質が低下) → 共感が薄れ、機械的な対応になる
  5. 【末期段階】 個人的達成感の低下 → 仕事の意義を見失い、離職・休職

まとめ

  • バーンアウトは、「情緒的消耗感」 → 「脱人格化」 → 「個人的達成感の低下」の順に進行する。
  • ヒューマンサービス職は、感情労働が多いため、特にバーンアウトのリスクが高い。
  • 個人の性格(まじめ・責任感が強い・神経症傾向が高い)と、環境要因(過重労働・裁量の少なさ)が関係している。
  • 早期に「ストレス対策」「労働環境の見直し」を行わないと、最終的に離職や休職につながる。

ビッグファイブとの関連

「ビッグ・ファイブ(Big Five)」と呼ばれるパーソナリティ5因子
バーンアウトの関連について触れられています。

  • 特に神経症傾向(Neuroticism)が高い人ほど、バーンアウトになりやすいとする研究結果が報告されています。
  • これは、ストレス耐性が低いため、職務上のプレッシャーに対して脆弱になりやすいことを示しています。

このように、ビッグファイブのパーソナリティ特性は、
バーンアウトの発生リスクと関連していることが確認されており、
特に職場でのストレス管理に活用できます。

ここでは、神経症的傾向の高い人財がバーンアウトになりやすいという結果がわかっています。
特にヒューマンサービス業は人と接する仕事ですので、
感情のすり減り方が尋常ではないということです。

よく耳にする話に看護師のいじめがあります。
これは感情労働の弊害かもしれません。
幼稚園の教諭や学校教師の問題行動もこのような感情労働による、
ストレスによる負荷から来るものである可能性があります。

個人的には、働く環境をまず改善していくことが第一だと考えています。
環境が悪ければ、その環境の悪さに加えて、
感情労働のストレスという二重苦になってしまいます。
そして人が辞めていき、人が問題を起こすという悪循環が生まれます。

これを止めるには、環境整備ですが、後回しになってしまいます。
長期的施策である環境整備を整えながら、
人財のケアという施策を行うことで、
人が起こす問題も改善していくという流れが生まれてきます。
真面目な人が壊れていく環境ってどう考えてもおかしいです。
頑張る人が報われないって、私は納得できません。

性格分析を利用することで、どこに問題があるのかが見えてくるため、
改善の施策が行えるのです。今回はここまで。
最後までご覧いただきありがとうございます。

参考資料

東京 : 労働政策研究・研修機構.久保 真人 .2007-01.『バーンアウト(燃え尽き症候群)–ヒューマンサービス職のストレス(特集 仕事の中の幸福)』, 2024年3月1日アクセス. https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R000000004-I8636019