ビッグファイブと相性

恋人、好きな人とはずっと仲良くしたいものです。
大切な人とより良い関係性を築くことについて、性格分析の観点から研究したお話しです。

今回ご紹介する研究は、
「ビッグファイブ性格特性と関係満足度: 自己肯定感の媒介的役割」についてです。

ビッグファイブ性格特性(神経症傾向、外向性、開放性、調和性、誠実性)と自己肯定感が、
恋愛関係の満足度にどのように関連しているかを研究した論文です。

具体的には、
自己肯定感がビッグファイブ特性と関係満足度との関連を媒介する役割を果たすか?を調べています。

恋愛関係の満足度の関連性

性格特性と恋愛関係の満足度の関連性を明らかにするだけでなく、
自己肯定感の重要性を示しています。

また、縦断的アプローチによって因果関係の方向性を探り、
性格が関係に与える影響と、
逆に関係が性格に与える影響を理解することの重要性を強調しています。

1. 性格特性と関係満足度の直接的な関連性

  • 神経症傾向:
    • ネガティブな関連性が確認されました。
    • 神経症傾向が高い人は、
      恋愛関係の中で曖昧な状況を否定的に解釈する傾向があり、
      その結果、関係満足度が低下することが観察されています。
  • 調和性・誠実性:
    • ポジティブな関連性が確認されました。
    • 調和性が高い人は、
      他者と円滑なコミュニケーションを図る傾向があり、
      誠実性が高い人は、責任感のある行動が関係の安定をもたらします。
  • 外向性と開放性:
    • これらの特性は関係満足度と直接的な関連性は示されませんでした。
    • ただし、外向性はパートナーの自己肯定感に影響を与える可能性があることが指摘されています。
  • 開放性:
    • 一部のケースで、
      開放性が高いパートナーは関係満足度が低下する可能性がありました。
    • この理由として、開放性が高い人は新しい経験を求める傾向があり、
      これが関係の安定にマイナスに働く場合があると考えられます。

2. 自己肯定感を介した間接的な関連性

  • 性格特性が自己肯定感を通じて関係満足度に影響を及ぼすメカニズムが調査されました。
    • 自己肯定感は、
      すべてのビッグファイブ特性の影響を部分的に媒介する役割を果たすことが確認されました。
    • 例えば:
      • 神経症傾向が高いと自己肯定感が低くなり、それが関係満足度の低下につながる。
      • 調和性や外向性が高いと自己肯定感が向上し、それが関係満足度を高める。

3. パートナー間の影響

  • パートナー効果が特定されました:
    • 一方のパートナーの性格特性がもう一方の満足度に影響を与える可能性がある。
    • 例: 外向性が高いパートナーは、もう一方のパートナーの自己肯定感を高め、
      それが関係満足度の向上につながる。

4. 縦断的結果(時間経過による変化)

  • 2年間の追跡調査から、以下の長期的なパターンが明らかになりました:
    • 調和性は、時間が経過しても関係満足度を予測する重要な特性である。
    • 神経症傾向は関係満足度にマイナスの影響を及ぼす傾向が続く。
    • 関係満足度が高い場合、それがパートナーの外向性を高める可能性も示唆されました。

5. 理論的背景と意義

  • この研究は、
    ビッグファイブ性格特性が関係満足度に直接的および間接的(
    自己肯定感を介して)に影響を与えることを示しています。
  • カーニーとブラッドバリーの「脆弱性-ストレス-適応モデル」に基づき、
    性格特性が関係のストレス要因として、
    または適応的な資源として機能することが確認されました。

パートナー間の影響(パートナー効果)とは

  1. 神経症傾向:
    • ネガティブなパートナー効果:
      • 神経症傾向が高いパートナーを持つと、
        もう一方のパートナーの関係満足度が低下する傾向がありました。
      • 神経症傾向が高い人は、
        ストレスへの敏感さやネガティブな解釈を通じて、
        パートナーにストレスをもたらしやすいことが理由と考えられます。
  2. 調和性:
    • ポジティブなパートナー効果:
      • 調和性が高いパートナーを持つと、
        もう一方のパートナーの関係満足度が向上することが確認されました。
      • 調和性が高い人は、対立を避け、協力的な行動をとる傾向があり、
        このような行動が関係の質を高める可能性があります。
  3. 誠実性:
    • 誠実性に関しては、パートナー効果が直接的に確認されませんでした。
    • ただし、誠実性が高い人の自己肯定感が向上し、
      それが間接的にパートナーの満足度に影響する可能性があることが示唆されています。
  4. 外向性:
    • ポジティブなパートナー効果:
      • 外向性が高いパートナーを持つと、
        もう一方のパートナーの自己肯定感が向上し、
        その結果、関係満足度が高まることが観察されました。
      • 外向性が高い人は、ポジティブな感情表現や積極的な社会的行動を通じて、
        パートナーを心理的に支える役割を果たすと考えられます。
  5. 開放性:
    • ネガティブなパートナー効果:
      • 開放性が高いパートナーを持つ場合、
        もう一方のパートナーの関係満足度が低下する傾向が一部で見られました。
      • 理由として、開放性が高い人は新しい経験を求める傾向があり、
        この性質が関係の安定性に悪影響を及ぼす場合があると考えられます。

パートナーエフェクトを意識した行動の例

それぞれのビッグファイブ特性に応じた関係性改善のアプローチを示します。

1. 神経症傾向(Neuroticism)

  • 影響: 神経症傾向が高いと、ネガティブな解釈やストレスが関係満足度を低下させる。
  • 意識した行動の例:
    1. 安心感を提供する:
      • 「大丈夫だよ」といった肯定的な言葉で、ネガティブな解釈を和らげる。
      • パートナーが不安を感じる状況では、具体的な解決策や選択肢を提案。
    2. 冷静に対応する:
      • 感情的な反応に巻き込まれず、落ち着いてサポートする。
      • 例: 怒りや悲しみを聞き入れる姿勢を示す。
    3. ストレス管理を支援する:
      • リラクゼーションの方法(散歩、瞑想)を一緒に実践する。

2. 調和性(Agreeableness)

  • 影響: 調和性が高い人は対立を避け、関係満足度を高める傾向がある。
  • 意識した行動の例:
    1. 感謝を表現する:
      • 「いつも気遣ってくれてありがとう」と日常的に感謝を伝える。
    2. 共感を示す:
      • 相手が感じる感情に対して「わかるよ」と共感することで、信頼を深める。
    3. 建設的な解決を提案する:
      • 対立が生じた場合、争うのではなく、一緒に解決策を探す。
      • 例: 「どちらの案がいいか一緒に考えよう」と提案。

3. 誠実性(Conscientiousness)

  • 影響: 誠実性が高いと、責任感を持ち、関係を維持するために努力するが、相手への影響は間接的。
  • 意識した行動の例:
    1. 計画性を共有する:
      • デートや旅行の予定を前もって計画し、パートナーを安心させる。
      • 例: 「次の週末、どこか行きたい場所ある?」と早めに提案。
    2. 約束を守る:
      • 小さな約束でもきちんと守ることで信頼感を高める。
      • 例: 「今日は早く帰る」と言った場合、その約束を守る。
    3. 現実的な目標を設定する:
      • パートナーシップの中で達成可能な目標(共通の趣味、貯蓄など)を一緒に考える。

4. 外向性(Extraversion)

  • 影響: 外向性が高いと、パートナーの自己肯定感を高め、関係を活性化させる。
  • 意識した行動の例:
    1. 一緒に楽しい活動をする:
      • パートナーを社交的な場や楽しいイベントに誘う。
      • 例: コンサート、友人との集まり、アクティビティ(スポーツや料理教室)など。
    2. ポジティブな感情を共有する:
      • 日常の中で楽しかったことや感謝していることを伝える。
      • 例: 「今日一緒にランチできて嬉しかった!」。
    3. パートナーの内向性を尊重する:
      • 外向性が高すぎると相手を疲れさせる可能性があるため、相手が休む時間を尊重する。

5. 開放性(Openness)

  • 影響: 開放性が高い人は新しい経験を求めるが、それが関係の安定性に影響を与えることもある。
  • 意識した行動の例:
    1. 新しい体験を共有する:
      • パートナーを巻き込んで新しい趣味や旅行を楽しむ。
      • 例: 「一緒にこの新しいレストランを試してみない?」。
    2. 安定感を与える行動を心がける:
      • パートナーが安定を求めている場合、自分の冒険心を抑えつつ安心感を提供する。
      • 例: 「次の週末は家でゆっくり過ごそう」と提案。
    3. 柔軟性を持つ:
      • 自分の新しいアイデアを押し付けず、相手の意見を尊重する。
      • 例: 「これも面白そうだけど、あなたがどう思うか聞きたい」。

6. 関係を長続きさせるための実践例

  • 相手の特性に応じたバランスの取れた行動:
    • 神経症傾向が高い相手には:安心感と安定を提供する。
    • 外向性が高い相手には:楽しいアクティビティを提案しつつ、休む時間も尊重。
    • 開放性が高い相手には:新しい経験を共有しつつ、安定した時間を計画。
  • 共通の目標を設定する:
    • 「2人でどのような未来を作りたいか」を話し合い、共有することで相互理解を深める。

考察と意義

  • 相互影響の重要性:
    • 性格特性の「パートナー効果」は、
      関係満足度を理解する上で重要であり、
      特定の性格特性がプラスにもマイナスにも影響を与える可能性があります。
    • 神経症傾向や調和性のように直接的な影響が強い特性もあれば、
      外向性や開放性のように、
      自己肯定感や他の媒介要因を通じて間接的に影響を及ぼす特性もあります。
  • アプローチの意義:
    • 研究は「Actor-Partner Interdependence Mediation Model (APIMeM)」を用いて行われており、
      各特性がどのように自分自身(actor効果)やパートナー(partner効果)に
      影響を及ぼすかを包括的に分析しています。

パートナーとより良い関係性を保つには、自分を知る、相手を知ること。
自己理解、相手理解が欠かせないということがわかってきます。

次回はアクター効果、自分の性格特性が自分の関係満足度や
自己肯定感に直接的または間接的に
どのような影響を与えるかについてもお話ししていきます。
最後までご覧いただきありがとうございます。

参考文献

Weidmann, R., Ledermann, T., & Grob, A. (2017). 『ビッグファイブ特性と関係満足度: 自尊心の媒介的役割』. Journal of Research in Personality, 69, 102–109. 2024年11月29日アクセス. https://doi.org/10.1016/j.jrp.2016.06.001

ビッグファイブと相性2へつづく