前回は恋愛関係の満足度ということで、性格特性と関係満足度の直接的な関連性、
自己肯定感を介した間接的な関連性等内容とバートナーエフェクトについてお話をさせていただきました。
その2は「アクターエフェクト」についてから始めていきます。
※パートナーエフェクトについては、意識した行動例と実践例を加筆しております。
Actor Effect アクターエフェクト
- 自分自身の性格特性が自分の自己肯定感を介して、
自分の関係満足度に影響を与える。 - 例: 自分が調和性の高い性格の場合、
自分の自己肯定感が向上し、自分の関係満足度が高まる。
Actor Effect(自己への影響)は、自分自身の性格特性(ビッグファイブ)が自己肯定感や
関係満足度にどう影響を及ぼすかを測定したものです。
1. Actor Effect(自己への影響)の概要
- Actor Effectは、
自分の性格特性が自分の関係満足度や自己肯定感に
直接的または間接的にどのような影響を与えるかを検討するものです。 - 性格特性 → 自己肯定感 → 関係満足度というパスで検討される場合も多いです。
2. 性格特性ごとのActor Effect
研究による具体的な結果に基づき、
それぞれのビッグファイブ特性が自分自身にどのような影響を与えるかを整理します。
(1) 神経症傾向(Neuroticism)
- 直接的影響:
- 神経症傾向が高いと、自分自身の関係満足度が低くなる傾向があります。
- 理由:
- 不安やストレスを抱えやすく、
関係の中でネガティブな出来事を過剰に解釈する傾向がある。 - 例: パートナーの無関心な態度を「愛情が薄れている」と解釈する。
- 不安やストレスを抱えやすく、
- 間接的影響(自己肯定感を通じて):
- 神経症傾向が高いと自己肯定感が低下し、その結果、関係満足度も低下する。
- 数値例: 自己肯定感を通じた間接効果が全体効果の50%以上を占める。
(2) 調和性(Agreeableness)
- 直接的影響:
- 調和性が高い人は、自分自身の関係満足度が高くなる。
- 理由:
- 他者に配慮し、協調的な行動を取るため、パートナーとの衝突が減少。
- 例: 些細な意見の相違を穏やかに解決する能力がある。
- 間接的影響(自己肯定感を通じて):
- 調和性が高い人は、自己肯定感も高まり、それが関係満足度の向上に寄与する。
(3) 誠実性(Conscientiousness)
- 直接的影響:
- 誠実性が高い人は、自分自身の関係満足度が向上する。
- 理由:
- 責任感が強く、関係を維持するために努力を惜しまない。
- 例: パートナーへの約束を守る、重要な日を忘れない。
- 間接的影響(自己肯定感を通じて):
- 誠実性が高いと自己肯定感が向上し、それが満足度をさらに高める。
- 数値例: 自己肯定感を通じた効果が全体効果の20%以上。
(4) 外向性(Extraversion)
- 直接的影響:
- 外向性は、自分自身の関係満足度に直接的な影響を及ぼさない場合が多い(PDFの結果に基づく)。
- 理由:
- 外向性は、他者との交流やポジティブな感情に関与するが、直接的には関係満足度につながらない。
- 間接的影響(自己肯定感を通じて):
- 外向性が高いと自己肯定感が向上し、それが満足度を高める。
- 重要なポイント:
- 外向性が自己肯定感を100%媒介して関係満足度に影響することが示されている。
(5) 開放性(Openness)
- 直接的影響:
- 開放性が高い人の関係満足度に対する直接的な効果は小さいか、負の影響が示される場合がある。
- 理由:
- 開放性が高いと新しい経験を求める傾向があり、それが関係の安定性を損なう場合がある。
- 間接的影響(自己肯定感を通じて):
- 開放性が自己肯定感を高める場合、それが関係満足度の向上につながる。
3. Actor Effectの統計的結果
- 直接効果(Direct Effect):
- 神経症傾向: 負の影響(b = -0.11, 95% CI [-0.19, -0.03])
- 調和性: 正の影響(b = 0.20, 95% CI [0.09, 0.31])
- 誠実性: 正の影響(b = 0.19, 95% CI [0.10, 0.28])
- 外向性: 有意な直接効果はなし。
- 開放性: 有意な直接効果はなし、または負の効果。
- 間接効果(Indirect Effect):
- 神経症傾向、調和性、外向性、開放性は、自己肯定感を媒介して関係満足度に間接的な影響を及ぼす。
- 例:
- 神経症傾向の間接効果(自己肯定感を通じて): b = -0.06, p < 0.05
- 外向性の間接効果: b = 0.06, p < 0.05
4. Actor Effectの重要性
- 自己改善の機会:
- Actor Effectの理解は、自分自身の性格特性を把握し、
関係満足度にポジティブな影響を与える行動を取る手助けになります。 - 例: 神経症傾向が高い人は、
ストレス管理技術を学ぶことで自己肯定感を高められる。
- Actor Effectの理解は、自分自身の性格特性を把握し、
- 自己肯定感を介した変化:
- 自己肯定感を意識的に育むことで、
性格特性がもたらすネガティブな影響を緩和し、
ポジティブな影響を強化することが可能です。
- 自己肯定感を意識的に育むことで、
Actor Effectは、自分自身の性格特性が直接的・
間接的に自分の関係満足度にどのような影響を与えるかを明確にし、
より良い関係構築のための具体的な指針を提供するということがわかりました。
アクターエフェクト(Actor Effect)を意識した行動例
1. 神経症傾向(Neuroticism)
- 影響: ネガティブな解釈や不安感が自己肯定感を下げ、
関係満足度に悪影響を与える。 - 意識した行動の例:
- ストレス管理を行う:
- 感情をコントロールするためにマインドフルネスや呼吸法を実践する。
- 例: ストレスを感じたときに深呼吸し、「今できること」に集中する。
- ポジティブな解釈を練習する:
- 曖昧な状況を悪く解釈しがちな場合、積極的にポジティブな見方を取り入れる。
- 例: 「返事が遅いのは嫌われたからではなく、忙しいだけ」と考える。
- 感情を共有する:
- 不安や心配事をパートナーに伝え、支えを得る。
- 例: 「少し心配していることがあるけど、話を聞いてくれる?」。
- ストレス管理を行う:
2. 調和性(Agreeableness)
- 影響: 他者との協調を重視することで、
自己肯定感と関係満足度が高まる傾向がある。 - 意識した行動の例:
- 相手の意見を尊重する:
- 対立が生じた際、パートナーの立場を理解し、妥協点を見つける努力をする。
- 例: 「この件について君の考えをもっと聞かせてほしい」。
- 感謝を積極的に伝える:
- 相手がしてくれた小さなことにも感謝を示し、自分自身の満足感も高める。
- 例: 「忙しいのに洗い物をしてくれてありがとう」。
- 自己主張も適度に行う:
- 調和性が高い人は自己主張を避けがちなので、自分の希望を丁寧に伝える練習をする。
- 例: 「今日は映画を見に行きたいけど、どう思う?」。
- 相手の意見を尊重する:
3. 誠実性(Conscientiousness)
- 影響: 計画性や責任感を活かし、
自己肯定感と満足度を高める行動をとる。 - 意識した行動の例:
- タスクを可視化する:
- 予定や約束を明確にし、計画を共有する。
- 例: スケジュール帳やアプリを使ってデートの予定を整理。
- 目標を設定し、達成を喜ぶ:
- パートナーシップに関する目標(旅行、貯蓄など)を設定し、達成した際にお互いを称賛する。
- 例: 「目標だった貯金ができたね。次はどこに行こう?」。
- 柔軟性を意識する:
- 過度に計画に固執せず、状況に応じて柔軟に対応する。
- 例: デートが突然変更になった場合、「次の機会に楽しもう」と考える。
- タスクを可視化する:
4. 外向性(Extraversion)
- 影響: 外向的な性格は、自己肯定感を高め、関係に活力を与えるが、相手が内向的な場合は調整が必要。
- 意識した行動の例:
- 積極的な交流を促す:
- パートナーを新しい経験や社交の場に誘い、関係に新鮮さを与える。
- 例: 「新しいレストランを試してみない?」。
- 一人の時間も尊重する:
- 自分の社交性がパートナーに負担にならないよう、相手のペースを尊重する。
- 例: 「今日は一人でリラックスする時間も大切にしてね」。
- 楽しい出来事をシェアする:
- 日常であった楽しいことやポジティブな感情を積極的に共有する。
- 例: 「今日こんな面白い話があったよ」と話題を提供。
- 積極的な交流を促す:
5. 開放性(Openness)
- 影響: 開放性が高いと新しい経験を求めるが、安定性を重視する相手には調整が必要。
- 意識した行動の例:
- 新しい経験を共有する:
- 新しい趣味や旅行を計画し、関係に刺激を与える。
- 例: 「週末にワークショップに参加してみよう」。
- 安定感を意識する:
- 相手が安定性を求める場合、自分の冒険心を抑え、落ち着いた時間を共有する。
- 例: 「今日は家でゆっくり映画を見よう」。
- 相手の反応を尊重する:
- 新しい提案が受け入れられない場合、それを強制しない。
- 例: 「このアイデアは難しそうだけど、他のことも考えてみよう」。
- 新しい経験を共有する:
アクターエフェクトの実践例
- 自分の特性を知り、強みを活かしつつ弱みを補う行動を取る。
- 神経症傾向が高い場合、感情的になりすぎないよう対策を取る。
- 調和性が高い場合、自己主張を意識して練習する。
- 自己肯定感を意識的に高め、日常的な行動に反映させる。
- 例: 感謝や称賛を日常的に行い、自己効力感を育む。
今回はアクターエフェクトがビッグファイブへ直接的、
間接的にどのように影響するのかを理解していただけたと思います。
自己肯定感についても触れる予定でしたが、次回でお話ししていきます。
合わせてバディ制度やメンター制度を導入されている企業様でも
参考になるお話ができればと考えております。
最後までご覧いただきありがとうございます。
参考文献
Weidmann, R., Ledermann, T., & Grob, A. (2017). 『ビッグファイブ特性と関係満足度: 自尊心の媒介的役割』. Journal of Research in Personality, 69, 102–109. 2024年11月29日アクセス. https://doi.org/10.1016/j.jrp.2016.06.001
ビッグファイブと相性 その3へつづく