フリーランス新法とギグエコノミーとギグワーカー

2024年11月1日から施行された「フリーランス新法」
(正式名称「フリーランス・事業者間取引適正化等法」)は、
フリーランスの労働環境改善と取引の適正化するものです。

この法律は、
フリーランスが安定して働ける環境を提供するために、
特に契約内容の明確化や報酬の支払い期日を義務化しています。

フリーランス新法の対象者は、
基本的に「非雇用型で働くフリーランス全般」です。

具体的には、
企業や個人事業者と業務委託契約を結び、
個人としてサービスを提供する働き手が含まれます。

以下のような業種や働き方が主に対象となります。

フリーランス新法の具体的な対象者

  1. クリエイティブ業務:
    • ライター、デザイナー、動画編集者、フォトグラファー、
      イラストレーターなど、企業と直接契約を結び、
      コンテンツ制作を行うフリーランスが対象です。
  2. IT・技術職:
    • エンジニア、プログラマー、システム開発者、ウェブデザイナーなど、
      企業やクライアントから委託を受け、
    • 特定のプロジェクトに参画する技術職のフリーランス。
  3. コンサルティング・アドバイザー:
    • ビジネスコンサルタント、マーケティングアドバイザー、
      経営アドバイザーなど、専門知識を活かして企業に助言を行う個人事業者。
  4. 教育・研修:
    • 研修講師、オンライン講師、学習コーチなど、
      企業や教育機関と契約し、教育や研修サービスを提供する個人。
  5. サービス業全般:
    • 通訳、翻訳者、カスタマーサポート、イベントスタッフなど、
      企業やクライアントと直接契約を結び、特定のサービスを提供する働き手。
  6. ギグワーカー:
    • 配送業務や清掃などの単発業務を請け負うギグワーカーも、
      一定の条件下で対象に含まれる可能性があり、
      契約内容の透明性や報酬の適正化が求められます。
厚生労働省HPより

対象外の働き手

一方で、

従業員として企業と直接の雇用契約を結んでいる
パートタイマーやアルバイトは、フリーランス新法の対象外です。

また、
仲介プラットフォームを通じて仕事を得ている場合でも、
プラットフォームが契約の透明性や
支払い期日を遵守する義務が問われることがあります。

フリーランス新法は、
業種や仕事の内容にかかわらず、
独立して業務を請け負う非雇用型の働き手」を
広く保護することを目的としています。

このため、
従来の下請法でカバーされない幅広いフリーランスが対象に含まれます。

主なポイントは次の通りです:

厚生労働省HPより

取引条件の明示義務

業務委託を行う際に、
契約内容を書面やメールで明示する必要があります。

具体的には、業務内容、報酬額、
支払い期日などを明記することが求められています​。

報酬支払義務

委託した業務の完了から60日以内に
報酬を支払うことが義務づけられています。

これにより、
報酬の支払い遅延が防止されます​。

不当行為の禁止

報酬の不当な減額や受領拒否、
無理な返品要求などが禁止されています​。

育児・介護との両立配慮

フリーランスが育児や介護と業務を両立できるよう、
一定の配慮を行うことが義務付けられています。

この新法は、
企業が資本金に関係なくフリーランスに対して適用されるため、
多くのフリーランスがその対象になります。

既存の「下請法」と異なり、
フリーランスの立場を保護するために独自の規定が追加されています。

独自の規定

これらの規定は、
フリーランスが安心して業務に従事できる環境を整備し、
発注者との取引における不公平やトラブルを防止することを目的としています

1. 契約内容の明示義務

詳細:

  • 発注事業者は、フリーランスに業務を委託する際に、
    契約内容を明示した書面または電磁的記録を交付する義務があります。
  • 書面には、業務の内容、報酬の額、支払い時期、
    支払い方法、契約期間などの重要な事項を明記する必要があります。

目的:

  • 契約条件の不明確さによるトラブルを防ぎ、
    フリーランスが安心して業務を遂行できるようにするためです。

2. 報酬支払い期日の規定

詳細:

  • 発注事業者は、
    フリーランスに対する報酬を業務完了日から60日以内に支払う義務があります。
  • 支払い遅延や不当な減額は禁止されており、
    報酬の全額を期日までに支払わなければなりません。

目的:

  • フリーランスの生活の安定を図り、
    経済的な不安を軽減するためです​。

3. 中途解除等の事前予告・理由開示義務

詳細:

  • 発注事業者が6か月以上の契約を中途解除する場合、
    解除日から30日以上前に予告しなければなりません。
  • フリーランスから求められた場合、
    契約解除や更新拒絶の理由を開示する義務があります。

目的:

  • フリーランスが急な契約終了によって不利益を被らないようにし、
    計画的に次の業務準備ができるようにするためです​。

4. ハラスメント防止措置の義務化

詳細:

  • 発注事業者は、
    フリーランスに対するハラスメント行為を
    防止するための措置を講じる義務があります。
  • 具体的には、相談窓口の設置、
    ハラスメント防止方針の策定、
    従業員への研修実施などが求められます。

目的:

  • フリーランスが安全で健全な労働環境で
    業務を行えるようにするためです​。

5. 優越的地位の濫用の禁止

詳細:

  • 発注事業者がフリーランスに対し、
    取引上の地位を利用して不当に不利益を与える行為が禁止されています。
  • 具体的には、不当な値下げ要求、
    業務範囲外の無償労働の強要、
    不合理な返品やキャンセルなどが該当します。

目的:

  • フリーランスが発注者の不当な要求により不利益を被らないよう、
    公正な取引関係を維持するためです​。

6. 情報提供義務

詳細:

  • 発注事業者は、
    業務遂行に必要な情報をフリーランスに
    適時かつ適切に提供する義務があります。
  • これには、業務内容の詳細、関連法規、必要な手続きなどが含まれます。

目的:

  • フリーランスが業務を円滑に進めるために
    必要な情報を得られるようにし、
    業務品質の向上を図るためです。

7. 個人情報保護の強化

詳細:

  • 発注事業者は、
    フリーランスの個人情報を適切に取り扱い、
    不正な利用や第三者への提供を禁止されています。

目的:

  • フリーランスのプライバシーを保護し、
    個人情報の漏洩や悪用を防ぐためです。

8. 紛争解決手続きの整備

詳細:

  • フリーランスと発注事業者との間で紛争が生じた場合に、
    迅速かつ適切に解決するための手続きや相談窓口が設けられます。

目的:

  • トラブルの早期解決を促進し、
    両者の信頼関係を維持するためです。

9. 業務委託契約の中間搾取の防

詳細:

  • フリーランスに業務を再委託する際、
    中間業者が不当な利益を得ることを防止するための規定があります。

目的:

  • フリーランスが正当な報酬を受け取れるようにし、
    適正な取引を確保するためです。

これらの独自の規定により、
フリーランスは契約内容や取引条件が明確化され、
不当な扱いを受けるリスクが軽減されます。

また、発注事業者も法令遵守により信頼性を高め、
公正な取引関係を構築することができます。

これからどのように働き方が変わっていくのか

働き方はより柔軟かつ安心できる方向に進むと予測されます。
契約内容の透明性や報酬支払いの明確化により、
フリーランスやギグワーカーは安定した収入を得やすくなり、
依頼者とのトラブルが減少します。

結果として、
企業は専門的なスキルを持つ外部人材と安心して協働できるようになり、
個人は自分のスキルやライフスタイルに合わせて自由に働き方を選びやすくなるでしょう。

最後までご覧いただきありがとうございます。