フリーランス・トラブル110番に関する情報提供となります。
フリーランスや個人事業主からの相談内容、
和解あっせんの実績、
相談者の属性などが詳細に記載されています。
トラブルの内容
1. 相談・和解あっせん件数の概要
- 令和6年9月の相談件数は1,054件で、令和5年度の月平均750件を上回る増加が見られます。
- 令和2年度から5年度までの総相談件数は21,066件、和解あっせんの受付件数は545件、実施件数は446件、和解成立件数は142件です。
- 年ごとの増加が顕著であり、フリーランスに関するトラブル相談が年々増加していることがわかります。
2. 相談者属性(年齢・業種)
- 年齢層: 主な年齢層は、20~49歳が約71.4%を占め、若年層から中年層が多く相談していることが示されています。
- 業種別: 相談者の業種では、運送関係が最多(14.3%)で、次いでシステム開発、ウェブ制作、建設関係などの業種が続いています。
3. フリーランス・トラブル110番の存在を知ったきっかけ
- 相談者が「フリーランス・トラブル110番」の存在を知った主なきっかけは、
ウェブサイト(HP)が52.6%と最多です。 - 次いで労基署(15.9%)、ネット検索(13.7%)が続いており、
オンライン情報から相談窓口にたどり着くケースが多いことがわかります。
4. 相談内容の内訳
- 相談内容の最多は「報酬の支払い」(31.2%)であり、
具体的には、報酬の不払い(13.2%)、支払い遅延(7.4%)、
一方的減額(7.5%)などが含まれています。 - 次に多いのは「契約条件の明示」(15.0%)で、
書面不交付や内容が不明確などの問題が挙げられています。 - その他には「中途解除や不更新」、「ハラスメント」、
「納品物の取り扱い」などが相談されています。
5. 相談対応の結果
- 相談の結果として、「自ら交渉する」と回答したのが61.7%と最も多く、
フリーランス自身での対応が求められる傾向が見られます。 - 「本相談で解決」となったケースが18.7%、「和解あっせんを検討する」が17.2%で、
相談のみで解決に至るケースが一定数あります。
6. 利用満足度
- 相談窓口の利用満足度は、「とても満足」(30.1%)と「満足」(44.9%)を合わせて75.0%で、概ね高い満足度が得られています。
全体の解説
このデータからは、
フリーランスの労働者が報酬の支払いや契約の不明確さに関する
トラブルを多く抱えており、
その対応のための相談件数が増加している現状が読み取れます。
フリーランスの立場を守る新法の施行されたことにより、
契約内容の透明性の向上へつながることでしょう。
フリーランスのトラブルが増えている背景には、
以下のような複数の要因が関係していると考えられます。
1. フリーランス人口の増加
- コロナ禍以降、柔軟な働き方を求める人が増加し、
多くの人がフリーランスやギグワークに参入しています。
この増加により、自然とトラブルの件数も増加しています。
新規フリーランスの増加に伴い、契約や交渉に不慣れな人が多いため、
トラブルに巻き込まれやすい状況も生じています。
2. 契約の不透明性と曖昧さ
- フリーランスの仕事では、
業務の範囲や報酬条件が口頭や不十分な書面での合意にとどまるケースが依然として多くあります。
特に中小企業や初めてフリーランスと契約する企業にとっては、
契約管理の重要性やトラブル防止策が十分に認識されていないこともあり、
結果として契約条件の曖昧さからトラブルが発生しやすくなります。
3. 報酬の遅延や未払いのリスク
- フリーランスの立場では、
依頼者に対する法的保護が不十分で、
報酬の支払いが遅延したり、未払いとなるリスクがあります。
企業の経営状態が不安定である場合など、
依頼者側の事情で支払いが遅れることもトラブルの原因となります。
4. フリーランス新法への対応がまだ十分に進んでいない
- 2024年11月にフリーランス新法が施行されたばかりであり、まだ多くの企業やフリーランスが法改正への理解や対応を十分に進められていません。特に、契約内容の明示や報酬の適正な支払いが義務化されたものの、慣習的に続いている不適切な取引がすぐに改善されるわけではないため、過渡期におけるトラブルが発生しやすい状況です。
5. 依頼者の知識不足
- 悪意ではなく、
依頼者がフリーランスとの取引方法や法的な義務について十分に
理解していないケースも少なくありません。
特に、中小企業や個人事業者はフリーランスとの契約の仕組みや
法律上の義務に不慣れであることが多く、
それが結果としてトラブルに発展することがあります。
6. ハラスメント問題の増加
- フリーランスは依頼者からの業務上の指示や要求に対し、
正規雇用者よりも立場が弱い傾向にあります。
このため、業務範囲を超える無理な要求や、
不当な要求を受け入れざるを得ない状況が生まれやすく、
精神的な負担やハラスメントにつながるケースも増えています。
まとめ
トラブルの増加は、
必ずしも悪質な依頼者の増加を示すものではなく、
フリーランス市場の拡大、契約の不明確さ、
法改正への過渡期といった要因が絡んでいたものとなります。
フリーランス新法の周知とともに、
企業側もフリーランスの働き方や契約の適正な取り扱いについて理解を深め、
トラブル防止に努めることが今後の課題です。
依頼者に知識不足が生じる理由として、
フリーランス取引における契約や法的な取り決めについて士業
(弁護士や行政書士など)からのサポートを受けることは可能ですが、
中小企業や個人事業者の場合、
これらのサポートを十分に活用できていないケースが多いようです。
1. フリーランス取引の法的対応が浸透していない
- フリーランス取引は、
正規雇用の労働契約と異なり、
委託契約や業務委託契約の形態が多いため、
法的な整備が遅れてきました。
その結果、依頼者側も契約における適正な手続きやリスクに対する意識が低い場合が見られます。 - 2024年11月にフリーランス新法が施行されましたが、
法改正が施行されたばかりで、
まだ内容が十分に周知されておらず、
企業側が適切な知識を習得している状況に至っていないことも影響しています。
2. 中小企業や個人事業者のリソース不足
- 特に中小企業や個人事業者は、
法律に詳しい専任の担当者や法務部門を持たないことが多く、
契約に関する細かい規定を理解しないまま業務を進める傾向があります。 - 士業に依頼することも可能ですが、
時間や費用面での制約から、
法的なサポートを活用できないケースが多いです。
そのため、契約の知識や法律対応が不十分なままフリーランスに仕事を依頼してしまうことがあります。
3. フリーランス取引の契約管理が習慣化していない
- フリーランスとの取引では、
正式な契約書を作成せず、
口頭や簡易な合意書のみで進められることがしばしばあります。
これは依頼者とフリーランスの間での「信頼関係」に依存した取引が多いことも理由の一つです。 - このような状況が続くと、
依頼者が契約の適正な管理方法やフリーランス新法に
基づく義務について理解する機会がなく、
知識が不足したままとなることがあります。
4. 法改正や契約手続きの変化への対応が遅れている
- フリーランス取引における法的な規制が最近になって整備され始めたため、
依頼者側も最新の法規や契約の適正化に対する対応が遅れている場合があります。
新しい法制度がどのように自社に影響するのかを理解する余裕がなく、
結果的に知識不足のままフリーランスに依頼するケースが多く見られます。
5. 業界内での慣習や観念の影響
- 特に中小企業やベンチャー企業では、
他社の事例や業界の慣習に基づいて取引を進めることが多く、
法的な義務や契約条件に対する理解が不十分なケースがあります。
士業のサポートを得る必要性が認識されないまま、
業務が進行することも原因の一つです。
解決策として考えられること
- 士業のサポートを活用する意識を高める:法務や契約に関する士業のサポートが有益であることを依頼者側が理解し、
積極的に活用する意識を持つことが重要です。 - フリーランス新法や契約の基礎知識に関する啓発:企業や依頼者側に対し、
フリーランス新法や契約の適正化に関するセミナーや研修の機会を提供することで、知識不足を補うことができます。 - ガイドラインの提供:士業や業界団体が契約管理のガイドラインを作成・提供することで、
依頼者が参考にできる実践的なサポートが広がります。
知識不足の問題を解決するためには、
法改正や契約手続きに関する知識の普及が不可欠です。
企業が安心してフリーランスと取引できるよう、
士業の専門知識を効果的に活用するための啓発活動が今後の課題といえるでしょう。
最後までご覧いただきありがとうございます。