令和7年度税制改正 – 個人所得課税の改正内容と影響分析2

前回から続きで、ここでは投資や相続と贈与についてのお話です。

インフレ対策と老後資産形成への具体的な対応策

令和7年度税制改正では、
インフレや将来の老後資産形成を重視した税制改正が盛り込まれています。

一般の方々がこれに対応するための具体策を、
FP(ファイナンシャルプランナー)として以下の視点から詳しく解説します。

1. インフレ対策:資産の目減りを防ぐための具体策

(1) NISAを活用した対策

NISA(少額投資非課税制度)の特徴:

  • 投資による運用益が非課税。
  • 長期運用向けの「つみたてNISA」と自由度の高い「成長投資枠」の2本柱が強化。

具体的な対応策:

  1. インフレリスクへの対応:
    • 定期預金では物価上昇に追いつけないため、株式や投資信託などインフレに強い資産をNISAで運用。
    • インフレに伴う株価上昇や配当増加を利用し、資産価値を維持・成長させる。
  2. リスク管理と分散投資:
    • 株式、債券、REIT(不動産投資信託)などを組み合わせ、リスク分散を図る。
    • 長期的な積立投資を行うことで、価格変動リスクを平均化(ドルコスト平均法)。
  3. 改正後のポイント活用:
    • NISA枠の拡大により投資上限額が増えたため、夫婦や家族で最大限利用。
    • 子ども名義のジュニアNISA廃止に伴い、親のNISA口座を活用して教育資金を運用。

注意点:

  • 投資商品選びは慎重に行い、コスト(信託報酬)やリスクを確認。
  • 長期的な視点で資産形成を行い、短期的な相場変動に惑わされないこと。

(2) iDeCoを活用した対策

iDeCo(個人型確定拠出年金)の特徴:

  • 掛金は所得控除の対象となり、税負担軽減。
  • 運用益が非課税で、60歳以降に受け取り可能。

具体的な対応策:

  1. 老後資金の積立強化:
    • 令和7年度改正では、掛金限度額の引き上げが予定されており、
      税優遇を最大限活用して拠出額を増加
    • 公務員や主婦も加入できるため、世帯全体で資産形成を図る。
  2. インフレ対策としての役割:
    • iDeCoは60歳まで引き出せないため、長期運用に適しており、
      インフレに強い株式やリート型商品への配分を増やす。
  3. 節税効果の最適化:
    • 掛金が所得控除となるため、税負担を軽減しつつ老後資産形成。
    • 年収が高い人ほど税負担軽減効果が大きく、所得税・住民税対策にも有効。

注意点:

  • 一度始めると60歳まで引き出せないため、無理のない範囲で掛金を設定する。
  • 商品選びはローリスク・ローリターンから高リスク商品まで慎重に検討。

2. 老後資産形成:相続・贈与税対策を組み合わせる

(1) 贈与税の改正に対応した対策

改正のポイント:

  • 子育てや教育資金贈与の非課税枠が拡充・延長。
  • 老後資産形成を見越した世代間資産移転が促進される。

具体的な対応策:

  1. 教育資金贈与の活用:
    • 子や孫の教育資金を1,500万円まで非課税で贈与できる制度を利用。
    • 高等教育費用や塾費用をカバーし、次世代の教育環境を支援。
  2. 結婚・子育て資金の贈与活用:
    • 1,000万円まで非課税で贈与可能(適用期間延長)。
    • 若い世代への経済的サポートを行い、生活基盤の安定化を支援。
  3. 暦年贈与の活用:
    • 年間110万円まで非課税枠を活用し、早期に資産を移転して相続税負担を軽減。

注意点:

  • 贈与後の資産管理は受け取った子や孫が適切に行えるようサポートする。
  • 相続税対策として計画的な贈与を行う。

(2) 相続税対策の見直し

具体的な対応策:

  1. 不動産を活用した節税:
    • 賃貸物件などの収益不動産を所有し、評価額を下げることで相続税負担を軽減。
  2. 生命保険を活用した対策:
    • 死亡保険金は非課税枠(500万円×法定相続人の数)が適用されるため、
      資産移転ツールとして有効。
  3. 家族信託の活用:
    • 認知症などによる資産凍結を防ぎ、スムーズな資産管理と継承を実現。

注意点:

  • 節税だけでなく、家族間のトラブルを避けるため、専門家との相談を早めに実施
  • 最新の法改正や税制変更に合わせた柔軟な対応が求められる。

3. FPからの最終アドバイス

① 資産運用は「守りと攻め」のバランスを重視

  • 短期的なインフレ対策: 株式やリートなどの成長型資産を活用。
  • 長期的な安定資産形成: iDeCoやNISAを最大限活用し、税優遇を活かす。

② 家族単位での資産移転計画を策定

  • 贈与税や相続税の非課税枠を利用して早期移転を行い、負担を分散する。

③ 専門家の活用

  • 税理士やFPと連携し、最新の税制改正に基づく節税プランや資産運用計画を立案。

まとめ

インフレと老後資産形成への対応は、
短期・長期の視点を組み合わせた戦略が必要です。

NISAやiDeCoを活用した税制優遇を最大限に取り入れつつ、
相続税や贈与税対策を早めに行うことで、資産を守りながら増やす仕組みを作りましょう。

FPや税理士など専門家に相談しながら、
自身に合ったプランを早期に検討することが大切です。

最後までご覧いただきありがとうございます。

参考資料

令和7年税制改正大綱