令和7年度税制改正では、税制のあり方が国家運営の根幹を形成することを強調し、
「公正で活力ある社会」の実現を目指すとしています。
経済成長や世代間の公平を確保しつつ、時代に適した制度への見直しが図られます。
ここではわかりやすくどのような内容になっているのかを解説していきます。
令和7年度税制改正の具体的な方向性とその意図
1. 「公正で活力ある社会」の実現に向けた具体策
令和7年度税制改正では、経済や社会構造の変化に対応し、
すべての世代や層が公平に負担し、恩恵を享受できる税制を目指しています。
具体的な取り組みとして以下が挙げられます。
(1) 賃上げと消費促進による成長型経済への移行
- 賃上げ促進税制の拡充:企業に対して賃上げを行うことで税負担を軽減するインセンティブを提供。
特に中小企業への設備投資支援を拡充。 - NISA制度の強化:投資を促進するための少額投資非課税制度(NISA)をさらに使いやすくし、
「貯蓄から投資」への流れを強化。
FP視点:
これにより、家計の金融資産を活用した資産形成が促され、
経済循環を支える消費拡大につながると期待されます。
また、企業の投資促進による生産性向上も見込めます。
(2) 中小企業支援と地方創生
- 中小企業税制の拡充:成長意欲の高い中小企業への設備投資に対する税制支援を強化し、
地方経済を活性化する取り組み。 - 企業版ふるさと納税の延長:地域への投資を促し、地方創生を推進。
FP視点:
地方経済への税制支援を通じて、地域間格差を是正し、
地方創生を促進する仕組みは、長期的に住民の生活向上につながる点が評価されます。
(3) 社会保障制度の強化と公平性の確保
- 所得税・基礎控除の引き上げ:物価上昇への対応として控除額を引き上げ、実質負担を軽減。
- 扶養控除の見直し:学生アルバイトや子育て世帯への税制優遇を強化し、家計負担を軽減。
- iDeCo限度額の引き上げ:老後資産形成を促進し、高齢社会への備えを強化。
FP視点:
これらの施策は、
所得層や世代ごとの課題に応じた支援が盛り込まれ、
所得格差の是正や世代間の不公平感を緩和するための措置として機能します。
資産形成支援は、長期的な生活設計にプラスとなる一方、
高所得層への恩恵が大きい点には留意が必要です。
2. 経済成長と世代間公平性の確保
(1) 経済成長の促進策
- 法人税制改革:
- 設備投資や賃上げを促すため、減税措置とターゲットを絞った優遇策を導入。
- スタートアップ投資促進:
- エンジェル税制の強化や税優遇の見直しを通じて、ベンチャー企業への投資環境を改善。
FP視点:
法人税の強化と優遇措置のバランスを取り、
企業が利益を再投資しやすい環境を整備することで経済の持続的成長を支える狙いがあります。
個人投資家にとっても、ベンチャー支援の税制優遇は魅力的です。
(2) 世代間の公平性への配慮
- 若者支援策:
- 学生アルバイトや若年層への特定扶養控除を新設。
- 高校生年代の扶養控除や生命保険料控除の拡充。
- 高齢者支援と負担公平性:
- 公的年金課税の公平性を強化し、給与所得とのバランスを是正。
- iDeCo限度額の引き上げで老後資産形成を支援。
FP視点:
若者世代への支援を強化しつつ、
高齢者層への過度な優遇を見直すことで、
世代間の公平性を確保しています。
しかし、資産を多く持つ層への優遇措置は依然残されており、
格差是正の観点では議論の余地があります。
3. 総括
この税制改正は、
経済成長と公平性を同時に実現することを目指していますが、
税制改正が各世代に与える影響は異なります。
- 経済成長の促進:
- 賃上げ促進や投資支援を通じて、企業収益の向上と設備投資の拡大を狙う。
- 公平性の確保:
- 若年層から高齢層まで、収入や資産状況に応じた税制優遇を提供し、世代間の公平性を強調。
FP助言ポイント:
- 賃上げ税制の利用促進やNISA・iDeCoの資産形成を最大限に活用することで、
税制改正の恩恵を受けやすくする。 - 中小企業支援税制は設備投資に集中して適用されるため、
今後の事業計画に合わせて対応策を検討する。 - 高齢者向け資産管理や贈与税の緩和措置を踏まえ、
相続対策や贈与戦略を再構築する。
具体的な改正についてはまた次回お話ししていきます。
参考資料