健康的な組織は勝ち続けるが、ルールは急速に変化している3

前回は組織の健康状態に影響する、9つの主要な指標について詳しく解説しました。

ここでは、9つの指標を実行し、健康的な環境づくりについてお話をしていきます。

企業文化・風土の環境整備と9つの指標の実践方法

組織の健康を向上させるためには、単なる制度や仕組みの導入だけでなく、
企業文化や風土の変革が不可欠です。

どれほど素晴らしい戦略を策定しても、
それが組織に根付かないと成果にはつながりません。

ここでは、環境整備の具体的な方法と9つの指標を組織に浸透させるための取り組み方について詳しく解説します。


1.環境整備の基本方針

企業文化の変革を進めるためには、
「ビジョン・行動・仕組み」の3つの要素をバランスよく取り入れる必要があります。


◆ビジョン(Vision):組織の目指す方向を明確化

  • トップが明確なメッセージを発信し、全社員に浸透させる
  • 企業の存在意義(パーパス)を明文化し、社員と共有する
  • 全員が共感できる価値観を明確にする(例:「お客様第一」「イノベーション推進」など)

◆行動(Behavior):社員一人ひとりが行動を変える

  • リーダーが率先して模範を示し、行動変容を促す
  • 部門ごとに具体的な行動指針を決め、日々の業務で実践
  • 評価制度に「文化に沿った行動」を組み込み、行動の定着を促す

◆仕組み(System):組織全体で支える

  • 環境を整え、行動しやすい土壌を作る(例:心理的安全性の確保)
  • 社内コミュニケーションを活性化し、情報共有を円滑にする
  • フィードバック文化を醸成し、PDCAサイクルを回す

2.9つの指標ごとの環境整備方法


① 方向性(Direction):全社で共通認識を持つ


◆必要な環境整備
  • ビジョン・ミッション・バリュー(MVV)を明確にし、繰り返し伝える
  • 社員がビジョンを理解できるワークショップを実施
  • 経営陣が定期的にビジョンについて語る場を設ける(例:全社会議)

② リーダーシップ(Leadership):風通しの良い組織を作る


◆必要な環境整備

  • トップダウンではなくボトムアップを促進
  • リーダー向けの「対話型リーダーシップ研修」を実施
  • 部下が上司にフィードバックできる環境を作る(360度評価の導入)

③ 職場環境(Work Environment):心理的安全性を確保


◆必要な環境整備

  • 心理的安全性を重視した「失敗を許容する文化」を醸成
  • 職場の雰囲気を改善するための取り組み(例:1on1ミーティングの導入)
  • ハラスメント防止のためのガイドライン策定と研修

④ アカウンタビリティ(Accountability):責任を明確化


◆必要な環境整備

  • ジョブディスクリプション(職務記述書)を明確に定義
  • 役職ごとの責任範囲を明確化し、適正な権限委譲を行う
  • チームで成果を出す文化を促進し、個人責任だけに依存しない仕組みを作る

⑤ 調整と管理(Coordination and Control):情報の透明性を向上


◆必要な環境整備

  • 全社共通の情報共有プラットフォームを整備(Slack, Notion, Teamsなど)
  • 定期的なクロスファンクショナルミーティングを実施
  • 会議の目的を明確化し、時間を短縮(アジェンダ必須)

⑥ 能力開発(Capabilities):学び続ける文化を作る


◆必要な環境整備

  • 学習と成長を支援する制度(例:スキル研修・資格支援制度)
  • メンター制度やコーチングを活用
  • キャリアパスの可視化を行い、社員が目標を持てるようにする

⑦ モチベーション(Motivation):社員のやる気を引き出す


◆必要な環境整備

  • 評価・報酬制度を透明化し、成果に応じた正当な評価を行う
  • 感謝や称賛を伝える仕組み(例:ピアボーナス制度、社内表彰)
  • 社内SNSやイントラネットでの成果発信を活用

⑧ イノベーションと学習(Innovation and Learning):新しい挑戦を奨励


◆必要な環境整備

  • アイデアを出しやすい環境を整える(例:社内ピッチイベントの開催)
  • 失敗を咎めるのではなく、学びに変える文化を醸成
  • オープンイノベーションの推進(外部とのコラボレーション)

⑨ 外部志向(External Orientation):市場の変化に適応


◆必要な環境整備

  • 定期的に市場調査を行い、社員と情報共有
  • 業界イベントやカンファレンスへの積極参加
  • 外部の専門家やパートナー企業との連携を強化

3.全社一丸で取り組むためのフレームワーク

企業文化を変革し、全社で取り組むためには、
段階的なフレームワークが有効です。


◆① 経営陣のコミットメント

経営層が積極的に関与し、方向性を示す
リーダー自らが変革の先頭に立つ


② 小さく始めて成功事例を作る

一部の部署で試験的に導入し、成功事例を作る
成果を社内で共有し、徐々に拡大


◆③ 継続的な改善と評価

半年ごとに組織の健康度を測定し、改善点を明確化
社員のフィードバックを反映しながら、環境整備を進める


まとめ

企業文化や風土の整備なしに、組織の健康は向上しない
「ビジョン・行動・仕組み」の3要素をバランスよく整えることが重要
環境整備は一度きりでなく、継続的な取り組みが必要
トップダウンとボトムアップを組み合わせ、全社一丸で進める

組織の健康を維持し、持続的な成長を目指すために、
これらの施策を段階的に実行していくことが組織が変わることにつながります。

多くの施策は短期的な枝葉の部分ばかりをやってはみたが、
うまくいかないことが多く頓挫してしまうというのを経験した方が多いのでは。

長期的な施策、土台や根幹となる部分をないがしろにして進めている企業が散見されます。
まずは土台や根幹となる環境整備を行いながら、短期的な枝葉の施策を継続することで、
組織は変わっていくのです。
他にうまくいかない理由、それは携わる仕事に対しては、プロフェッショナルですが、
施策に関して、この分野のプロフェッショナルではないからです。

環境を整備せずに枝葉の施策をとっても、改善に繋がらず、やってもやってもうまくいかない。
疲弊して組織が変わらない、変えれずどうすればいいのかという悩みにつながっています。

そんな経験をした方がたくさんいらっしゃるのでは。

次回は取り組みがうまくいく企業、
そう出ない企業についてお話を進めていきます。

最後までご覧いただきありがとうございます。

参考資料

マッキンゼー・アンド・カンパニー(2024). 『Healthy Organizations Keep Winning, But the Rules Are Changing Fast』, 2025年2月21日アクセス. https://www.mckinsey.com/capabilities/people-and-organizational-performance/our-insights/healthy-organizations-keep-winning-but-the-rules-are-changing-fast

健康的な組織は勝ち続けるが、ルールは急速に変化している4へつづく