
前回は企業文化・風土の環境整備と9つの指標の実践方法についてお話を進めました。
ここでは取り組む実践において、うまくいく企業とそうでない企業についてお話を進めていきます。
取り組みを進められる企業とそうでない企業の違いと要因
企業の組織改革や文化変革が成功するかどうかには、複数の要因が影響します。
同じ施策を導入しても、
成果を出せる企業とそうでない企業がある理由を理解することで、
より効果的なアプローチが可能になります。
1.進められる企業 vs 進められない企業の違い
要因 | 進められる企業(成功する企業) | 進められない企業(停滞する企業) |
---|---|---|
経営陣のコミットメント | トップが変革の必要性を理解し、積極的にリーダーシップを発揮 | 経営陣が現状維持を優先し、改革を後回しにする |
企業文化と風土 | 挑戦を奨励し、社員の意見を取り入れる文化がある | 変化を嫌い、過去のやり方に固執する |
社員の巻き込み | 全社員を巻き込んで、ボトムアップの変革を進める | 一部の管理職や上層部だけで改革を進め、現場がついてこない |
評価・報酬制度 | 組織の変革に貢献した社員を適切に評価し、インセンティブを提供 | 旧来の評価制度のままで、変革の努力が報われない |
業務プロセスと環境整備 | デジタルツールや新しい業務プロセスを導入し、効率化を図る | 手作業が多く、意思決定プロセスが遅い |
心理的安全性 | 失敗を許容し、フィードバックを奨励する | 失敗が責められ、社員が意見を言えない |
外部環境への適応 | 市場の変化に敏感で、柔軟に組織を進化させる | 競争環境の変化に鈍感で、改革の必要性を感じにくい |
2.具体例:成功した企業 vs 失敗した企業のケーススタディ
成功事例:トヨタ自動車(企業文化の変革)
◆背景
トヨタは「カイゼン(改善)」の文化を根付かせ、
社員一人ひとりが改善活動を実践する仕組みを確立。
経営陣だけでなく、現場の社員が自ら改善提案を行い、
企業文化として定着している。
◆成功要因
- 経営陣のコミットメント:経営層が「カイゼン文化」の重要性を明確に示し、全社的に推進。
- ボトムアップの文化:工場の現場から改善提案を受け付け、社員の意見を尊重。
- 報酬と連携:優れた改善提案には報酬や表彰を設け、モチベーションを維持。
失敗事例:シャープ(組織改革の停滞)
◆背景
シャープは2000年代に液晶パネル事業で世界をリードしたが、
その後の経営環境の変化に適応できず、経営が悪化。
企業文化の硬直性が組織改革の障壁となり、
最終的に外資の支援を受けることに。
◆失敗要因
- トップダウン型の意思決定:経営層が市場の変化を過小評価し、柔軟な戦略変更ができなかった。
- 社員の意見を取り入れない文化:ボトムアップの仕組みが弱く、現場の危機感が経営層に届かなかった。
- 変革の遅れ:デジタル化や新規事業へのシフトが遅れ、競争力を失った。
成功事例:パタゴニア(ミッション・ビジョンの実践)
◆背景
パタゴニアは「地球を救うためにビジネスを行う」という明確なミッションを掲げ、
環境問題への取り組みを事業の中心に据えている。
社員の価値観と企業文化が一致しており、
エンゲージメントが高い。
◆成功要因
- ミッションの明確化:全社員が共感できる価値観を持ち、組織の方向性がぶれない。
- 実践と一貫性:環境に配慮した製品開発を行い、社員が誇りを持てる仕事を提供。
- 柔軟な働き方の導入:リモートワークや社員の自主性を尊重する制度を取り入れ、エンゲージメント向上。
失敗事例:ノキア(イノベーションの停滞)
◆背景
かつて携帯電話業界をリードしていたノキアは、
スマートフォン市場の急成長に対応できず、競争力を失った。
組織文化が硬直的で、イノベーションを阻害したことが要因。
◆失敗要因
- 現場の声が届かない:技術者やエンジニアが市場の変化を指摘しても、経営陣が危機感を持たなかった。
- リスク回避の文化:新しい挑戦をするよりも、既存の成功モデルに固執。
- 外部環境への対応が遅い:iPhoneの登場後も独自路線を維持し、競争力を失った。
3.進められる企業になるための具体的なアクション
企業が変革を成功させるためには、
以下の取り組みが重要です。
1. 経営陣のリーダーシップを強化
・経営層が変革の必要性を認識し、明確なメッセージを発信
・リーダー自身が変革を体現し、社員の手本となる
2. 社員の巻き込みを強化
・ボトムアップのアイデア提案制度を導入(例:社内ピッチイベント)
・社員の意見を経営層が直接聞く仕組み(例:タウンホールミーティング)
3. 環境整備と制度設計
・成功事例を社内で共有し、横展開する
・評価制度を見直し、変革に貢献した社員を適切に評価
4. 継続的な改善と適応
・変革の進捗を定期的に評価し、PDCAサイクルを回す
・市場や顧客の変化を敏感にキャッチし、柔軟に対応
まとめ
◆企業の文化や風土が変革の成否を大きく左右する
◆ 成功企業は、トップのリーダーシップと社員の巻き込みが鍵
◆進められない企業は、変化を恐れ、現状維持に固執する傾向
◆長期的な視点で、段階的に変革を進めることが重要
どの企業も、一歩ずつ環境を整えていくことが、持続的な成長につながります。
継続的な取り組みが組織の健康を改善していくということです。
リーダーが変革のための指揮を取り続け、なぜ組織があり続けるのか、
また必要とされるかをコミットし続けること。
長期的な環境整備という施策を行なっていくことで、
関係の質が変わり、社員を巻き込めるということになっていくのです。
多くが間違っているのが、結果から入ってしまい、機能不全を起こしている場合が多いです。
まずば関係の質の改善のための環境整備。
個人的にはここから出発しないと改革がうまくいかないのが経験としてあります。
企業の成功事例と失敗事例をみていただきました。
どのような取り組みがうまくいくのかそうでないのかのヒントを掴んでいただけたのでは。
次回はHRツール「TOiTOi」を利用することで、
さらに施策を進めやすくなるというお話です。
最後までご覧いただきありがとうございます。
参考資料
マッキンゼー・アンド・カンパニー(2024). 『Healthy Organizations Keep Winning, But the Rules Are Changing Fast』, 2025年2月21日アクセス. https://www.mckinsey.com/capabilities/people-and-organizational-performance/our-insights/healthy-organizations-keep-winning-but-the-rules-are-changing-fast
健康的な組織は勝ち続けるが、ルールは急速に変化している5へつづく