年齢は輝きの扉:中年期から始まる女性の心の変革ビジネスへの応用4

前回は「自我統合(Ego Integrity)」の場面における組織の状態や、
組織への影響を見ていきました。合わせてビッグファイブとの関連性について見ていきました。

またシニアメンバーやシニアリーダーの活用事例についてもお話をしていきました。

ここでは絶望(Despair)とビッグファイブの関連性と、1on1についてのお話です。

絶望(Despair)とビッグファイブとの関連性

絶望(Despair)は、エリクソンの発達理論における最後の発達段階「自我統合 vs 絶望」における負の側面であり、
人生に対する後悔、自己否定感、失望を特徴とします。

絶望がビジネスに与える影響を理解するために、
ビッグファイブとの関連性を明らかにしながら、
心理学的知見を基に詳述します。

1. 絶望がビジネスに与える影響

絶望は、以下のようなネガティブな影響をビジネス環境にもたらす可能性があります。

(1) 個人の生産性とモチベーションの低下

  • 絶望感が強い個人は、自分の過去を否定的に捉え、自信を持てないため、モチベーションが著しく低下します。
  • 業務において積極性が欠け、責任ある役割を避ける傾向があります。

(2) チームの士気低下

  • 絶望感を抱える社員がチームにいると、ネガティブな感情が伝播し、他のメンバーの士気やパフォーマンスに悪影響を及ぼします。

(3) 変化や成長への抵抗

  • 絶望感が強い個人は、新しい挑戦や変化を恐れるため、組織の成長やイノベーションの障害となる可能性があります。

(4) 離職リスクの増加

  • 自分のキャリアや役割に満足できず、会社に対するロイヤルティが低下し、離職の可能性が高まります。

2. ビッグファイブとの関連性

絶望は、ビッグファイブの特性と以下のように関連します。

(1) 情緒安定性(Neuroticism: 高い場合)

  • 関連性:
    • 絶望感が強い人は、情緒安定性が低く、ストレスやネガティブな感情に過剰に反応する傾向があります。
  • ビジネスへの影響:
    • ストレスフルな状況での適応力が低く、問題解決能力や冷静な判断力に欠けます。
    • チーム内での感情的な対立や、職場環境の悪化を引き起こします。

(2) 開放性(Openness to Experience: 低い場合)

  • 関連性:
    • 絶望感が強い人は、自己の過去や現在に閉じこもり、新しいアイデアや視点を受け入れる柔軟性が乏しい傾向があります。
  • ビジネスへの影響:
    • イノベーションや創造性を阻害し、既存のプロセスや慣習に固執することが多いです。
    • 市場の変化や技術の進化に対する適応が困難になります。

(3) 協調性(Agreeableness: 低い場合)

  • 関連性:
    • 絶望感が強い人は、他者との関係を築く意欲が低く、孤立する傾向があります。
  • ビジネスへの影響:
    • チーム内での信頼関係が損なわれ、協働が難しくなります。
    • 顧客対応や対人スキルが低下し、ビジネス関係の損失につながる可能性があります。

(4) 外向性(Extraversion: 低い場合)

  • 関連性:
    • 絶望感が強い人は、外向性が低く、他者との交流や積極的な行動を避ける傾向があります。
  • ビジネスへの影響:
    • チーム内での情報共有が不足し、連携が取れなくなります。
    • 会社のビジョンや目標の推進に必要なリーダーシップが欠如します。

(5) 誠実性(Conscientiousness: 低い場合)

  • 関連性:
    • 絶望感が強い人は、目標志向や計画性が低下し、仕事への責任感が欠如することがあります。
  • ビジネスへの影響:
    • 業務が期限内に完了せず、タスクの進行が遅れます。
    • プロジェクト管理や長期的な計画遂行が難しくなります。

3. 絶望感を軽減するためのアプローチ

絶望感がビジネスに与える影響を最小化し、組織や個人の成長を促すために以下の心理学的アプローチが有効です。

(1) 心理的安全性の確保

  • 方法:
    • 職場で失敗や課題をオープンに共有できる環境を作り、社員がネガティブな感情を表出できる場を提供します。
    • メンタルヘルス支援プログラムを導入し、心理的ケアを行います。
  • 効果:
    • ネガティブな感情を和らげ、社員が安心して働ける環境を構築できます。

(2) 自己効力感の強化

  • 方法:
    • 社員が成功体験を積めるよう、小さな目標を設定し、それを達成することで自己肯定感を高めます。
    • ポジティブなフィードバックを通じて、自己価値を認識させます。
  • 効果:
    • 自己効力感が高まることで、絶望感が軽減され、業務への意欲が向上します。

(3) 意義のある目標設定

  • 方法:
    • 社員が「自分の仕事が社会や組織に貢献している」と感じられるよう、意義のある目標を設定します。
    • CSR活動や社会的影響を意識したプロジェクトに参加する機会を提供します。
  • 効果:
    • 自分の役割に対する意義を感じ、絶望感が軽減されます。

(4) 定期的なキャリアレビュー

  • 方法:
    • 社員が過去の成功や現在のスキルを再評価できる場を設けます。
    • 将来のキャリア目標を具体化するための支援を行います。
  • 効果:
    • 過去の否定的な捉え方を変え、将来に対するポジティブな見通しを持たせることが可能です。

4. 結論

絶望感は、ビジネスにおいて個人や組織の生産性、士気、柔軟性に重大な影響を与えます。

ただし、情緒安定性や開放性を高める施策を講じることで、
絶望感を軽減し、ポジティブな職場環境を構築することが可能です。

心理的安全性の確保や自己効力感の強化といった施策は、
個人の心理的健康だけでなく、組織全体の成長に寄与するでしょう。

1on1のコツ

1on1ミーティングは、社員が抱える課題や心理的状態(例えば絶望感などのネガティブな感情)を理解し、
改善に向けたサポートを提供する有効な手段です。

特に、相手の個性や特性を考慮しながら1on1を行うことで、
問題解決だけでなく、信頼関係の構築や長期的な成長にもつながります。

以下に、1on1を絶望感などのネガティブな状況の改善に活用する方法と、
その効果を詳しく解説します。

1. 1on1の意義と効果

1on1は、単なる業務の進捗確認ではなく、
以下のような目的で実施することで、相手の心理的状態を改善する機会となります。


(1) 開放的な対話の場を提供

  • 個別の時間を設けることで、
    社員が安心してネガティブな感情や悩みを共有できる環境を提供します。
  • 「心理的安全性」を高め、
    相手が感じている絶望感やストレスの根本原因を特定する助けになります。

(2) 自己認識と課題の整理

  • 員が過去の成功体験や強みを再評価し、自己効力感を高めるための場となります。
  • 絶望感が原因で自己認識が歪んでいる場合、対話を通じてそれを整理し、ポジティブな捉え方を促します。

(3) 信頼関係の構築

  • 上司やリーダーが1on1で相手の話を傾聴することで、信頼関係が強化されます。
  • 信頼感がある場合、ネガティブな感情や課題についても安心して相談できるようになります。

2. 1on1を通じた改善アプローチ

1on1で絶望感やその他の心理的課題を改善するための具体的なアプローチを以下に示します。


(1) 共感と傾聴の実践

  • 方法:
    • 相手の話を中断せず、最後まで傾聴します。
    • 共感的なリアクション(例:「それは大変でしたね」「そう感じるのも当然です」)を示し、感情を受け止めます。
  • 期待される効果:
    • 相手が「自分は認められている」と感じることで、心理的安全性が向上します。
    • ネガティブな感情が軽減され、問題解決のための具体的な対話が可能になります。

(2) 強みや成功体験の引き出し

  • 方法:
    • 過去の成功事例や自分が誇りに思っている成果について質問します(例:「これまでで最も満足したプロジェクトは?」)。
    • 現在のスキルや強みをリストアップし、それを活かせる方法を一緒に考えます。
  • 期待される効果:
    • 自己効力感が高まり、絶望感が和らぎます。
    • 強みを活かして具体的な行動に移る意欲が高まります。

(3) 意義の再確認

  • 方法:
    • 業務やキャリアの目標が相手にとってどのような意義を持つかを対話で探ります(例:「この仕事を通じて何を達成したいですか?」)。
    • 業務が社会的な影響や組織全体の成果にどのように貢献しているかを具体的に示します。
  • 期待される効果:
    • 自分の役割や業務の重要性を再認識することで、モチベーションが向上します。
    • ネガティブな感情が軽減され、自己価値感が高まります。

(4) 行動計画の共同作成

  • 方法:
    • 絶望感や課題の具体的な原因を特定したうえで、小さな目標を設定します。
    • 「今週中にできること」「短期間で達成可能なこと」を具体的に話し合います。
  • 期待される効果:
    • 明確なアクションが決まることで、相手に「変化できる」という自信を持たせます。
    • 絶望感が減少し、行動的な変化が促されます。

3. 1on1の成功に向けたポイント

1on1を効果的に活用するには、以下のポイントを意識することが重要です。


(1) 定期的な実施

  • 一度きりの1on1ではなく、継続的に実施することで、相手の状況や進捗を把握しやすくなります。
  • 変化や改善の兆候を見逃さず、必要なサポートを継続できます。

(2) 対話の記録とフォローアップ

  • 話し合った内容や決めた行動計画を記録し、次回の1on1で進捗を確認します。
  • 相手が「サポートされている」と感じるようなフォローアップを実施します。

(3) 個性や特性を理解した対応

  • ビッグファイブの特性を参考にし、相手に適したコミュニケーション方法を選びます。
    • 例: 外向性が低い相手にはゆっくりと落ち着いたペースで、
      情緒安定性が低い相手には安心感を与える言葉を意識します。

4. 結論

1on1は、相手の絶望感やネガティブな状態を改善する絶好の機会となります。

1. 失敗する1on1 vs. 成功する1on1の比較表

項目失敗する1on1成功する1on1
話す割合上司90% / 部下10%上司30% / 部下70%
内容の焦点数字や進捗のみ成長・価値観・キャリア含む
心理的安全性低い(詰める場になっている)高い(安心して話せる)
対話の深さ浅い(業務の表面レベル)深い(価値観やビジョンまで)
フィードバックの質ほぼなし or 一方的双方向で具体的

2. 絶望(Despair)がビジネスに与える影響(10段階評価)

影響程度(1-10)
生産性低下8
チーム士気低下7
変化への抵抗6
離職リスク増加9

3. ビッグファイブと1on1の効果

ビッグファイブ特性ポジティブな影響ネガティブな影響
情緒安定性ストレス耐性向上感情不安定で会話が困難
開放性新しい視点の吸収固定観念にとらわれる
協調性信頼関係の強化衝突が増える
外向性積極的な対話対話が少なくなる
誠実性具体的なアクション実行行動に移しにくい

共感的な傾聴、自己効力感の向上、
業務や目標の意義付け、具体的な行動計画の設定を通じて、
相手が心理的課題を克服し、ポジティブな行動に移るようサポートできます。

継続的かつ計画的に1on1を行うことで、
相手の特性や状態に適した対応が可能となり、個人の成長だけでなく、
組織全体の健全性や生産性向上にもつながります。

なぜ1on1が失敗するのか。それは1on1について学んでいない、プロフェッショナルではないからです。
1on1を部下に対して行なっている、管理職の方は携わっている業務ではプロフェッショナルでしょう。
しかし、1on1についてはきちんと学ばれていないからです。

私たちが推奨する1on1は相手のことを理解することが目的です。
ほとんどの場合は仕事の成果などの数字を詰めているからうまくいきません。
また上長が話してばかりということも、実際の場面では起こっています。

相手と自分は違うという認識をもって臨み、相手を知る機会とすること。
これが1on1の成功への近道です。

最後までご覧いただきありがとうございます。

参考資料

Williams, R., & Krendl, A. (2024). 『年齢は可能性である:中年期から後年期における女性の人格変化の軌跡』. 2025年1月25日アクセス.https://www.researchgate.net/publication/332537752_Age_is_opportunity_Women’s_personality_trajectories_from_mid-_to_later-life