有効なフィードバックと1on1と心理的安全性

フィードバック。これは人財育成や教育の場面で使われており、
フィードバックには有効なものそうでないものがあります。

あなたのフィードバックは部下や生徒を成長させるものでしょうか。
今回はフィードバックについてお話を進めていきます。

肯定的と否定的なフィードバック

1. フィードバックが肯定的または否定的になる要因

フィードバックの効果が肯定的か否定的かは、以下の要因に左右されます。

肯定的なフィードバックになる条件

  • 具体的で建設的である場合:
    具体的な行動や成果に基づき、
    改善点や成功例を明確に伝えるフィードバックは、
    相手に「何をすべきか」を理解させ、次の行動につなげます。
    • 例:社員がプレゼンの練習をした場合、
      「あなたの資料構成はよく整理されています。ただし、
      スライド4ではもっとデータの具体性を強調するとさらに説得力が増します」と伝える。
  • タイミングが適切である場合:
    フィードバックは行動や結果の直後に行うことで、
    相手が改善点を記憶しやすくなります。
    また、業務が落ち着いているタイミングで行うと、相手が冷静に受け止めやすいです。
  • 心理的安全性が高い環境で行われる場合:
    フィードバックが批判ではなく、
    成長を目的としていると相手が理解している場合、受け入れやすくなります。
  • 肯定的な部分を重視する場合:
    成功している点や良い部分を先に伝え、
    その後に改善点を述べると、
    相手はフィードバックを前向きに受け止めやすくなります。

否定的なフィードバックになる条件

  • 曖昧または批判的である場合:
    「あなたのやり方は間違っています」「もっと頑張れ」といった曖昧で批判的なフィードバックは、
    相手に行動改善の具体策を示さず、モチベーションを低下させます。
  • 過度に感情的である場合:
    怒りや失望を含む感情的なフィードバックは、
    相手の防御反応を引き起こし、内容が伝わらないどころか、
    信頼関係を損ねるリスクがあります。
  • 評価的で成長を目的としない場合:
    単なる成績やパフォーマンスの良し悪しだけを伝える場合、
    相手は「評価されている」だけで「成長のための助言」を受けていると感じません。
  • 相手の準備が整っていない場合:
    突然のフィードバックや、ストレスが高い状態での指摘は、
    相手が受け入れる余裕を失わせ、効果が薄れます。

1. 教育におけるフィードバックの定義

(1) タスク中心のフィードバック

  • 定義: 生徒が課題やテストで取り組んだ内容についての具体的な情報を提供し、
    何が正しいのか、何が改善点なのかを明示する。
  • : 「この数学の問題は式の立て方が正しいけれど、計算ミスがあるので確認しましょう。」
  • 目的: 学習内容の理解を深め、次回のパフォーマンス向上を支援する。

(2) プロセス中心のフィードバック

  • 定義: 学習の取り組み方や考え方、解決方法に焦点を当てる。
  • : 「この問題では仮説を立てたプロセスが素晴らしいですが、検証する方法をもう少し具体的にする必要があります。」
  • 目的: 思考プロセスの向上や、問題解決能力の発展を促す。

(3) 自己調整中心のフィードバック(メタ認知)

  • 定義: 生徒が自分自身の学習を振り返り、自己調整を行う能力を高めるための助言。
  • : 「このレポートでは構成を考える段階で時間をかけましたが、その結果が反映されていますね。次回はアウトラインを先に作ることでさらに効果的になるでしょう。」
  • 目的: 自己管理能力や自己評価力を強化し、生涯学習の姿勢を育む。

(4) 自己概念中心のフィードバック

  • 定義: 生徒の自己肯定感や動機付けを高めるために、努力や成果を認める声掛けやサポート。
  • : 「あなたがこの課題に一生懸命取り組んだ姿勢は素晴らしいです。努力が結果につながっていますね。」
  • 目的: 生徒の自己肯定感を強化し、内発的動機を促進する。

2. 教育におけるフィードバックの役割

(1) 学習成果の向上

フィードバックは、生徒の知識やスキル向上を直接的にサポートします。具体的には、以下を提供します:

  • 現状と目標のギャップを明確にし、改善への道筋を示す。
  • 生徒が「できたこと」「できなかったこと」を自覚し、次の学習行動を促す。

(2) 学習意欲の向上

フィードバックは、生徒が自信を持ち、継続して努力するための心理的支援となります。
教師は、生徒がフィードバックを前向きに受け止められるよう心理的安全性を確保します。


(3) 自己調整能力の育成

生徒がフィードバックを活用して学習プロセスを振り返り、
自分で学習を進める力(自己調整学習力)を育成します。これにより、将来的な自立した学習者を育てます。


(4) 関係性の構築

教師と生徒間の信頼関係を築くことで、
フィードバックはただの指摘ではなく、協働的な学習体験に変わります。

生徒は教師を信頼し、フィードバックを成長の機会として捉えやすくなります。

3. マネジメントからの考察

(1) 教室とビジネス現場の共通点

教育現場でのフィードバックは、
ビジネスのマネジメントにおける人材育成プロセスと共通する点が多くあります。

例えば:

  • 目的指向: 成果を上げるための具体的行動や戦略を明確化する。
  • プロセス改善: タスクの達成だけでなく、思考過程やアプローチの改善にも注目する。
  • 自己調整と自律性: 学生(社員)が自己管理しながら成長できるよう支援する。

(2) フィードバックモデルの適用

ビジネスでは、教育現場のフィードバック理論を応用し、次のモデルを活用します:

  • フィードアップ:「目標は何か?」を明確にし、方向性を示す。
  • フィードバック:「今どこにいるか?」を示し、進捗状況を評価する。
  • フィードフォワード:「次は何をすべきか?」を具体化し、改善策を提示する。

(3) 実践的アプローチの重要性

教育現場でもビジネスでも、
フィードバックは継続的かつ双方向のプロセスとして取り入れる必要があります。

これは、単なる「指摘」ではなく、次のアクションを具体化し、
自己成長のトリガーとするためです。

4. フィードバックを教育場面で活かすには

教育におけるフィードバックは、
生徒の成長と自己調整能力を促進するための情報提供プロセスと定義できます。
これはマネジメントのプロフェッショナル視点から見ても、
組織開発や社員育成に直結する概念です。

教育の現場で重視されるフィードバックのモデル(タスク、プロセス、自己調整、自己概念)は、
ビジネスシーンにも応用可能であり、
目標設定、進捗確認、次のステップ提示という一連の流れを通じて、
社員のモチベーションやパフォーマンス向上を支えるツールとなります。

教育とビジネスの共通性を踏まえたうえで、
心理的安全性や双方向の関係性を強化するフィードバック文化の構築が、
双方において極めて重要であると言えるでしょう。

最後までご覧いただきありがとうございます。

参考資料

Hattie, J. & Timperley, H. (2007). 『The Power of Feedback』, Review of Educational Research, 77(1), pp. 81–112. 2024年12月19日アクセス. https://doi.org/10.3102/003465430298487

有効なフィードバックと1on1と心理的安全性2へつづく