相続に関する法律は、
主に日本の民法に規定されています。
相続は、ある人が亡くなった際に、
その人の財産や債務を遺族が受け継ぐことを指します。
以下が日本の相続に関する主要な法律やポイントです。
相続のポイント
1. 法定相続人
相続人には法律で定められた順位があります。
通常、次のような順番で相続権が発生します。
- 配偶者は常に相続人になります。
- 子供が第一順位の相続人。
- 子供がいない場合、直系尊属(親、祖父母)が第二順位。
- 直系尊属もいない場合、兄弟姉妹が第三順位。
2. 法定相続分
相続人の間で遺産がどのように分割されるかも民法で定められています。
たとえば:
- 配偶者と子供が相続する場合、配偶者の相続分は1/2、
子供の相続分は残り1/2を等分します。 - 配偶者と直系尊属の場合は、
配偶者が2/3、直系尊属が1/3を相続します。
3. 遺言書
遺言書があれば、遺言に基づいて相続が行われます。
遺言書には以下の形式があります。
- 自筆証書遺言:自分で書いた遺言書。
- 公正証書遺言:公証人の前で作成する遺言書。
- 秘密証書遺言:遺言内容を秘密にしたまま公証人の確認を受けるもの。
4. 遺留分(いりゅうぶん)
遺言書があっても、
一定の相続人には最低限の取り分(遺留分)が保証されています。
遺留分を侵害されると、遺留分減殺請求を行い取り分を主張できます。
- 遺留分が認められているのは、
配偶者、子供、直系尊属です。
兄弟姉妹には遺留分はありません。
5. 相続放棄
相続には財産だけでなく債務も含まれるため、
債務が多い場合、相続を放棄することができます。
相続放棄をする場合、
相続の開始を知った時から3ヶ月以内に
家庭裁判所に申請する必要があります。
6. 代襲相続
相続人である子供がすでに亡くなっている場合、
その子供(孫)が代わりに相続する権利を持つことを代襲相続と呼びます。
7. 遺産分割協議
複数の相続人がいる場合、
遺産を分割するための話し合いを行います。
合意が得られない場合、
家庭裁判所で調停や審判を行うことになります。
これらが、日本の相続に関する基本的な法律や仕組みです。
相続の手続きや税金についても個別に詳しく規定があるため、
専門家のサポートを受けるのが一般的です。
相続時精算課税制度
相続時精算課税制度は、
生前に贈与された財産を、
相続時にまとめて精算する制度です。
この制度を利用すると、
生前贈与の際に大きな金額でも一定額までは贈与税がかからず、
相続時にまとめて相続税の計算を行うことになります。
主に高額な贈与を行いたい場合に利用されますが、
相続時に精算されるため、
贈与税の代わりに相続税を負担する形になります。
制度の概要
- 適用対象者
- 贈与者:60歳以上の親や祖父母。
- 受贈者(財産を受け取る人):20歳以上の子や孫。
- 非課税枠
- 一人の贈与者につき、2,500万円までは非課税です。
- 2,500万円を超える部分には、一律20%の贈与税がかかります。
- 相続時の精算
- 贈与された財産は相続財産に加算され、相続税が計算されます。
- すでに支払った贈与税は、相続税額から控除されます。
制度のメリット・デメリット
- メリット:
- 大きな財産を生前に贈与でき、
贈与時点で贈与税の負担を軽減できます。 - 贈与時点での贈与税額が抑えられるため、
早めに財産を移転したい場合に適しています。
- 大きな財産を生前に贈与でき、
- デメリット:
- 贈与時に非課税枠を利用しても、
相続時にはその贈与財産が加算されるため、
相続税の負担が発生することがあります。 - 一度選択すると暦年課税(110万円までの贈与税非課税枠がある制度)
に戻ることができません。
- 贈与時に非課税枠を利用しても、
事例で説明
事例 1: 生前贈与で相続時精算課税制度を利用
60歳の父親が、
30歳の息子に自宅の頭金として3,000万円を贈与しました。
この際、相続時精算課税制度を選択した場合:
非課税枠2,500万円を超える500万円に対して、20%の贈与税が課されます。
500万円 × 20% = 100万円の贈与税を支払います。
その後、父親が亡くなり、
相続が開始されます。
この時に、
自宅の頭金として贈与された3,000万円は、
父親の相続財産として再計算されます。
そして、
もし相続税が3,500万円であった場合、
すでに支払った贈与税100万円を控除できるため、
最終的に3,400万円の相続税を支払います。
事例 2: 生前贈与が相続税対策に有効なケース
父親が所有している土地があり、
相続税が心配だったため、
相続時精算課税制度を利用して、
60歳の時に評価額1億円の土地を30歳の娘に贈与しました。
この時、贈与税の計算としては2,500万円まで非課税であり、
残り7,500万円については贈与税がかかりますが、
一律20%のため、
7,500万円 × 20% = 1,500万円の贈与税が課されます。
ただし、
将来的に土地の価値が上昇し、
相続時にはその土地の評価額が2億円に上がっていた場合、
早めに贈与しておいたことで、
相続税の計算は1億円を基準に行われるため、
相続税の負担を減らせる可能性があります。
相続時精算課税の選択
具体例を挙げて説明していきます。
相続時精算課税の選択とは、
生前に贈与を受けた財産について、
通常の暦年課税(毎年110万円まで非課税)ではなく、
相続時精算課税制度を選択して、
贈与税の課税方法を特別に変更する手続きを指します。
この制度を選択すると、
生前に贈与を受けた財産について、
相続の際にまとめて相続税として精算されることになります。
具体的な説明
- 相続時精算課税の選択
- この制度を利用したい場合は、
贈与を受けた年の翌年の3月15日までに
税務署に届け出をする必要があります。 - 一度この制度を選択すると、
以後の贈与についても、
相続時精算課税制度を適用し続けることになります。
暦年課税に戻ることはできません。
- この制度を利用したい場合は、
- 贈与税の取り扱い
- 相続時精算課税を選択した場合、
贈与税は、贈与された財産が2,500万円まで非課税となり、
それを超える部分に対して一律20%の贈与税がかかります。 - 贈与を受けた財産は、
相続が発生したときに相続財産に加算され、
相続税の計算に組み込まれます。
- 相続時精算課税を選択した場合、
- 相続税の精算
- 生前に贈与税を支払った場合、
- その金額は最終的に相続税額から差し引かれます。
相続税額が贈与税を上回る場合は、
差額を支払いますが、
相続税が贈与税より少ない場合には、
払いすぎた贈与税が還付されます。
具体例での解説
事例: 相続時精算課税の選択
60歳の父親が、
30歳の息子に自宅購入のために3,000万円を贈与しました。
この時、相続時精算課税制度を選択し、
税務署に届け出ました。
- この場合、
相続時精算課税制度の非課税枠2,500万円を超える
500万円に対して贈与税がかかります。- 500万円 × 20% = 100万円の贈与税を支払います。
数年後、
父親が亡くなり、
相続が発生します。
父親の相続財産には、
生前に贈与された3,000万円も含まれます。
たとえば、
相続時に他の財産も含めて相続税の合計額が1,000万円と
計算された場合、すでに支払った贈与税の100万円が控除されるため、
相続税として支払う金額は1,000万円 – 100万円 = 900万円となります。
選択しない場合
相続時精算課税制度を選択せず、
通常の暦年課税制度を利用していた場合、
110万円までの贈与は非課税ですが、
それを超える2,890万円(3,000万円 – 110万円)に
対して通常の贈与税が累進税率で課され、
負担が大きくなる可能性があります。
このように、
相続時精算課税を選択することにより、
高額な財産の贈与でも贈与税の負担を抑えることができ、
最終的には相続時にまとめて税金を精算することが可能です。
暦年課税とは
暦年課税とは、
生前に贈与された財産に対して、
1年ごと(暦年)の贈与額に基づいて贈与税を課す制度のことです。
暦年課税では、贈与税の非課税枠として
年間110万円までの贈与が認められており、
この金額以内であれば贈与税はかかりません。
110万円を超える贈与については、
超過分に対して累進課税の贈与税が課されます。
暦年課税のポイント
- 非課税枠
- 贈与を受けた年の合計額が110万円以内であれば、
贈与税はかかりません。 - 110万円を超える贈与には、
超えた部分に対して累進課税方式で贈与税が課されます。
- 贈与を受けた年の合計額が110万円以内であれば、
- 累進課税の税率
- 贈与額が大きくなるにつれて、
税率が上がる累進課税です。 - 例えば、110万円を超える部分に対しては、
次のような税率が適用されます(直系尊属からの贈与に適用される特例税率の例):- 200万円以下:10%
- 300万円以下:15%
- 400万円以下:20%
- 600万円以下:30%
- 1,000万円以下:40%
- 1,000万円超:45%
- 贈与額が大きくなるにつれて、
- 課税の対象
- 親や祖父母、その他の親族や第三者からの贈与でも適用されます。
具体的事例
事例 1: 非課税範囲内の贈与
60歳の父親が30歳の娘に、毎年100万円を贈与している場合:
- 暦年課税では、110万円以下の贈与は非課税です。
このため、毎年100万円の贈与については、
贈与税はかかりません。
事例 2: 非課税枠を超える贈与
60歳の父親が30歳の息子に、
自動車の購入資金として300万円を贈与した場合:
- 300万円から非課税枠の110万円を差し引いた190万円に対して、
贈与税がかかります。- 税率10%が適用され、
贈与税額は190万円 × 10% = 19万円となります。
- 税率10%が適用され、
この場合、
息子は贈与税19万円を税務署に申告して支払う必要があります。
事例 3: 高額な贈与の場合
60歳の祖父が、
孫の大学進学のために1,500万円を一度に贈与した場合:
- 1,500万円から非課税枠の110万円を差し引いた
1,390万円に対して累進税率が適用されます。- 最初の200万円に対して10%、
残りの1,190万円に対して累進的に高い税率が適用されるため、
贈与税額は高額になります。
- 最初の200万円に対して10%、
このように、
暦年課税制度は毎年の贈与について、
110万円を超えない限り税金がかからず、
超えた場合は累進的に税率が上がっていくシステムです。
長期的に少額ずつの贈与を行いたい場合に有効な方法です。
参照
国税庁HP.“財産をもらったとき”.https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/05_4.html(閲覧日2024/09/15)