
前回はヨガ実践前後における内面の状態、
ビッグファイブとの関連について詳しくお話を進めました。
ここでは、笑いヨガの実践者と
非実践者のBig Five(ビッグファイブ)性格特性の平均得点を比較した表の内容についてみていきます。
笑いヨガとBig Five性格特性

この図は、笑いヨガの実践者と非実践者のBig Five(ビッグファイブ)性格特性の平均得点を比較したものです。
エラーバー(棒線)は標準誤差を示しており、統計的有意性が示されている箇所があります。
グラフのポイント
- 白色バー(実践者):笑いヨガを日常的に実践している人
- 灰色バー(非実践者):笑いヨガを日常的に実践していない、
または初めて実践した人 - + p < .10(統計的に傾向がある)
- * p < .05(統計的に有意差あり)
統計的な判断 | 意味 | p値の目安 | 結論の確実性 |
---|---|---|---|
統計的に有意差がある | 偶然では説明できない差がある | p < .05 | 高い |
統計的に傾向がある | 差がある可能性はあるが、確実ではない | .05 ≦ p < .10 | 中程度 |
💡 実務・研究での意思決定には「統計的に有意差がある」結果を重視し、
「統計的に傾向がある」結果は補助的な情報として活用すると良い!
1. 神経症傾向(Neuroticism)
- 実践者(白色)は非実践者(灰色)より低い
- ただし、有意差はなし(統計的には確証が持てるレベルではない)
- 実践者は、ストレスや不安を感じにくい傾向がある可能性
2. 外向性(Extraversion)
- 実践者のほうが若干低いが、有意差なし
- 外向的な人が笑いヨガをするとは限らないことを示唆
3. 開放性(Openness)
- 非実践者のほうが若干高いが、統計的な傾向レベル(+ p < .10)
- 笑いヨガの長時間実践が開放性を低下させる可能性を示唆
- 長期的に継続すると新しいことを求めにくくなる?
4. 調和性(Agreeableness)
- 実践者のほうが有意に高い( p < .05)
- 笑いヨガの実践者は他者との協調性や共感性が高い傾向
- 笑いヨガが「人と一緒に行う活動」であるため、協調性が高い人が続けやすい
5. 誠実性(Conscientiousness)
- 実践者のほうが若干高いが、有意差なし
- 笑いヨガが生活習慣に組み込まれることで、計画性が影響を受ける可能性
考察
- 笑いヨガの実践者は「調和性(協調性)」が高い
- 笑いヨガは集団で行うため、人と協力できる人が継続しやすい
- 社交的な人が必ずしも続けるわけではないが、協調性は高まりやすい
- 開放性(新しい経験を求める傾向)が低くなる可能性
- 長時間の笑いヨガ実践者ほど、新しい経験を求めにくくなる可能性
- 同じことを繰り返し行うことで、行動がパターン化する?
- 神経症傾向(不安・ストレス耐性)は低いが、有意差なし
- 笑いヨガは短期的なストレス軽減効果がある
- しかし、長期間の実践が性格特性に影響するかは不明
まとめ
- 笑いヨガの実践者は「調和性(協調性)」が高い(統計的に有意)
- 開放性が低くなる傾向(統計的な傾向レベル)
- 神経症傾向(ストレス耐性)は低いが、有意差なし
- 笑いヨガが性格特性にどのような影響を与えるかは、さらなる研究が必要
この結果は、笑いヨガが社交的・協調的な人に向いており、
継続的な実践が人間関係にポジティブな影響を与える可能性があることを示唆しています。
「笑いヨガ × ビッグファイブ」結果を組織へ活かす
笑いヨガの研究結果を組織運営に応用すると、
社員の巻き込み方や目標設定のアプローチを性格特性に基づいて調整できる可能性があります。
特に、「調和性が高い人は巻き込みやすい」という点に着目すると、
組織活性化のヒントが得られそうです。
1. 調和性(Agreeableness)の高低による巻き込み戦略
◾️ 調和性が高い人 → 協調的でチームワークを重視
- 巻き込みやすい層であり、「チームで目標を達成する」ことにモチベーションを感じやすい。
- 巻き込み方法:
- 「一緒にやることで、みんなが良くなる」というメッセージが響く。
- 共感・協力を前提とした活動(例:チームでの目標達成イベント、グループワーク)
- 「〇〇さんのサポートが必要!」と役割を与えると、自分ごととして取り組む。
- 社員同士でフィードバックをし合うような文化を作ると効果的。
◾️ 調和性が低い人 → 独立心が強く、他人に依存しない
- 「みんなで協力して何かをやろう」というメッセージだけでは響きにくい。
- 巻き込み方法:
- 「個人のメリット」を明確に伝える(例:「このプロジェクトに関わるとスキルが身につく」)
- 競争や成果を重視するインセンティブを設定(例:社内コンペ、MVP表彰)
- 「自分のペースで進められる」「自分に合った役割を選べる」という裁量を与える。
- 数値的・論理的な根拠を示して納得感を与える(例:「データ的にこれをやると成果が出る」)
2. 外向性(Extraversion)の高低を考慮した巻き込み方
◾️ 外向性が高い人 → 社交的でエネルギッシュ
- チーム活動が得意で、人前で話すことやイベントに参加するのを楽しむ。
- 巻き込み方法:
- イベント形式(例:キックオフミーティング、社内表彰、SNSでの発信など)
- 人前で発表・プレゼンの機会を与える(リーダーシップを発揮しやすい)
- 「あなたの影響力が必要!」と求める(影響力を発揮することにやりがいを感じる)
◾️ 外向性が低い人 → 慎重でマイペース
- 大人数の場よりも、1対1の関係構築や静かな環境を好む。
- 巻き込み方法:
- 1対1でのコミュニケーションを重視(例:個別面談、メンター制度)
- 静かに集中できる環境を整える(オンラインやテキストベースの参加もOKにする)
- 目立たずに貢献できる役割を用意する(バックオフィス業務、分析業務など)
3. 開放性(Openness)と神経症傾向(Neuroticism)との関係
◾️ 開放性が高い人 → 新しいアイデアやチャレンジを好む
- 新しいことに積極的なので、「変化」「挑戦」をキーワードに巻き込みやすい。
- 巻き込み方法:
- 新規プロジェクトを任せる
- イノベーションワークショップを開く
- 裁量の大きいタスクを与える
◾️ 開放性が低い人 → ルーティンワークや安定を好む
- 変化よりも、決まったやり方を続けるほうが安心感を持つ。
- 巻き込み方法:
- 「過去の成功事例」を示すことで納得感を与える
- 手順を明確にして、細かくステップを区切る
- 変化を強制せず、ゆるやかに取り入れる
◾️ 神経症傾向が高い人 → 不安を感じやすい
- 目標達成やプロジェクト推進でストレスを感じやすい。
- 巻き込み方法:
- 「安心感」を強調する(例:「失敗しても大丈夫」「サポート体制がある」)
- メンタルケアやフィードバックの機会を増やす
- タスクを細分化して、達成感を得られる仕組みを作る
4. 組織活性化のための実践例
▷ 組織内の「巻き込みスタイル」を調整する
- 調和性が高い人 → チームでの目標設定や協力
- 調和性が低い人 → 個人のメリットを強調
- 外向性が高い人 → イベントや発表の場を活用
- 外向性が低い人 → 個別対応を増やす
- 開放性が高い人 → 新規プロジェクトへ
- 開放性が低い人 → 既存の仕組みの改善へ
- 神経症傾向が高い人 → 精神的サポートを厚く
5. まとめ
- 調和性が高い人は巻き込みやすい → チームでの活動を意識
- 調和性が低い人は「個人のメリット」を明確にすると効果的
- 外向性が高い人は「イベント型」、低い人は「個別フォロー」で対応
- 開放性が高い人には「変化や新規性」、低い人には「安定や継続性」を意識
- 神経症傾向が高い人には「安心感」と「段階的な目標設定」を
▷ 組織の活性化において、
社員の性格特性に応じた巻き込み方を工夫すると、
より効果的に目標達成ができる。
★ このアプローチの活用場面
◉ 新しいプロジェクトを立ち上げるとき
◉ 社内イベントやチームビルディングを実施するとき
◉ 社員のモチベーションを高めたいとき
◉ リーダーがチームを運営する際の参考に
このように、笑いヨガの研究結果を応用することで、
組織の活性化や社員の巻き込み方を最適化できる可能性があります!
参考資料
高田 明(2023). 『対面での笑いヨガの実践による心理状態の変化および性格特性との関連』, 2025年2月15日アクセス.https://www.jstage.jst.go.jp/article/warai/30/0/30_19/_article/-char/ja
笑いヨガとビッグファイブ4へつづく