
前回は笑いヨガの実践者と非実践者のBig Five(ビッグファイブ)性格特性の平均得点を比較した場合と、
笑いヨガの結果を組織構築に活かし、社員の巻き込み方についてお話をしていきました。
ここでは笑いヨガと心理状態についてお話を進めていきます。
笑いヨガ(Big Five性格特性と心理状態の関連)

この表は、Big Fiveの性格特性と心理状態(PANAS: ポジティブ・ネガティブ気分, STAI: 状態不安)の関連を相関係数(r)で示したものです。
- 相関係数(r):
- 1に近いほど強い正の相関(ある性質が高いと、もう一方も高い)
- -1に近いほど強い負の相関(ある性質が高いと、もう一方が低い)
- 0に近いほど関連がない
- 有意水準:
- + p < .10(統計的に有意傾向あり)
- * p < .05(統計的に有意差あり)
1. ポジティブ気分(PANAS: PA)との関連
- 開放性(Openness)が実践前にポジティブ気分と正の相関(r = .311)
- 開放的な人ほど、もともとポジティブ気分が高い傾向
- 性格特性とポジティブ気分の変化(実践後 – 実践前)
- 開放性と負の相関(r = – .304)
- 開放性が高い人ほど、笑いヨガによるポジティブ気分の増加が少ない
- もともとポジティブなため、笑いヨガによる変化が少なかった可能性
- 開放性と負の相関(r = – .304)
💡 解釈
- 開放性が高い人は、すでにポジティブな傾向があるため、笑いヨガの効果が相対的に小さい
- 笑いヨガは「もともとポジティブでない人」の方が大きな効果を感じやすい
2. ネガティブ気分(PANAS: NA)との関連
- 外向性(Extraversion)が実践前のネガティブ気分と有意な負の相関(r = -.535)
- 外向性が高い人ほど、もともとネガティブ気分が低い
- 調和性(Agreeableness)が実践前のネガティブ気分と負の相関(r = -.468+)
- 調和性が高い人も、もともとネガティブ気分が低い
- 性格特性とネガティブ気分の変化(実践後 – 実践前)
- 外向性との正の相関(r = .339)
- 外向性が高い人は、笑いヨガ後のネガティブ気分の減少が少ない
- もともとネガティブ気分が低いため、大きく変化しなかった可能性
- 外向性との正の相関(r = .339)
★ 解釈
- 外向性・調和性が高い人は、もともとネガティブ気分が少ない
- 笑いヨガの効果は「もともとネガティブ気分が高い人」の方が大きい
- 外向性が低い人(内向的な人)の方が、
笑いヨガによるネガティブ気分の改善効果が大きいかもしれない
3. 状態不安(STAI: A-State)との関連
- 外向性(Extraversion)が実践前の状態不安と負の相関(r = -.396)
- 外向性が高い人ほど、もともと不安が少ない
- 外向性と実践後の状態不安との負の有意傾向の相関(r = -.430+)
- 外向性が高い人ほど、実践後の不安が低い
- 性格特性と状態不安の変化(実践後 – 実践前)
- 調和性(r = -.217)、誠実性(r = -.284)と負の相関
- 調和性・誠実性が高い人ほど、不安の低下が少なかった
- もともと不安が低いため、大きく変化しなかった可能性
- 調和性(r = -.217)、誠実性(r = -.284)と負の相関
★ 解釈
- 外向性が高い人はもともと不安が少なく、実践後もその傾向が続く
- 笑いヨガは、特に「内向的な人」や「不安を抱えやすい人」に大きな影響を与える可能性
- 調和性や誠実性が高い人は、すでに安定しているため、笑いヨガの影響が小さい
4. 総合的な考察
- 笑いヨガは「ポジティブな感情を増やし、ネガティブな感情や不安を減らす」効果があるが、
その効果の大きさは性格によって異なる - 外向性・調和性が高い人は、
もともとネガティブ気分や不安が低いため、笑いヨガの影響が小さい - 開放性が高い人は、
すでにポジティブなため、ポジティブ気分の向上効果が小さい - 逆に、外向性・調和性が低い人(内向的・個人主義的な人)ほど、
笑いヨガの効果が大きくなる可能性がある
5. 組織運営への応用
この研究結果をもとに、
組織での巻き込み方やチーム運営に活かせるポイントを考えると、
以下のような戦略が考えられます。
(1)ポジティブ気分を高める施策
▶︎ もともとポジティブな人(開放性が高い人)にとっては、変化を取り入れることが重要
- 新しい取り組み(プロジェクト制など)
- アイデア募集、ブレインストーミングを活発化
- 既存のルールを見直し、自由度を高める
▶︎ もともとネガティブ気分が高い人には、楽しく参加できる機会を増やす
- 笑いを取り入れたミーティングやワークショップ
- チームでのポジティブな体験を増やす(成功体験の共有、リラックスイベント)
(2)ネガティブ気分や不安を減らす施策
▶︎ 外向性が低い人や内向的な人にフォーカス
- 1対1の対話機会を増やし、安心感を与える
- 大人数のイベントではなく、小規模な活動で巻き込む
- 目標達成の過程を細かく設定し、不安を減らす(短期的な成功を積み重ねる)
▶︎ チームワークを重視する人には、安心できる環境を提供
- 定期的なフィードバック、相互サポートの仕組みを作る
- ストレスマネジメントの研修やカウンセリングを取り入れる
6. まとめ
- 笑いヨガの効果は、性格特性によって異なる
- 調和性・外向性が低い人ほど、笑いヨガの影響を受けやすい
- 組織での巻き込み方も、性格に応じて調整するとより効果的
- 内向的な人や不安を抱えやすい人には、安心感のあるサポートを
- 開放的な人には、新しいことに挑戦できる環境を提供する
組織における目標設定や活性化の戦略として、この研究結果を活用すると、
より個々に最適化したアプローチが可能になります!
私たちは、気分によって行動を左右される場合があります。
ポジティブなときと、ネガティブなときは捉え方や普段は受け入れられていることが、
受け入れられなかったり…
ポジティブな気分だと物事を前向きに捉えることができるます。
ポジティブとネガティブはひとによってそれぞれ。
笑いヨガと一人一人の性格を把握していれば、パーソナライズな対応が可能となってきます。
雰囲気づくりはとても重要です。あなたの会社の雰囲気はポジティブで前向きになれる環境ですか。
最後までご覧いただきありがとうございます。
参考資料
高田 明(2023). 『対面での笑いヨガの実践による心理状態の変化および性格特性との関連』, 2025年2月15日アクセス.https://www.jstage.jst.go.jp/article/warai/30/0/30_19/_article/-char/ja
笑いヨガとビッグファイブ5へつづく