贈与と譲渡の違いは、
主に「無償か有償か」という点にあります。
以下で詳細を説明していきます。
贈与と譲渡の違い
1. 贈与(ぞうよ)
贈与とは、財産を無償で他人に渡す行為です。
たとえば、親が子どもにお金や不動産をあげることが該当します。
この場合、受け取る側(受贈者)は財産を無償で受け取ります。
贈与契約は双方の合意に基づき成立します。贈与を受ける場合、
一定の条件下では贈与税が課されます。
- 特徴: 無償で財産を渡す
- 税金: 贈与税がかかる可能性あり
2. 譲渡(じょうと)
譲渡とは、財産や権利を有償で他人に渡す行為です。
たとえば、土地や株式を売却する場合などが譲渡に該当します。
この場合、
売り手は財産を渡す代わりに対価(お金など)を受け取ります。
譲渡により得た利益には、譲渡所得税がかかる場合があります。
- 特徴: 有償で財産を渡す(対価が発生する)
- 税金: 譲渡所得税がかかる場合あり
これにより、贈与と譲渡の違いは
「無償か有償か」にあることが明確になります。
1. 贈与の具体例
例1: 両親が子どもに家を贈る
両親が所有する家を子どもに無償で渡す場合、
これは「贈与」です。子どもは家を無料で受け取り、
両親からの対価を支払う必要はありません。
このケースでは、贈与された家の価値に応じて、
子どもには贈与税が発生する可能性があります。
例えば、
家の評価額が基準額(年間110万円)を超える場合、
超えた部分に対して贈与税が課されます。
- 贈与: 両親 → 子ども(無償)
- 税金: 子どもに贈与税が課せられる可能性あり
例2: 祖父母が孫にお金をあげる
祖父母が孫の教育資金として現金を無償で渡す場合、
これは「贈与」に該当します。この場合、
贈与税の基準額(年間110万円)を超える金額については、
孫が贈与税を支払う必要があります。
- 贈与: 祖父母 → 孫(無償)
- 税金: 孫に贈与税が課せられる可能性あり
2. 譲渡の具体例
例1: Aさんが自分の家をBさんに売る
Aさんが自分の家をBさんに有償で売却する場合、
これは「譲渡」です。
Bさんは家の対価としてAさんにお金を支払います。
Aさんが家の売却で得た利益(譲渡益)には、
譲渡所得税が課される場合があります。
- 譲渡: Aさん → Bさん(有償、家の売却)
- 税金: Aさんに譲渡所得税が課せられる可能性あり
例2: Cさんが保有していた株式を市場で売却する
Cさんが保有していた株式を証券市場で他人に売却した場合、
これは「譲渡」です。この売却でCさんが利益を得た場合、
その利益(譲渡益)に対して譲渡所得税が課されることがあります。
- 譲渡: Cさん → 株式市場の買い手(有償、株の売却)
- 税金: Cさんに譲渡所得税が課せられる可能性あり
贈与と譲渡の対比
- 贈与: 財産を無償で渡す(例: 家やお金を子どもに無償であげる)
- 税金: 贈与税
- 譲渡: 財産を有償で売る(例: 家や株を他人に売却する)
- 税金: 譲渡所得税
贈与では対価が発生せず、
無償で財産を譲渡するのに対し、
譲渡では対価が発生し、
財産を売却してお金を得る点が大きな違いです。
子どもに贈与税が課せられる可能性あり、
贈与税が具体的に課せられるのは、
贈与された財産が一定の非課税枠(基礎控除額)を超えた場合です。
贈与税は、財産を無償で受け取った人(受贈者)が課税される税金です。
贈与税が課せられる具体的な条件
- 基礎控除額(年間110万円)を超えるとき 日本では、
年間110万円までは贈与税がかかりません。 - これを「基礎控除」といいます。
しかし、1年間に贈与された財産の総額が
この基礎控除額を超えると、
超過部分に対して贈与税が課せられます。例:- 子どもが両親から300万円の現金を贈与された場合
→ 300万円 – 110万円 = 190万円
→ この190万円が課税対象となり、贈与税がかかる。
- 子どもが両親から300万円の現金を贈与された場合
- 贈与の種類に応じた特例 教育資金や結婚・子育て資金など、
特定の目的に対して贈与を行う場合、
一定の条件を満たすと非課税になる制度があります。
しかし、このような特例を利用しない通常の贈与の場合、
基礎控除額を超えると贈与税がかかります。
贈与税の計算方法
贈与税は、
贈与額が基礎控除額を超えた部分に対して、
累進税率が適用されます。累進税率とは、
贈与された金額が大きくなるほど税率も高くなる仕組みです。
課税価格(基礎控除後) | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | なし |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,000万円超 | 45% | 225万円 |
例:
両親が子どもに500万円を贈与した場合
- 贈与総額: 500万円
- 基礎控除額: 110万円
- 課税対象額: 500万円 – 110万円 = 390万円
- 税率: 20%
- 控除額: 25万円
計算式:
390万円 × 20% – 25万円 = 53万円
→ 贈与税額は53万円となります。
贈与税まとめ
贈与税が具体的に課せられるのは、
以下の条件を満たしたときです。
- 1年間に贈与された財産の総額が基礎控除額110万円を超えた場合。
- 特定の非課税制度(教育資金贈与や結婚・子育て資金贈与)を利用していない場合。
超えた金額に対して累進課税が適用され、税額が決定します。
譲渡所得税は、財産を売却(譲渡)して
利益を得た場合に課せられる税金です。
この税金が課されるのは、
譲渡によって利益(譲渡所得)が発生したときです。
具体的には、以下の条件を満たす場合に譲渡所得税が課せられます。
1. 譲渡所得の発生
譲渡所得税は、
不動産や株式などの財産を売却した際に得た利益(譲渡所得)に
対して課税されます。
譲渡所得は、
売却価格からその財産の取得費や譲渡にかかった
費用を差し引いた金額で計算されます。
譲渡所得の計算式
譲渡所得 = 売却価格 – (取得費 + 譲渡費用) – 特別控除
例1: 不動産を売却した場合
- Aさんが不動産を1,000万円で売却し、
その不動産の取得費が500万円、
譲渡にかかった費用が100万円だった場合、
譲渡所得は次のように計算されます。- 売却価格: 1,000万円取得費: 500万円譲渡費用: 100万円
→ この400万円が譲渡所得となり、
これに対して譲渡所得税が課せられます。
例2: 株式を売却した場合
- Aさんが保有していた株式を500万円で売却し、
その株式を購入したときの価格(取得費)が300万円、
譲渡にかかった手数料が10万円だった場合、
譲渡所得は次のように計算されます。- 売却価格: 500万円取得費: 300万円譲渡費用: 10万円
→ この190万円が譲渡所得となり、
これに対して譲渡所得税が課せられます。
2. 譲渡所得税の計算方法
譲渡所得に対して、
譲渡所得税が課されますが、
財産の種類や保有期間によって税率が異なります。
- 短期譲渡所得(財産の保有期間が5年以下の場合)
- 税率: 39.63%(所得税30% + 住民税9% + 復興特別所得税)
- 長期譲渡所得(財産の保有期間が5年を超える場合)
- 税率: 20.315%(所得税15% + 住民税5% + 復興特別所得税)
3. 不動産の特別控除
不動産の売却には、
一定の条件を満たす場合に3,000万円の特別控除が適用されます。
これにより、
譲渡所得から3,000万円を差し引くことができます。
例3: マイホームを売却した場合
- Aさんがマイホームを3,000万円で売却し、
その取得費が1,500万円、譲渡にかかった費用が100万円だった場合、
特別控除を適用すると譲渡所得は次のように計算されます。- 売却価格: 3,000万円取得費: 1,500万円譲渡費用: 100万円
特別控除3,000万円が適用されるため、
譲渡所得 = 1,400万円 – 3,000万円 = 0円
→ この場合、譲渡所得税は課されません。
4. 課税されないケース
- 譲渡所得が特別控除額を下回る場合:
たとえば、マイホームを売却し、
譲渡所得が3,000万円の特別控除を適用した結果、
譲渡所得がゼロになった場合は課税されません。 - 贈与の場合:
財産を無償で贈与した場合は譲渡所得税ではなく、
贈与税が適用されます。
譲渡所得まとめ
譲渡所得税が課せられるのは、
以下の条件を満たしたときです。
- 不動産や株式などの財産を有償で売却し、
利益(譲渡所得)が発生した場合。 - 譲渡所得が基礎控除や特別控除を超える場合。
ただし、マイホーム売却の際の特例や控除などによって、
場合によっては税金がかからないこともあります。