運の良さって?、運を科学的に考える

私たちは日常生活の中で「運が良い」「運が悪い」と
感じる瞬間に何度も直面します。

しかし、運とは本当に偶然の産物なのでしょうか?

あるいは、私たち自身がその運を
引き寄せることができるのでしょうか?

最新の研究やデータが示すように、
運は単なる偶然ではなく、
私たちの行動、対人関係、
そして準備によって大きく影響を受けるものです。

運を科学的に探求し、
どうすれば自分の運を最大限に
活かすことができるかを考えてみましょう。

なぜ私はこんなに不運なのか?

不運の認識を解き明かす

多くの人が「自分は不運だ」
と感じることがありますが、
私たちがその認識に異議を唱えることは少ないです。

この認識がどうして生まれるのか、
そしてその裏に隠された
心理的要因を理解することが重要です。
運に対する私たちの認識を掘り下げ、
不運だと感じる理由を探り、そ
の感覚を変えるための戦略を提案します。

不運の認識

「不運」という感覚は、
個人の経験や認知バイアスによって形成されます。
たとえば、連続した失敗や期待に反する結果が続くと、
不運だと感じることがあります。

しかし、この感覚はしばしば主観的なものであり、
状況を歪んで見てしまうこともあります。

不運を感じる要因

不運の感覚は、
度重なる失敗やチャンスを逃す経験から
来ることがよくあります。

これは、ネガティブな出来事にばかり目を向けてしまう
認知バイアスによってさらに強化されることがあります。

運の認識を変える戦略

運に対する認識を変えるためには、
感謝の気持ちを育てたり、
マインドフルネスを実践したりすることが有効です。

また、自分が何に焦点を当てているかに気を配り、
前向きな側面に目を向けることも大切です。

不運な出来事が実は幸運だったとしても…

不運な出来事が実は幸運であるにもかかわらず、
それに気づかず「運が良い」
と思えない理由はいくつかあります。

ここでは、その心理的背景を解説します。

1. ネガティブバイアス

人間はネガティブな出来事に対して敏感で、
ポジティブな出来事を軽視しがちです。

これは「ネガティブバイアス」と呼ばれ、
進化的な理由で危険に対処するために
役立っていた可能性があります。

結果として、ポジティブな側面や
長期的に見た利点を見逃しがちです​。

2. 短期的な視点

不運に見える出来事も、
長期的に見れば幸運に転じることがあります。

しかし、多くの人は短期的な視点にとらわれてしまい、
結果がすぐにポジティブに変わらないと
「不運だ」と感じてしまいます。

例えば、職場でのミスがその後の大きな成長の
きっかけになることもありますが、
すぐにはその利点が見えないため不運だと
捉えられることがあります​

3. 自己成就予言

自分が「不運だ」と思い込むと、
それが自己成就予言のように働き、
その後の出来事を不運だと解釈しがちです。

たとえポジティブな結果が得られたとしても、
それが幸運に感じられず、
自分の「不運」な認識を強化してしまうのです​。

4. 期待と現実のズレ

不運だと感じるのは、
しばしば自分の期待と現実の間に
ギャップがあるときです。

期待していた結果が得られなかった場合、
たとえ他の面でポジティブな結果が得られても、
それが運が良いとは感じられません。

このズレが認識の歪みを引き起こし、
ポジティブな側面を見逃すことにつながります​。

5. 認知バイアスと自己対話

不運に対して、
ネガティブな自己対話が重なると、
良い出来事を過小評価してしまいます。

これは「自分は運が悪い」と考えることで、
ポジティブな事象に目を向けなくなるパターンです。

例えば、計画がうまくいかなかったとき、
その過程で得られた新しい学びやチャンスに気づかず、
不運だと思い込んでしまうことがあります​。

対策

このような認識の歪みを修正するためには、
以下のようなアプローチが有効です。

感謝の実践

日々の出来事のポジティブな
側面に意識を向ける習慣を持つことで、
幸運だと感じる機会が増えます。

リフレーミング

困難な状況を別の視点から見直し、
その中で得られる利益や学びを強調することで、
ポジティブに捉えられるようになります。

このような心理的な要因を理解し、
対策を講じることで、不運だと感じる状況を
幸運として受け止められるようになる可能性があります。

運ノートをつけてみる

リチャード・ワイズマンの
『The Luck Factor』では、
運が良い人々に共通する4つの習慣(オープンマインド、
広い人間関係、ルーチンの打破、リラックスした態度)
を実践することで、運が良くなるとされています。

しかし、ワイズマンの研究が「確認バイアス」
に影響されていることを指摘することもできます。

人は自分の信じることを裏付ける
出来事により注意を払うため、
運ノートをつけることで、
自分の運が良くなっていると感じるようになります。

つまり、運が良くなる方法は、
ただ「運ノート」をつけることでも十分、
運の良さを上げることができるということです。

運は偶然もあるが、人が運ぶものでもある

運は対人関係において次のような影響持ちます。

運と成功の帰属

成功の原因を「能力」か「運」に帰属するかは、
対人関係の中で重要な役割を果たします。

例えば、特定の人々(特に女性や人種的マイノリティ)
の成功が、彼らの能力ではなく「運」によるものだと
見なされることがあり、
このような誤った帰属が機会や
報酬の不平等につながることがあります 。

関係性の強さが影響を与える

上司と部下の関係が強く、
長期的な場合、上司は部下の能力を正当に評価し、
運に帰属することを避ける傾向があると指摘されています。

つまり、関係性がしっかりしている場合、
バイアスによる誤った運の帰属を
減らすことができるとされています​。

ステレオタイプの影響

特に人種や性別に基づくステレオタイプにより、
特定のグループの成功が「運」
によるものだと見なされる傾向が強くなります。

このような偏見が対人関係の中で生まれることによって、
キャリアにおける不平等が
さらに強まる可能性があります 。

このように、運の要素は、
対人関係の中で特に性別や人種の違いによって
異なる形で帰属されることがあり、
それが仕事の機会や評価に影響を与えることあるのです。

運に関わるステレオタイプの種類を挙げておきます。

性別に基づくステレオタイプ

女性の成功が「運」によるものと見なされる:

たとえば、女性がキャリアで大きな成功を収めた際、
周囲がその成功を「運」や
「偶然のチャンス」によるものと解釈することがあります。

特に、リーダーシップや技術職など、
歴史的に男性が多く活躍してきた分野で女性が成功すると、
その能力ではなく「たまたま成功した」
と見られることがあるのです。

このようなステレオタイプは、
女性の能力や努力を過小評価し、
結果として昇進やキャリアの機会に
悪影響を及ぼすことがあります。

「女性は感情的である」というステレオタイプ:

この固定観念は、女性がリーダーとしての判断力や決断力を持っていても、感情に左右されるという偏見から、リーダーシップに適していないと見られることがあります。これにより、女性が意思決定の場で重要な役割を果たす際に、その判断が能力によるものと見なされず、感情的な反応だと誤解されることがあります。

人種に基づくステレオタイプ

黒人の成功が「運」と見なされる:

黒人が成功を収めたとき、
その成功が努力や能力に基づくものではなく、
「偶然のチャンス」や「たまたまの運」によ
るものだとされることがよくあります。

たとえば、ビジネスの世界で成功した黒人が、
実際には非常に高い能力や努力を
発揮しているにもかかわらず、
周囲からは「幸運だった」「特別な機会があっただけ」
と見られることがあります。

このようなステレオタイプは、
黒人のキャリア機会や社会的地位に悪影響を及ぼします。

アジア人は「理数系に強い」というステレオタイプ:

アジア系の人々は、

理数系の科目や技術職で優れているという
ポジティブなステレオタイプが存在しますが、
これも問題です。

アジア人が他の分野で成功しても、
理数系以外の才能や能力が認められにくいことがあり、

偏った評価がなされることがあります。

また、理数系で成功した場合も
「アジア人だから当たり前」というように、
その努力や個人の能力を過小評価されることがあります。

交差するステレオタイプの影響

性別と人種が交差する場合、
さらに複雑なステレオタイプが形成されます。

たとえば、黒人女性がリーダーシップを発揮すると、
その能力が男性や白人女性と比べて低く見積もられ、
成功が「運」や「偶然」として片付けられやすくなります。

このようなステレオタイプの影響により、
昇進や報酬の機会が制限されることが多くなります。

対人関係の善し悪しが運に作用する

対人関係が運の認識に影響を与える

人々が他者の成功を「能力」ではなく
「運」に帰属する場合、
その根底には対人関係の質や
ステレオタイプが関わっています。

例えば、良好な対人関係がある場合、
他者の成功を正当に「能力」によるものと
評価する可能性が高く、

逆に対人関係が弱いと
成功が「運」によるものだと誤解される
可能性が増します。これにより、
運が対人関係によって左右されているように感じられるのです。

運は人の認識に左右される

性別や人種に基づくステレオタイプは、
成功や能力に対する誤った評価を生む原因となり、
それが「運」として片付けられることがあります。

これにより、実際の能力や努力が正当に評価されず、
キャリアや社会的な地位に影響を与えることが多くなります。

運と対人関係の連動

対人関係の良し悪しが、
運のように評価される要素に影響を与えるため、
ある意味では「運」とは対人関係の質に
よって決まると考えてもよいでしょう。

関係性が強ければ、
その人の成功は高く評価されやすく、
関係性が薄い場合は過小評価されることが多く、
それが「運」の良し悪しとして見られることがあるのです。

運を上げるには対人関係をよくすること

以上から、
運は対人関係の良し悪しに左右されるという
見方は妥当であるといえます。

良好な対人関係があれば、
その人の行動や結果が正当に評価されやすく、
逆に対人関係が悪ければ「運が悪い」と
感じる状況が生まれる可能性が高まります。

このため、運とは単なる偶然だけでなく、
対人関係や周囲の評価によっても大きく影響されると
考えることができます。

対人関係が強くポジティブなものである場合、
運よりも能力が評価される傾向があり、
逆に対人関係が弱かったり偏見が存在すると、
運の要素が強調される結果になります。

したがって、運が対人関係によって影響を受けているとすることは、
非常に理に適うことなのです。

運の良さって、運を科学的に考える2に続く。