LRNが発行した日本企業における倫理・コンプライアンス(E&C)プログラムの進展と
課題についてまとめており、今後の改善点を指摘した内容のレポートです。
主なポイント
規則から価値観への移行の遅れ:
日本企業では、
規則重視から価値観重視への移行が遅れています。
価値観に基づくプログラムを導入している企業はわずか27%で、
今後の改善が求められています。
リーダーシップとリスク管理:
日本の経営陣は、
コンプライアンスリスクに対する積極的な姿勢がグローバルな基準と比べて
遅れていると報告されています。
E&CプログラムがCEOに直接報告する割合は12%にとどまっており、
法務部門への報告が多い状況です。
従業員中心のプログラム:
従業員にとって使いやすいE&Cプログラムの導入が進んでおり、
その割合は2023年の21%から2024年には45%へと大きく増加しました。
一方で、
倫理文化を定期的に評価している企業はわずか29%です。
技術の活用:
オンライン研修やWebベースの行動規範が増加しているものの、
モバイルアクセスやリアルタイムのデータ分析など、
さらに高度な機能の導入が求められています。
取締役会の関与:
81%の日本企業が、
取締役会にE&Cプログラムを監督する委員会を設置しており、
取締役会の役割が重要視されています。
このレポートでは、
日本企業が倫理・コンプライアンスの分野で進展している一方で、
特に価値観重視のアプローチやプログラムの効果的な評価において、
さらなる改善が必要であることが強調されています。
価値観に基づくプログラム
価値観重視とは:
規則に従うだけでなく、
組織の文化や倫理観に基づいて「正しいことを行う」という考え方を従業員に促すことです。
具体的には、以下のような特徴があります。
倫理的な意思決定:
従業員が単に規則を守るのではなく、
会社の価値観や倫理的な指針に従って行動することを促します。
これは、
規則が網羅していない新たな状況や複雑な
問題にも対応できる柔軟性を持たせるためです。
長期的な視野:
価値観に基づくアプローチは、
短期的な利益を追求するのではなく、
長期的な信頼や企業の持続可能性を重視します。
これは、
規則を守るだけでなく、
社会やステークホルダーに対して責任を持つ行動を求めるものです。
リーダーシップの行動:
経営陣やリーダーが価値観に基づいて意思決定を行い、
それを示すことで従業員に模範を示します。
なぜ価値観に基づくプログラムの導入が少ないのか
価値観に基づくプログラムが少ない理由は以下のような理由です。
1伝統的な規則重視の文化:
日本企業では、
長年にわたり規則や手順に従うことが重視されてきました。
このため、
価値観に基づいた柔軟なアプローチを導入する文化的な変革が遅れています。
2価値観の抽象性:
規則は明確で従いやすいですが、
価値観に基づくプログラムはより抽象的で、
具体的な指針を示すことが難しい場合があります。
そのため、
価値観に基づいた行動を促すためには、
組織全体の深い理解と共通認識が必要です。
3トップマネジメントのリーダーシップ不足:
レポートでも指摘されていますが、
トップマネジメントが価値観に基づいた難しい
意思決定を行うことが少ないため、
従業員にその価値観が浸透していないケースが多いです。
4短期的な成果重視:
特に経済的なプレッシャーが高い場合、
企業は短期的な成果を求めがちで、
長期的な価値観に基づく判断が後回しにされることがあります。
これらの要因が重なり、
価値観重視のプログラムの導入が進まない背景にあると考えられます。
価値観の中核は経営指針や経営理念
価値観には経営指針や経営理念も含まれており、
具体的には、
企業が掲げる経営理念(ミッション、ビジョン、価値観)や
経営指針(行動指針や意思決定の基準)が、
価値観に基づくプログラムの中核を成しています。
価値観に基づくプログラムとは、
単に規則やコンプライアンスを守ることを超えて、
企業が大切にする理念や指針に沿って行動することを重視します。
例えば、企業の経営理念が「お客様第一」「誠実さ」「社会貢献」を掲げている場合、
従業員は日々の業務でこれらの理念に基づいた行動を取ることが求められます。
これにより、
組織全体で一貫性のある行動が促進され、
信頼の醸成や長期的な企業の成長が期待されます。
したがって、
経営理念や経営指針は、
価値観に基づくプログラムの根幹をなす重要な要素であり、
企業文化の形成や意思決定に強い影響を与えます。
この理念や指針を社員が理解し、
実際の行動に反映させることが、
価値観に基づいた企業運営の本質です。
※LRNは企業の倫理・コンプライアンス(E&C)プログラムの構築や企業文化の改善を支援する米国の企業です。
[2024年倫理・コンプライアンスプログラム有効性レポート]その2へつづく