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前回は、上級リーダーのインタビュー結果と
リーダーシップスタイルの選択の影響についてお話を進めていきました。
ここではゴールマンのリーダーシップスタイルと、TOiTOiの3分類とビッグファイブ分析を合わせて、
リーダーシップ育成モデルの1例を解説していきます。
3タイプ ・ ゴールマンのリーダーシップスタイル ・ ビッグファイブ
それぞれのタイプに適したリーダーシップスタイルを、
ビッグファイブの性格特性と関連付けてモデル化します。
タイプ | リーダーシップスタイル(ゴールマン) | ビッグファイブ(Big Five)との関係 | 特徴・適性 | 適した職種・役割 |
---|---|---|---|---|
理性タイプ(チームワーク・信頼重視) | デモクラティック(民主的) アフィリエイティブ(調和型) コーチング(育成型) | 調和性(A)・誠実性(C)・外向性(E) | – 周囲と協力しながら進めるのが得意 – 信頼関係を築くことに長ける – 部下の育成や調整役に向いている – 「何のためにやるのか」が明確だとモチベーションUP | 部署間の調整役 チームリーダー・マネージャー 人材育成・教育担当 |
比較タイプ(論理的・目標達成型) | ペースセッティング(高基準設定) コマンド(指示型) | 誠実性(C)・開放性(O)・神経症傾向(N) | – 最適な方法を見つけ、目標達成を重視 – 明確なルールや基準があると力を発揮 – 無駄を嫌い、効率重視 – 競争がある環境で力を発揮 | 専門職(エンジニア・研究職) 営業・マーケティング(目標達成型) 中間管理職(データ・成果主義) |
感性タイプ(革新・影響力重視) | ビジョナリー(ビジョン提示) アフィリエイティブ(ムードメーカー) | 外向性(E)・開放性(O)・調和性(A) | – 前例のない仕事に挑戦することを好む – 目立つポジションを好み、交渉や説得が得意 – 人を動かし、組織の雰囲気を変える – 変化を楽しみ、新しいアイデアを出すのが得意 | 起業家・新規事業開発 営業・外商・広報 交渉役(社内調整・渉外) |
各タイプの詳細
1️⃣ 理性タイプ(チームワーク・信頼関係重視)
🔹 ゴールマンのリーダーシップスタイル
- デモクラティック(民主的) → 意見を尊重し、合意形成を重視
- アフィリエイティブ(調和型) → 人間関係を大切にし、チームの士気を高める
- コーチング(育成型) → 部下の成長を促し、サポートを行う
🔹 ビッグファイブとの関連
- 調和性(A) → 他人を尊重し、信頼関係を築く力が強い
- 誠実性(C) → 組織のルールを守り、責任感が強い
- 外向性(E) → チームメンバーとの協働が得意
🔹 特徴・適性
- 周囲と信頼関係を築きながら仕事を進める
- 部署間の橋渡し・調整役に適している
- 部下の成長を支援することに喜びを感じる
- 感謝されることでモチベーションが上がる
🔹 適した職種・役割
- 部署間の調整役
- チームリーダー・マネージャー
- 人材育成・教育担当
2️⃣ 比較タイプ(目標達成・効率重視)
🔹 ゴールマンのリーダーシップスタイル
- ペースセッティング(高基準設定) → 結果を出すことを最優先
- コマンド(指示型) → 明確な指示を出し、迅速に行動させる
🔹 ビッグファイブとの関連
- 誠実性(C) → 目標達成へのコミットメントが高い
- 開放性(O) → 効率的な方法を探求する
- 神経症傾向(N) → 失敗を避けようとし、リスク管理を徹底する
🔹 特徴・適性
- 最適な方法を考えてから行動する
- 目標達成のための合理的な計画を立てる
- 競争環境で成果を出すことを好む
- 無駄な業務や曖昧な状況を嫌う
🔹 適した職種・役割
- 専門職(エンジニア・研究職)
- 営業・マーケティング(目標達成型)
- 中間管理職(データ・成果主義)
3️⃣ 感性タイプ(革新・影響力重視)
🔹 ゴールマンのリーダーシップスタイル
- ビジョナリー(ビジョン提示) → 新しい方向性を示し、周囲を巻き込む
- アフィリエイティブ(ムードメーカー) → 人間関係を築き、雰囲気を活性化する
🔹 ビッグファイブとの関連
- 外向性(E) → 人と関わり、影響力を持つことが得意
- 開放性(O) → 新しいアイデアを取り入れ、変化を楽しむ
- 調和性(A) → 他人との関係を円滑にし、巻き込み力が高い
🔹 特徴・適性
- 前例のない仕事や大きな仕事に挑戦するのが好き
- 「まずはやってみる」スタイルで、行動力がある
- 交渉や説得が得意で、人を動かす力がある
- 細かい作業は苦手だが、チームを巻き込むのが上手い
🔹 適した職種・役割
- 起業家・新規事業開発
- 営業・外商・広報
- 交渉役(社内調整・渉外)
🔷 まとめ
このフレームワークにより、リーダー育成プログラムをタイプ別に最適化 できます。
- 理性タイプ → チームマネジメント研修
- 比較タイプ → 目標管理・業務改善研修
- 感性タイプ → リーダーシップ・ビジョン構築研修
このモデルを活用すれば、
個々の強みを活かした最適なリーダーシップ開発 が可能です。
このフレームワークはあくまで一例であり、
全ての人が完全にこの3タイプに当てはまるわけではありません。
本モデルの位置づけ
- 一般的な傾向を示したものであり、個々の特性を完全に決めつけるものではない。
- 実際のリーダーシップは状況や環境、個人の成長によって変化するため、柔軟な適用が必要。
- ビッグファイブやゴールマンのリーダーシップスタイルも、
単純に1つのタイプだけを持つのではなく、複数の要素を組み合わせて発揮されることが多い。
🔹 どう活用すればよいか?
- 自己理解のツールとして使う → 自分がどの傾向が強いかを知る。
- リーダー育成の参考にする → どのスキルを伸ばせばよいかを考える。
- チームビルディングに活用 → 組織内での役割分担や人材配置の参考にする。
🔹 注意点
- 人は1つのタイプに固定されるわけではない → 環境や経験によって変わる。
- 組織文化や職場の状況によって適したスタイルが異なる → フレームワークは柔軟に活用する。
- 個々のリーダーは複数のスタイルを持ち、状況によって使い分けることが望ましい。
🔷 まとめ
このフレームワークは、リーダーシップの理解や育成の一助となるツールであり、
「絶対にこうでなければならない」というものではありません。
実際の組織やリーダー育成では、柔軟に適用し、状況に応じた調整を行うことが重要です。
TOiTOiの3分類とビッグファイブ分析を合わせて、
リーダーシップ育成モデルの1例を挙げてお話を進めてきました。
組織の状態に応じてリーダーシップやスタイルを変えていくことが重要であるということを認識していただける内容です。
あなたのリーダーシップスタイルについて考えていただける機会になれば幸いです。
最後までご覧いただきありがとうございます。
参考資料
Saxena, A., Desanghere, L., Stobart, K., & Walker, K. (2017). 『Goleman’s Leadership Styles at Different Hierarchical Levels in Medical Education』, 2025年2月1日アクセス. https://www.researchgate.net/publication/319922979_Goleman’s_Leadership_styles_at_different_hierarchical_levels_in_medical_education