ギグエコノミーと法3

前回は海外の事例を見ていただきました。

今回は日本で普及し浸透していくのか、についてです。

日本では馴染むのか

イギリスと香港の例から学び、
日本でギグエコノミーを普及させて浸透させるためには、
以下のいくつかの戦略とステップが必要です。

ただし、実際にそのままの形で機能するかどうかは懸念もあります。
日本独自の事情を踏まえた対策が重要です。

1. 法的枠組みの整備

イギリスや香港のように、
ギグワーカーの法的地位が不明確な状態では、
日本においても普及が難しいでしょう。
特に以下の点での法整備が必要となります。

雇用形態の定義:

従業員、労働者、自営業者(フリーランス)の
違いを明確にし、
ギグワーカーがどの範疇に属するかのガイドラインを作成する。

社会保険・福利厚生の適用:

ギグワーカーに対する社会保険や労働保護を拡充し、
彼らが安心して働ける環境を整備する。

契約の透明性:

労働契約の際、契約書に詳細な働き方や権利・義務を明記し、
企業とギグワーカー双方にとって公平な関係を構築する。

2. 労働者の権利保護

イギリスと香港の事例からもわかるように、
ギグエコノミーにおける労働者の保護は大きな課題です。

日本でもギグワーカーが最低賃金や有給休暇などの
基本的な労働者権利を享受できるよう、
以下の対策が必要となります。

法定最低賃金の適用:

ギグワーカーにも最低賃金が適用されるようにし、
特定の労働条件下での適用基準を定める。

労働災害保険や健康保険への加入促進:

フリーランスのギグワーカーが自ら社会保険に
加入できるような補助や奨励策を設け、
労働環境の改善を図る。

3. プラットフォーム企業の規制と責任

日本でもギグエコノミーの普及には、
デジタルプラットフォームが不可欠です。

しかし、イギリスや香港のように、
プラットフォーム企業の役割と責任を明確にしないと、
労働者が不安定な立場に置かれる可能性があります。
そこで以下の対応が重要となります。

労働条件の透明性:

プラットフォーム上での労働条件や報酬を透明化し、
働者が公平な条件で働ける仕組みを作る。

プラットフォーム企業の責任強化:

労働者の管理や報酬支払いなどにおいて、
プラットフォーム企業に一定の責任を負わせる規制を導入する。

4. 働き方の文化的な理解と変革

日本では、
安定した終身雇用やフルタイムの仕事が長年根付いており、
ギグエコノミーのような柔軟な働き方が浸透しにくい背景があります。
ギグエコノミーを普及させるためには、
以下の文化的な変革が必要となります。

働き方の多様性を促進する社会的認識:

日本ではまだ安定した雇用が理想とされることが多いため、
フリーランスやギグワーカーの働き方の価値を認め、
社会全体でその多様性を推進する必要があります。

企業側の理解と柔軟性の促進:

企業はフルタイムの従業員に頼るだけでなく、
プロジェクトベースや短期契約を活用して、
スキルに応じた人材の確保を進める柔軟なアプローチが必要です。

5. 教育とスキルアップ支援

ギグワーカーは特定のスキルに依存するため、
スキルアップが重要です。

特に、デジタル技術や専門的な知識を持つ
労働者の需要が高まるため、
教育やトレーニング支援を充実させることが必要です。

政府や企業がスキルアップをサポートするための制度を
提供することで、ギグエコノミーに適応した労働者を育成することができます。

6. 現実的な課題

考えていた通り、
実際にギグエコノミーを日本で機能させるのは容易ではありません。
以下の現実的な課題に対処する必要があります。

労働者の保護不足:

フリーランスや短期労働者が法律の保護を
十分に受けられないリスクが高い。
特に、安定した収入や社会保障が欠如している点が問題となります。

経済的・社会的セーフティネットの不足:

ギグワーカーが収入を失った際、
社会的セーフティネットが十分でないと
生活に大きな影響が出ます。
政府の補助金や支援策が欠かせません。

結論

イギリスや香港の事例から学び、
日本でギグエコノミーを普及させるためには、
法整備、労働者の権利保護、
プラットフォーム企業の規制、
働き方の文化的な変革、
教育支援など多方面での取り組みが必要です。

しかし、日本の独自の労働文化や
社会的な保護制度の課題を克服しなければ、
現実的な実現は難しいかもしれません。

これらの点に焦点を当てながら、
段階的な普及を図るのが現実的なアプローチでしょう。

人口減少問題解決の手段となるのか?

人口減少が進む日本において、
ギグエコノミーは非常に有効であり、
将来的にその重要性が増す可能性があります。

ギグエコノミーが有効な理由

労働力不足の補完:

人口減少に伴い、
従来のフルタイム労働力が減少するため、
ギグエコノミーは不足する労働力を補う
手段として機能する可能性があります。

短期的な仕事やプロジェクトベースの業務は、
特に特定のスキルを持った労働者にとっては
魅力的な選択肢となるでしょう。

柔軟な労働力活用:

企業は必要な時に必要なスキルを持った労働者を
迅速に雇用できるため、
生産性の向上やコストの削減が可能になります。

これにより、企業は競争力を維持しやすくなります。

スキルベースの報酬:

あなたが感じているように、
2040年に向けて、
特に高度なスキルを持ったギグワーカーに対する需要が高まり、
それに伴い時給が上昇する可能性があります。

特定の専門スキルが不足することで、
労働者は自分のスキルに見合った
報酬を求めやすくなるでしょう。

地方活性化の可能性:

ギグエコノミーは都市部だけでなく、
地方でも機会を提供できるため、
地方の活性化にも貢献する可能性があります。

オンラインプラットフォームを通じて、
地方の労働者が全国的に、
さらには国際的に仕事を請け負うことができるようになるでしょう。

課題と考慮すべき点

労働者の保護:

ギグエコノミーが拡大するにつれて、
労働者の権利や社会保障の確保が
重要な課題となります。

フリーランスや契約労働者は、
従来の雇用形態と比べて保護が不十分な場合が多いため、
政策的な対応が求められるでしょう。

スキル格差の拡大:

高度なスキルを持つ労働者とそうでない労働者の間で
報酬や機会の格差が広がる可能性があります。
スキルの属人化にどのように対処していくのかを
考えなければなりません。

教育やトレーニングを通じて、
全体的なスキルレベルを向上させることが求められます。

課題を日本の政府が本気で取り組めるのか、
国民性や文化的な背景を踏まえながら、
どのように普及させていくかが鍵です。
そうでなければ、今後の人口減少問題へ有効な手段とはならないでしょう。

参考サイト
By Elka Torpey and Andrew Hogan, “Working in a gig economy,” Career Outlook, U.S. Bureau of Labor Statistics,
May 2016.https://www.bls.gov/careeroutlook/2016/article/what-is-the-gig-economy.html(閲覧年月日2024/9/9)

Laura Macfarlane, “Doing business in the gig economy: A global guide for employers, “Employment and labor, Norton Rose
Fulbright, December 23, 2020.https://www.nortonrosefulbright.com/en-us/knowledge/publications/87afaec5/doing-business-in-the-gig-economy-a-global-guide-for-employers(2024/9/9)

大久保敏弘氏慶應義塾大学経済学部教授. “副業としてのギグワークはなぜ広まらないのか就業者実態調査から見る現状と課題”
.公益財団法人NIRA総合研究開発機構.2023.03.03.https://nira.or.jp/paper/opinion-paper/2023/64.html(閲覧年月日2023/9/9)

黒田 祥子.”日本のギグ市場の分析:フードデリバリーギグワークを中心として”.独立行政法人経済産業研究所.Research Digest No.0144.https://www.rieti.go.jp/jp/publications/rd/144.html,(閲覧年月日2023/9/9)