中小企業の賃上げ状況

ここでは日本商工会議所が出したデータを元に
お話を進めていきます。
引用元:日本商工会議所.“中小企業の賃金改定に関する調査」の集計結果について~中小企業の賃上げ率は正社員で3.62%、パート・アルバイト等で3.43%~

2024年6月5日時点での状況

2024年度の賃上げ

調査対象企業の74.3%が賃上げを予定しており、
1月の調査から13ポイントの増加が見られます。

「防衛的な賃上げ」(業績が改善していないが賃上げを実施する)は59.1%を占めており、
依然として多くの企業が厳しい経営環境の中で賃上げを行っています。

従業員規模による違い

従業員20人以下の小規模企業では、
賃上げを予定している企業は63.3%と全体よりも低く、
賃上げの動きが鈍い傾向があります。

業種別の賃上げ状況

卸売業や製造業では、
賃上げを予定している企業が80%以上に達している一方、
医療・介護・看護業では52.5%と低く、
業種ごとに差があります。

具体的な賃上げ額

正社員の場合、
全体での賃上げ額は平均9,662円(賃上げ率3.62%)、
20人以下の企業では8,801円(賃上げ率3.34%)です。

パートやアルバイトでは、
全体で時給37.6円の賃上げ(賃上げ率3.43%)、
20人以下の企業では時給43.3円(賃上げ率3.88%)となっています。

中小企業が直面する課題

電気代やガソリン価格の高騰、
商品の値上げなどにより、
利益を圧迫される中小企業が賃上げを行うことは難しく、
多くの企業が利益を削りながら賃上げに対応しています。

特に、
製品単価にコストを反映できないことや、
最低賃金の上昇による圧力に対する不安が強調されています。

業種や業態による違い

企業が直面する課題や
それに対するアプローチに大きな影響を与えます。

それぞれの業種には固有の特徴やビジネス環境があり、
そのため、
戦略や課題克服の方法も異なります。

以下に、
いくつかの主要な業種・業態ごとの特徴と違いをまとめます。

1. 製造業

特徴:

設備投資や材料費、人件費が主要なコスト。
労働力の確保が重要で、特に技術者や熟練労働者が不足することが多い。
生産効率や品質管理が競争力の源泉。

課題:

人材不足、特に技術者の確保。
設備の老朽化や自動化の遅れによる生産性の低下。
原材料費やエネルギーコストの上昇に対応する必要がある。

克服方法:

自動化やデジタルツールの導入により生産性を向上させる。
外部研修や技術教育を提供し、技術者の育成を推進。
グローバル市場に目を向け、輸出や多国籍化を模索する。

2. 小売業

特徴:

消費者需要の変化に即座に対応する必要がある。

立地や店舗運営がビジネス成功のカギ。

低価格競争が激しく、利益率が薄いことが多い。

課題:

人手不足、特に接客やレジ対応を行う従業員の確保。
デジタルシフトに対応できず、ECやオンライン販売に後れを取るリスク。
顧客ニーズの変化に対応した商品やサービスの提供が求められる。

克服方法:

オムニチャネル戦略(オンラインとオフラインの統合)を導入し、
消費者との接点を多様化する。
労働力の確保には柔軟なシフト管理や待遇改善を行い、
従業員のモチベーションを向上。

顧客データの分析を通じて、
ニーズに合わせた品揃えやマーケティングを強化する。

3. 飲食業

特徴:

食材コストや人件費が大きな割合を占める。
客単価が低くても、多くの顧客を集めることが収益に直結する。
リピート客や口コミが重要なビジネス成長の要素。

課題:

人手不足や高い離職率、特にアルバイトやパート従業員の確保が難しい。
食材価格の変動や衛生管理の厳格化によるコスト増。
競争が激しく、他店との差別化が難しい。

克服方法:

メニューの効率化や調理のオートメーション化によるコスト削減。
テイクアウトやデリバリーの導入、
SNSを使った口コミマーケティングで顧客のリピートを促進。

スタッフの教育やモチベーション向上施策により、
従業員定着率を高める。

4. IT・情報サービス業

特徴:

高度な技術力が求められ、イノベーションのスピードが速い。
人的資本が重要なリソースとなる。
グローバル競争にさらされ、顧客の要求水準が高い。

課題:

技術者やエンジニアの確保が難しい。
技術進化に対応するための研修や技術投資が必要。
サービス提供の品質管理や、データセキュリティの確保が重要。

克服方法:

エンジニアや開発者向けの魅力的な働き方を提案し、
優秀な人材を確保する(リモートワークや成果主義など)。
イノベーションを促進するため、
柔軟な労働環境やオープンな社内文化を構築。
海外市場への展開や、
グローバルな技術パートナーシップを模索し、競争力を高める。

5. 医療・介護業

特徴:

高齢化社会の進展に伴い、需要が増加している。
労働集約型であり、人手が不足しがち。
サービスの質が求められる一方で、
コストの制約が厳しい

課題:

人材不足、特に資格を持つ専門職の確保が難しい。
サービス提供の質を保ちながら、コスト管理が難しい。
ストレスの多い職場環境で、従業員の離職率が高い。

克服方法:

働きやすい環境を整備し、福利厚生や労働条件の改善を図る。
テクノロジー(介護ロボットやデジタル管理システム)の導入による効率化。
現場の負担を軽減するためのシフト管理やメンタルヘルスケアの強化。

6. 建設業

特徴:

プロジェクトベースの仕事が多く、労働集約型。
安全性や品質管理が極めて重要。
季節的な需要の変動が大きく、
安定した業績を維持するのが難しい。

課題:

労働力不足、特に若年層の離職率が高い。
安全管理に多くのリソースが必要で、
ミスが発生すると大きな損失を招く。
コストや納期の管理が複雑。

克服方法:

若手の人材確保には魅力的なキャリアパスの提示や、
研修プログラムの充実が効果的。
デジタルツールやドローン、
BIMなどの技術を活用して、
効率的なプロジェクト管理を実現。

チームワークを重視し、
安全性を確保するための定期的なトレーニングを実施。

各業種ごとに抱える課題は異なりますが、
それに応じた独自の対策や戦略を導入することが、
持続的な成長を促すカギとなります。