「静かな退職」とはその2

「静かな退職」(quiet quitting)の原因

「静かな退職」(quiet quitting)の具体的な原因は、
さまざまな要因が絡み合っており、
単一の原因で説明されることは難しいです。

しかし、
いくつかの主な原因が研究や調査によって突き止められてきています。
以下は、その代表的な原因です。

1. 仕事に対するモチベーションの低下

報酬と努力の不一致

多くの従業員は、
自分の努力や成果に対して十分な報酬や評価を得られていないと感じています。

これにより、

追加の努力をするインセンティブが薄れ、
最低限の仕事だけをこなす行動に繋がることがあります。

昇進やキャリア成長の機会不足

キャリアの見通しが立たない、
もしくは会社が従業員の成長に関心を持っていないと感じると、
従業員は自己成長に対する意欲を失いがちです。

これが「静かな退職」を選ぶ一因となります。

2. 過労とバーンアウト

仕事の負担が大きすぎる

過剰な業務量や長時間労働が続くと、
従業員は燃え尽き症候群(バーンアウト)を感じやすくなり、
結果として労働意欲が低下します。

特に、
過労に見合う報酬やサポートがないと、
従業員は最低限の業務しか行わなくなる傾向が強まります。

3. 心理的安全性の欠如

発言しづらい職場環境

従業員が自由に意見を言えない、
失敗を恐れてチャレンジできない職場では、
モチベーションが低下します。

このような環境では、
従業員は消極的になり、
求められた仕事以外のことに取り組まなくなります。

心理的安全性が確保されていない職場では、
創造性や積極的な関与が減少し、
「静かな退職」の現象が発生しやすくなります。

4. ワークライフバランスの問題

私生活とのバランスの欠如

ワークライフバランスが取れていないと感じる従業員は、
私生活を優先するために仕事への関与を最小限に抑えることがあります。

特に、
パンデミック後のリモートワークの普及により、
従業員が仕事とプライベートのバランスを再評価する機会が増えたことが、
静かなる退職に繋がっています。

5. 仕事の意義ややりがいの欠如

自分の仕事の意義を見失う

従業員が自分の仕事に意義を見出せない場合、
モチベーションが低下します。

特に、
日々の業務が単調であったり、
組織の目標と個人の価値観が一致していないと感じると、
従業員は最小限の労働で済ませようとする傾向があります。

6. 組織文化やリーダーシップへの不満

不適切なマネジメント

リーダーシップのスタイルが
従業員のモチベーションを下げる要因になることがあります。

例えば、
従業員の意見を無視するトップダウン型のリーダーシップや、
一貫性のない指示は、
従業員が積極的に働く意欲を削ぐことに繋がります。

組織文化の欠如

組織全体で共有されるビジョンや目標が不明確であったり、
従業員がその一員であるという感覚が薄れると、
労働意欲が低下することが分かっています。

7. 外的要因の影響

パンデミックの影響

新型コロナウイルスのパンデミックは、
多くの労働者に仕事と生活のあり方を見直す機会を提供しました。

これにより、
従業員は「自分にとって何が重要か」を再評価し、
必要最低限の仕事に従事する傾向が強まったことがあります。

経済的不安

経済的な不確実性や不安も、
従業員が過度にリスクを取ることを避け、
最小限の業務に専念する一因となっています。

8. 世代間の価値観の違い

若年層の価値観の変化

ミレニアル世代やZ世代の若年層は、
従来の世代よりもワークライフバランスや
仕事の意義を重視する傾向があります。

そのため、
これらの世代は、
過剰な努力や時間外労働に対して抵抗感を持ち、
必要最小限の業務にとどまる「静かなる退職」を選びやすいとされています。

原因は根深い

「静かなる退職」の具体的な原因は、
多様な要因が複雑に絡み合っています。

組織内のエンゲージメントや
心理的安全性の欠如、
過労、仕事の意義の欠如、
リーダーシップの問題などが主要な要因として挙げられます。

これに対処するためには、
職場環境の改善、
従業員のモチベーション向上、
キャリア成長のサポートなど、
多面的な取り組みが必要とされています。

リモートワークやデジタルツールの普及の影響

上記のようなツール等の普及が進む中で、
対面でのコミュニケーションが減少したことが、
従業員のエンゲージメントや職場のつながりに影響を与える可能性があります。

以下のような点が原因として考えられます。

1. 対面コミュニケーションの減少

リモートワークが普及したことで、
同僚や上司との偶然の会話や、
オフィス内での雑談といった自然なコミュニケーションの機会が減少しました。

このようなコミュニケーションは、
信頼関係の構築や情報共有において重要な役割を果たしており、
その欠如が職場の結束力を弱めることがあります。

2. 孤立感の増加

リモート環境では、
物理的な距離が増すことで、
従業員が孤立感を感じやすくなります。

職場でのサポートや励ましを感じにくくなり、
自分が組織の一部であるという実感が薄れてしまうことがあります。

この孤立感が「静かな退職」を促進する要因となり得ます。

3. 心理的安全性の低下

対面での接触が減ると、
心理的安全性が損なわれる場合があります。

リモート環境では、
コミュニケーションが形式的になりやすく、
従業員が率直な意見を言いにくくなることがあります。

また、
フィードバックやサポートが不足することで、
従業員は職場での自分の役割や貢献が十分に認識されていないと感じることが増え、
モチベーションが低下する可能性があります。

4. エンゲージメントの低下

オフィスでの対話や共通の目標に向けた協力が減少することで、
従業員が組織やチームに対してエンゲージメントを感じにくくなることがあります。

特に、
仕事が単なるタスクのこなす場として見られ、
組織全体のミッションや価値観に共感できないと、
仕事への意欲が低下することがあります。

5. フィードバックや評価の不十分さ

リモート環境では、
定期的なフィードバックや評価が不十分になる場合があり、
従業員が自分の努力が評価されているかどうかが不透明になることがあります。

このような状況では、
従業員は追加の努力をしようという気持ちが薄れ、
最低限の業務にとどまることが増えます。

6. 職場文化の希薄化

対面での接触が減少することで、
職場の一体感や企業文化が薄まりやすくなります。

組織のビジョンや価値観を共有する機会が減り、
従業員が自分の仕事に意味や目的を見いだせなくなる可能性があります。

これも「静かな退職」を引き起こす要因となることがあります。

対策としての「接触の再構築」

人と人との接触が減少していることが
「静かなる退職」の原因の一つである場合、
組織としては、以下のような対策が有効です。

バーチャルコミュニケーションの強化

定期的な1on1ミーティングやチームミーティングを通じて、
リモート環境でも従業員が繋がりを感じられるような工夫が求められます。

戦略的雑談の促進

業務以外のカジュアルな会話を奨励することで、
リモートワークでも自然なコミュニケーションが生まれる環境を作ることができます。

オフィスでの対面機会の増加

完全なリモートではなく、
ハイブリッド型の働き方を導入し、
定期的に対面でのコミュニケーションを持つことが、
一体感を強める助けとなります。

これらのアプローチによって、
接触の希薄化がもたらすネガティブな影響を緩和し、
エンゲージメントや心理的安全性を高めることが期待されます。