What employees say matters most to motivate performance-2

前回のデータから考えられる対策を提示していきます。

どんな対策が有効か

データから考える対策

一貫したメッセージ:

組織の方針や目標が、
全ての従業員に対して明確に伝わり、
一貫していることが必要です。
これにより、
従業員が自分の役割や貢献がどのように
組織全体の成功に繋がるかを理解できます。

理念の具体化:

経営指針や理念が抽象的ではなく、
日々の業務や評価の基準にどのように結びつくかが明確であることが、
従業員のパフォーマンスを動機づけるポイントとなります。

この点について、
従業員に理念や方向性をどのように浸透させるかが、
組織のパフォーマンス管理の成功に直結するという解釈は非常に適切です。

目標設定自体は最初にモチベーションを高めるものの、
達成が難しい場合にはモチベーションが
低下しやすいという点はよくある現象です。

これを防ぐためには、
いくつかのアプローチが有効であり、
その確認頻度も重要な要素です。

目標達成に向けたアプローチ

SMARTゴールの設定:

目標を
「具体的(Specific)」
「測定可能(Measurable)」
「達成可能(Achievable)」
「現実的(Realistic)」
「期限付き(Time-bound)」に設定することで、
従業員が進捗を実感しやすくなります。

特に達成可能な目標を設定することが、
モチベーション維持に繋がります。

段階的な目標(マイルストーン)の設定:

大きな目標をいくつかの小さな段階に分け、
それぞれのステップごとに進捗を確認できるようにすることで、
達成感を得やすくし、
モチベーションの低下を防ぐことができます。

こうした段階的な成功体験が、
長期目標の達成にも繋がります。

フィードバックとサポートの提供:

定期的なフィードバックを提供し、
目標に向けた進捗を確認することで、
従業員が方向性を見失わずに努力を続けやすくなります。

また、
必要に応じて目標の調整やサポートを提供することも重要です。

確認のための頻度

目標の確認やフィードバックの頻度は、
企業文化やチームのダイナミクスによって異なりますが、
以下の頻度が効果的とされています。

週次または隔週のチェックイン:

短期的な進捗や問題点を迅速に把握するため、
週次または隔週で簡単な進捗報告を行うと効果的です。

これにより、
目標達成のための適切なサポートを迅速に提供できます。

四半期ごとのレビュー:

長期的な目標に対する進捗確認や、
必要に応じた目標の再設定を行うために、
四半期ごとのレビューが推奨されます。

これにより、
進捗の全体像を把握し、戦略の微調整が可能になります。

年次評価:

年次評価は、
年間を通じての達成度を総括的に評価する機会として活用されます。

この段階では、
次年度の目標設定やキャリア開発の計画が行われます。

目標を達成させる

目標を設定した後にモチベーションを維持するためには、
適切な目標設定と段階的な目標、
定期的なフィードバックとサポートが不可欠です。

また、
確認のための頻度については、
週次や四半期ごとに進捗を確認することが、
目標達成をサポートする有効な方法です。

直属のマネージャーが従業員の目標設定に関与し、
パフォーマンスをよく理解しているかどうかが、
従業員のモチベーションやエンゲージメントに大きな影響を与えることが示されています。

パフォーマンス向上の主なポイント

目標設定の関与:

直属のマネージャーが従業員の目標設定に深く関与していると、
従業員は「自分がしっかりと見られている」と感じやすくなります。

これが評価を受ける際の安心感や信頼感に繋がり、
結果的にモチベーションが向上します。

評価形式ではなく内容が重要:

数値評価や行動評価など、
形式そのものはモチベーションに大きな影響を与えるものではありません。

それよりも、
評価がどのように伝えられるか、
どの程度マネージャーが従業員を理解しているかが重要です。

直属のマネージャーからのレビュー:

マネージャーが従業員の業績を正しく理解し、
適切にフィードバックを提供することで、
従業員は「自分が評価され、認められている」と感じます。

この「認知されている感覚」が
モチベーションの向上やエンゲージメントの強化に大きく寄与します。

マネージャーの接触頻度が重要

評価の形式自体よりも、
直属のマネージャーが従業員にどれだけ深く関わり、
適切なフィードバックを提供しているかが、
モチベーションやエンゲージメント向上のカギとなります。

したがって、
直接の上司からの評価やレビューが非常に効果的であると言えます。

マネージャーのトレーニングと発展的な対話

1on1ミーティングには、
以下のような追加の効果があります。

1. 従業員の成長とモチベーション向上:

  • 1on1では、
    従業員が個別のフィードバックやサポートを受けることで、
    自身の成長やキャリアに対する意識が高まり、
    モチベーションが向上します。
    定期的に個別の進捗を確認することで、
    目標達成への道筋が明確になり、
    意欲が増します。

2. 信頼関係の強化:

  • マネージャーと従業員の間で頻繁に1on1が行われることで、
    信頼関係が深まります。
    従業員は「自分が大切にされている」
    「自分の意見や考えが尊重されている」と感じることで、
    心理的安全性が向上します。
    これにより、
    従業員は率直な意見交換ができ、
    組織内でのエンゲージメントが高まります。

3. 問題の早期発見と解決:

  • 1on1は、
    従業員が抱える問題や課題を早期に発見し、
    解決する機会を提供します。
    定期的な対話を通じて、
    日々の業務で感じているストレスや悩みを共有しやすくなり、
    組織の問題を未然に防ぐことができます。

4. パフォーマンス向上とスキル開発:

  • 1on1は、
    従業員のパフォーマンスに対するフィードバックだけでなく、
    スキルの開発にもつながります。
    具体的なアドバイスや目標設定を通じて、
    従業員のスキル向上をサポートし、
    長期的なキャリア形成にも寄与します。

5. 従業員の自律性の向上:

  • 1on1では、
    従業員が自分の仕事やキャリアについて自主的に考え、
    自己決定できる場として機能します。
    これにより、
    従業員の自律性が高まり、
    自己管理能力やリーダーシップが向上します。

6. 組織の柔軟性の向上:

  • 定期的な1on1を通じて、
    組織全体のコミュニケーションがスムーズになり、
    組織の柔軟性が高まります。
    これにより、
    変化する環境に対しても迅速に対応できる組織体制を作り出すことが可能です。

1on1は、
マネジメント力の向上だけでなく、
従業員の成長や組織の活性化にも大きく寄与する重要なツールです。

非金銭的な報酬

従業員の内発的な動機に結びつけることで、
より強力なモチベーション効果を発揮します。

これに対して、
金銭的な報酬は短期的な外発的動機づけに有効ですが、
内発的な動機づけとは性質が異なります。

金銭的な報酬と非金銭的な報酬の違い

金銭的な報酬:

ボーナスや昇給など、
具体的な金銭的インセンティブは、
短期的なパフォーマンス向上には有効ですが、
持続的なモチベーション維持には限界があります。

金銭的な報酬は外発的な動機づけに強く、
目に見える成果や具体的な成果に直結しやすい特徴があります。

非金銭的な報酬:

スキルアップの機会、
プロフェッショナルな発展のためのチャレンジ、
新しい責任の付与、
リーダーシップ機会などの非金銭的報酬は、
従業員の内発的な動機、
つまり自己成長や自己実現の欲求に強く結びつきます。

また、
他者に貢献したいという思いを刺激し、
組織やチームに対するエンゲージメントを高めます。

内発的動機に結びつけるためのアプローチ

自己成長の機会を提供:

従業員がスキルアップできる環境やチャレンジングな
プロジェクトに取り組む機会を与えることで、
自己成長を促進します。

これにより、
仕事に対する誇りややりがいが生まれ、
モチベーションが向上します。

貢献の実感を得られる場を提供:

社会的に意義のあるプロジェクトや、
他者への貢献が実感できる業務に従事することで、
従業員は自分の仕事が他者にどのように影響しているかを感じ、
やりがいを持って仕事に取り組むようになります。

キャリアパスと連動した報酬設計:

プロフェッショナルな発展が認められるような
評価制度やフィードバックを設け、
従業員が自分の成長やキャリアパスに対して
明確なビジョンを持てるようにします。

報酬と内発的動機

非金銭的な報酬は、
内発的な動機(自己成長や他者貢献)に
結びつけることで、
従業員の長期的なモチベーションを高めるのに効果的です。

これにより、
従業員は自分の役割に対する深い理解とやりがいを感じ、
組織に対するエンゲージメントが向上します。

対話の重要性

このレポートからは、
従業員との対話が今後ますます重要になってくるという警鐘が読み取れます。

従業員と定期的に、
そして効果的に対話することで、
彼らのモチベーションやエンゲージメントを高めることが、
企業の持続的な成功に不可欠です。

信頼関係の構築:

対話を通じて従業員が自分の意見や考えが尊重されていると感じることが、
信頼関係の基盤を形成します。信頼がなければ、
組織内での協力やイノベーションは生まれにくくなります。

組織の柔軟性と適応力:

環境の変化に柔軟に対応するためには、
従業員との対話が必要不可欠です。

対話を通じて、
現場のニーズや課題を早期に把握し、

迅速な対応が可能になります。

エンゲージメントの向上:

従業員が対話を通じて自身の成長や貢献を実感できると、
組織に対するエンゲージメントが高まります。
これは長期的なパフォーマンスの向上にも直結します。

今後の対話のあり方

定期的でオープンな対話:

1on1などを活用し、
日常的に従業員と対話を行い、
フィードバックを提供し、
共に課題解決に取り組むことが必要です。

心理的安全性の確保:

従業員が自由に意見を述べることができる
心理的安全性を確保することで、
対話の質を高め、
組織の健全な成長を促します。

対話を怠ることは、
企業の持続的な成長を阻害し、
結果的に競争力を失うリスクがあるため、
今後の企業運営においては、
いかに対話を深めていくかが重要な課題となります。

企業全体で対話文化をどう育むか?

企業全体で対話文化を育むことは、
従業員のエンゲージメントを高め、
持続的な成長に繋がる重要な取り組みです。

これを成功させるためには、
戦略的かつ継続的なアプローチが求められます。

以下に、
対話文化を育むための具体的なステップを示します。

1. 経営陣からのリーダーシップ

対話文化を根付かせるためには、
経営陣が率先して対話を重視する姿勢を示すことが不可欠です。

トップがオープンなコミュニケーションを奨励し、
実際に日々の業務で対話を実践することで、
全社的な文化が形成されます。

具体的な方法:
  • 定期的に経営陣とのタウンホールミーティングを開催し、
    従業員が直接意見を述べたり質問できる場を提供する。
  • 経営陣自らが透明なコミュニケーションを行い、
    企業のビジョンや進捗状況を共有する。

2. 1on1やフィードバックの制度化

従業員とマネージャーが
定期的に1on1ミーティングを行い、
パフォーマンスやキャリア目標について話し合うことが重要です。

これにより、
従業員は個別にサポートを受けることができ、
自己成長や課題解決に向けた対話が促進されます。

具体的な方法:
  • 1on1を全社員に対して定期的に実施する仕組みを作り、
    マネージャーが積極的にフィードバックを提供できるようにトレーニングを行う。
  • 「上からの評価」ではなく、
    双方向のフィードバックを重視する。

3. オープンなコミュニケーションツールの導入

コミュニケーションを円滑に行うために、
対話を促進するためのデジタルツールやプラットフォームを
活用することも効果的です。

社内SNSやチャットツールを導入することで、
階層を超えた対話を可能にし、
迅速な情報共有を促進します。

具体的な方法:
  • SlackやMicrosoft Teamsなどのチャットツールを使って、
    部門を超えた情報共有やアイデアの交換を活発にする。
  • 透明性を持たせたオープンなプロジェクト管理ツールを活用し、
    進捗状況や課題を全員で共有する。

4. 心理的安全性の確保

従業員が自分の意見を自由に発言できる環境を整えることが、
対話文化の根幹です。批判を恐れず、
積極的に意見を出せる文化を築くことが、
長期的に組織のイノベーションや成長に繋がります。

具体的な方法:
  • 意見を述べることが歓迎される文化を育むため、
    フィードバックを受け入れるトレーニングを実施する。
  • ミスや失敗を許容する文化を構築し、
    それを学びの機会とする。

5. クロスファンクショナルなチームを形成

異なる部門のメンバーが一緒に働く
クロスファンクショナルなチームを形成することで、
対話が部門を超えて活発になります。

これにより、
異なる視点やアイデアが交わされ、
全体的な問題解決能力が向上します。

具体的な方法:
  • プロジェクトベースでクロスファンクショナルなチームを組み、
    部門を超えた協力関係を築く。
  • 定期的な社内イベントやワークショップを通じて、
    他部門との交流を促進する。

6. 従業員の意見を反映した意思決定

従業員が対話の結果として得た意見や
アイデアが実際に企業の意思決定に反映されることが、
対話文化をさらに強固にします。

意見が実際に採用されることで、
従業員は自分たちの声が重要であると感じ、
さらに積極的に対話に参加します。

具体的な方法:
  • 従業員からのフィードバックをもとにした
    改善策を定期的に公開し、
    変化を促進する。
  • 意見や提案が実行に移された例をシェアし、
    積極的なコミュニケーションを奨励する。

育むには行動あるのみ

対話文化を育むためには、
経営陣のリーダーシップ
1on1やフィードバックの制度化
オープンなコミュニケーションツールの活用
心理的安全性の確保など、
組織全体での取り組みが必要です。

これにより、
従業員が安心して意見を共有でき、
企業全体のパフォーマンスやイノベーションが向上します。

参考資料

McKinsey & Company.“What employees say matters most to motivate performance”.McKinsey & Company.2024/8/21.
https://www.mckinsey.com/capabilities/people-and-organizational-performance/our-insights/what-employees-say-matters-most-to-motivate-performance,(2024/9/9)