「スマートフォン利用行動と性格特性の関連 」という研究があります。
ビッグファイブとスマホの利用について研究したものです。
背景には、スマートフォンの普及率が非常に高い(日本で96.3%)。
スマートフォン利用が個人の生活にどのように影響するかが注目されているが、
性格特性との関連性については十分な研究が行われていない。
Big Five性格特性(外向性、協調性、勤勉性、神経症傾向、開放性)を指標に用い、
スマートフォンの利用実態との関連を調査。
※この調査では誠実性が勤勉性とされています。
年代別のSNS利用についても調査されています。
これはマーケティングに応用できる内容かと思います。
性格特性の年代別傾向
- 外向性、協調性、勤勉性:
- 60~79歳の年齢層では他の年代に比べて外向性、協調性、勤勉性が高い傾向。
- 神経症傾向:
- 60~79歳で最も低い値。他の年代と比較してストレスや不安の傾向が少ない可能性が示唆される。
- 性別による違い:
- 女性は各年代で外向性、協調性、神経症傾向が男性よりも高い傾向。
- 開放性は男性のほうが高い傾向がみられる。
他の年代の性格特性についてみていきます。
1. 外向性
- 15~24歳:
- 外向性は低めの傾向。
- 若年層では外向的な活動(対面での交流など)が盛んな一方、
外向性が低い場合にはスマートフォンの利用時間が長い傾向も関連している可能性があります。
- 25~39歳、40~59歳:
- 中間的な値であり、特に40~59歳では有意な差は見られず、安定的な傾向を示しています。
- 外向性の点で60~79歳よりは低いものの、若年層ほど低くないバランスの取れた結果。
2. 協調性
- 15~24歳:
- 他の年代と比較すると協調性がやや低い傾向。
- 若年層は社会的スキルやコミュニケーション能力がまだ発展途上であり、
他者との協力関係よりも個人の自由が重視される場合があると考えられます。
- 25~39歳、40~59歳:
- 年齢とともに協調性が向上し、60~79歳に近づく傾向。
- 社会的な役割が増える中で、協調性が育まれることが背景にあると推察されます。
3. 勤勉性(誠実性)
- 15~24歳:
- 勤勉性は低い傾向。
- 若年層では目先の活動や楽しみに集中しやすく、
計画性や責任感が発展段階であることが影響していると考えられます。
- 25~39歳、40~59歳:
- 勤勉性が徐々に向上し、特に40~59歳では成熟した責任感が見られる。
- この年代では家庭や職場での役割に対する責任感が勤勉性を高める要因となっている可能性があります。
4. 神経症傾向
- 15~24歳:
- 神経症傾向が高い傾向。
- 若年層は不安やストレスへの耐性が低く、神経症傾向が高まりやすいことが他の研究からも示唆されています。
- 25~39歳、40~59歳:
- 年齢とともに徐々に低下。
- 40~59歳では、ストレス対処スキルの向上や安定した社会的・経済的地位が影響していると考えられます。
5. 開放性
- 15~24歳:
- 開放性は比較的高い傾向。
- 新しい経験に興味を持つことが多く、学習や成長への欲求が強い年代と一致します。
- 25~39歳、40~59歳:
- 25~39歳では高めを維持しつつも、40~59歳では若干低下。
- 年齢とともに新しい経験への関心が限定的になる場合があるが、興味の方向性が深まる可能性も。
性別による違いの補足
- 女性:
- 各年代で外向性、協調性、神経症傾向が男性より高い。
- 他者とのつながりや感情の共有を重視する傾向が反映されています。
- 男性:
- 開放性が女性より高い傾向が一貫して見られる。
- 特に40~59歳でその傾向が顕著であり、
新しい経験や知識の探求を重視していることが示唆されます。
年代別特性 まとめ
- 若年層(15~24歳)は外向性、協調性、勤勉性が低く、
神経症傾向が高い傾向が強い。 - 中年層(25~39歳、40~59歳)はバランスが取れた性格特性を示し、
協調性や勤勉性が安定的に向上。 - 高齢層(60~79歳)は外向性、協調性、勤勉性が最も高く、
神経症傾向が最も低い、最も安定した性格特性を示す。
上記を踏まえて研究結果を見ていきます。
スマートフォン利用時間と年代別の性格特性
- 外向性:
- 15~24歳では利用時間が長い群で外向性が低い傾向が有意に見られる。
- 他の年代でも長時間利用者で外向性が低い傾向が認められるが、統計的な有意差は限定的。
- 協調性:
- 男性40~59歳、女性15~24歳、60~79歳で、利用時間が長いほど協調性が低い傾向。
- 勤勉性:
- 全年代で、特に長時間利用者の勤勉性が低い傾向が顕著。
- 神経症傾向と開放性:
- 全年代で有意差は見られないが、
長時間利用群で神経症傾向が高くなる傾向がわずかに確認される。
- 全年代で有意差は見られないが、
利用時間とビッグファイブとの関連
- 長時間利用者の外向性と勤勉性が低い:
- 外向性が低い人は、他者との交流や社会活動に対する積極性が低いため、
スマートフォンを用いて自己完結的な活動に時間を費やす傾向が考えられます。 - 勤勉性の低さは、
長期的な目標達成よりも即時的な満足感を追求しやすい性格傾向を反映している可能性があります。 - この結果から、
長時間利用する人は「即時的な満足」を求め、
他者とのリアルタイムの対話に抵抗を感じやすい傾向があると推察されます。
- 外向性が低い人は、他者との交流や社会活動に対する積極性が低いため、
スマートフォンの利用時間と性格特性の傾向を見てみると、
性格特性により、SNSの使い方にも傾向があるのではということです。
次回は性格特性によるSNSの利用方法やSNSマーケティングについても触れていきます。
最後までご覧いただきありがとうございます。
参考資料
小島誠也, 近藤勢津子, 吉良文夫, 飽戸弘(2023). 『スマートフォン利用行動と性格特性の関連』, 2024年12月4日アクセス. https://www.moba-ken.jp/project/mobile/20230410.html
ビッグファイブとスマホ その2へつづく