営業における外向性の理想像・アンビバートの優位性2

前回は外向性が営業の成果を上げる特性であるとされていたのですが、
実際に成果を上げるのは外交性と内向性のあいだにある、
アンビバート特性を持つ人財が成果を上げているという内容でした。

ここでは採用、営業で成果を出す人財を採用するにはについて考えていきます。

営業成果を上げるための人財採用と育成

1. 採用基準の見直し

現状の課題:

  • 従来は外向性が高い人を優先的に採用してきたが、
    外向性が高すぎることで顧客ニーズの把握が不足することがある。
  • アンビバートのような中間的な特性を持つ人材が見逃されている可能性がある。

具体的な改善提案:

  1. 性格特性評価を導入:
    • 採用プロセスにBig Five分析や性格特性テストを取り入れる。
    • 候補者の外向性スコアが極端に高くなく、
      協調性や感情安定性が一定基準を満たしているかを確認する。
  2. シミュレーション型の面接を実施:
    • 候補者に、顧客対応シナリオを提示し、
      どのように話を聞き、適切に対応するかを評価。
    • 質問例:
      • 「顧客の要望が曖昧な場合、どのように具体化しますか?」
      • 「顧客の否定的なフィードバックをどのように受け止めますか?」
  3. アンビバートに特化した評価軸を追加:
    • 話す力(外向性)と聞く力(協調性)のバランスを評価。
    • 例: 傾聴力に焦点を当てた面接評価基準を作成。

2. 研修プログラムの設計

現状の課題:

  • 外向性の高い営業職員は話す能力が突出しているが、
    顧客の話を聞くスキルが不足している場合がある。

具体的な改善提案:

  1. 傾聴力強化トレーニング:
    • ロールプレイ: 顧客との模擬対話を通じて、顧客のニーズを引き出す練習を行う。
    • フィードバックセッション: 対話中の傾聴スキルを指導者が評価し、改善点を具体的に提示。
  2. アンビバート向け研修:
    • 外向性と内向性のバランスを活かす方法を学ぶワークショップ。
    • 例: 「顧客の話を聞きつつ、適切なタイミングで提案を行うスキル」の練習。
  3. 継続的な評価とフィードバック:
    • 研修後も、定期的な1on1面談を通じてスキル向上を支援。
    • TOiTOiのようなツールで傾聴スキルや営業成績の変化を追跡。

3. 文化的な偏りの再考

現状の課題:

  • 欧米文化では外向性が過度に重視される一方、
    多くの人々はアンビバートであるため、
    そのポテンシャルが見過ごされている。

具体的な改善提案:

  1. 文化の多様性を考慮した採用基準の策定:
    • 外向性だけではなく、協調性や感情安定性、開放性を重視した多角的な評価基準を設定。
  2. 国際市場への対応力強化:
    • アンビバート的特性を持つ人材は、
      多文化的な顧客に対する柔軟性が高いため、
      国際市場での営業活動に強みを発揮できる。
    • 外向性の高い営業職員には、
      異文化間コミュニケーションのトレーニングを実施。
  3. 偏りを減らすための社内教育:
    • 外向性が唯一の成功要因ではないことを社員に教育し、
      アンビバートの価値を理解させる。

アンビバートの優位性を活かすには

1. アンビバートの優位性が活用される具体的な場面

(1) 営業と顧客対応

  • 場面:
    • 顧客の要望を引き出しながら適切な提案をする必要がある場面。
    • 営業の「押し売り」が顧客の反発を招くリスクがある状況。
  • 理由:
    • アンビバートは「話す」と「聞く」のバランスが取れており、顧客のニーズを理解した上で的確な提案が可能です。
    • 過度に自己主張せず、顧客の視点に立った対応ができるため、長期的な信頼関係を築きやすい。
  • 事例:
    • B2B営業: ITサービスを販売する営業担当者が、顧客の課題を深掘りし、その課題を解決するための具体的な提案を行う。
    • 成果: クロージング率が従来の営業スタイルより20%以上向上。

(2) カスタマーサポート

  • 場面:
    • クレーム対応や問題解決が必要なカスタマーサポートの場面。
    • 顧客が不満を抱えている状況で、冷静に対応する必要がある。
  • 理由:
    • 過度に外向的な対応は「押し付けがましい」と見なされる可能性があり、
      内向的すぎると対応に消極的と思われることがある。
    • アンビバートは、顧客の話を聞きながら解決策を提示する柔軟な対応が可能。
  • 事例:
    • Eコマースのカスタマーサポート: 返品問題で不満を抱える顧客に対応し、
      誠実なコミュニケーションを行うことでリピート率を向上。

(3) チームマネジメントと1on1ミーティング

  • 場面:
    • 部下やチームメンバーのモチベーションを引き出し、課題を共有する場面。
    • 多様な意見を聞き取りながら、必要に応じてリーダーとして指示を出す必要がある状況。
  • 理由:
    • アンビバートは、過度な自己主張で部下の意見を押しつぶさず、
      内向的な態度でリーダーシップを欠くこともないため、
      心理的安全性を保ちながらチームをまとめやすい。
  • 事例:
    • プロジェクトマネジメント: チームメンバーからの意見を収集し、
      それを踏まえた上で適切な指示を出すことで、プロジェクトの進行がスムーズに。

2. 成果が出る場面

(1) 顧客との信頼関係構築が重要な場面

  • 長期的な顧客関係がビジネスの成功に不可欠な業態(例: 金融、不動産、ITソリューション)。
  • アンビバートの「適度な傾聴と提案能力」が信頼を築く鍵になる。

(2) 課題解決型の営業やコンサルティング

  • 顧客の課題を理解し、カスタマイズされた提案を求められる状況。
  • 外向性が高すぎると提案が一方的になるリスクがあるが、アンビバートは柔軟な提案が可能。

(3) 顧客満足度が事業の成果に直結する場面

  • サービス業やリテール業態では、顧客対応が顧客ロイヤルティに影響を与える。
  • アンビバートの優れた顧客対応力が成果に繋がりやすい。

3. アンビバートが最適な場面

(1) B2B営業

  • 理由: 顧客の業務課題を深く理解し、解決策を提案する必要があるため、傾聴力と説得力のバランスが重要。
  • 業態例: ITソリューション、製造業の機器販売。

(2) サービス業の顧客対応

  • 理由: 過度に押し付けがましくなく、丁寧に顧客の要望を聞き取る必要がある。
  • 業態例: ホテル、飲食店、カスタマーサポートセンター。

(3) 人材マネジメントと教育

  • 理由: チームメンバーの意見を適切に汲み取りながら指示を出すスキルが求められる。
  • 業態例: 教育機関、企業の人事部門。

4. ビッグファイブ分析の利用・導入への示唆

ビッグファイブ分析を用いることで、アンビバート特性を持つ人材の発見や育成が可能になります。

  1. 採用段階での活用:
    • 外向性スコアが中間的で、協調性や感情安定性が高い候補者を特定。
    • 営業職やカスタマーサポート職に適した人材を効率的に見つける。
  2. 研修プログラムでの活用:
    • 現在の社員の性格特性を分析し、特性に応じたスキル向上プランを提供。
    • 例: 傾聴力を高めるトレーニング。
  3. 継続的な評価と改善:
    • アンビバート特性の社員が成果を上げる場面を分析し、業務プロセスを改善。

まとめ

アンビバートは、顧客対応、営業、チームマネジメントなど幅広い場面で優位性を発揮します。

ビッグファイブ分析を活用すれば、アンビバート特性を持つ人材を採用し、
最適な場面で活躍させることが可能となるのです。

最後までご覧いただきありがとうございます。

参考資料

アダム・M・グラント (2013). 『Rethinking the Extraverted Sales Ideal: The Ambivert Advantage』, 2024年12月30日アクセス. https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/0001839213480813

営業における外向性の理想像・アンビバートの優位性3へつづく