前回は「生成性(Generativity)」の時における、ビッグファイブとの関連性について見ていきました。
ここでは女性の性格の変化における「停滞(Stagnation)」、
この時期とビッグファイブの関連性からお話を進めていきます。
「停滞(Stagnation)」とビッグファイブの関連性
停滞(Stagnation)は、成長や社会的貢献の欠如、
自己中心的な行動、他者への関心の低下を特徴とします。
この特性がビジネスに及ぼす影響は、個人や組織の生産性、
チームのパフォーマンス、職場環境の健全性に関わる重要な課題を示唆します。
以下では、停滞とビッグファイブの関連性を整理し、
ビジネスへの影響を心理学的知見を基に詳述します。
1. 停滞のビジネスへの影響
停滞は、個人が自己中心的になり、
他者や組織への貢献を怠る状態を反映しており、
以下のようなネガティブな影響をビジネスにもたらす可能性があります。
(1) 生産性の低下
- 停滞の強い人は、新しい目標を設定したり、
長期的な計画を実行する意欲が乏しいため、業務の進行が停滞します。
(2) チームの士気低下
- 自己中心的で協調性が低い行動が、チームメンバー間の信頼を損なう原因となります。
- 停滞した行動は、周囲のメンバーにもネガティブな影響を与え、
チーム全体のパフォーマンスが低下します。
(3) 組織の停滞
- 停滞が組織全体に広がると、イノベーションが阻害され、
業績の低迷や競争力の喪失につながります。
2. ビッグファイブと停滞の関連性
停滞は、ビッグファイブの特性と以下のように関連します。
(1) 協調性(Agreeableness:逆指標)
- 関連性:
- 協調性が低い場合、他者の意見を尊重せず、チームワークを軽視する傾向が強まります。
- ビジネスへの影響:
- チーム内での対立や不和を引き起こし、組織の調和が損なわれます。
- 顧客や同僚との関係性が悪化し、仕事の効率が低下します。
(2) 外向性(Extraversion:逆指標)
- 関連性:
- 外向性が低い場合、社交性や積極性に欠け、停滞感が強まる可能性があります。
- ビジネスへの影響:
- 意思疎通が不足し、他部署や外部関係者との連携が難しくなる。
- イニシアチブを取る能力が低下し、プロジェクトの進行が遅れる。
(3) 誠実性(Conscientiousness:逆指標)
- 関連性:
- 誠実性が低い場合、自己管理能力が低く、目標達成への意欲が乏しい停滞が見られます。
- ビジネスへの影響:
- 納期を守らない、またはタスクを最後までやり遂げないなどの行動が、組織のパフォーマンスに悪影響を及ぼします。
- 計画性が欠如し、プロジェクトが中断されるリスクが高まります。
(4) 開放性(Openness to Experience:逆指標)
- 関連性:
- 開放性が低い場合、新しいアイデアや変化を拒む傾向が強くなり、停滞につながります。
- ビジネスへの影響:
- イノベーションの阻害要因となり、既存のプロセスや方法に固執します。
- 市場の変化に対応できず、競争力が低下します。
(5) 情緒安定性(Neuroticism:高い場合)
- 関連性:
- 情緒安定性が低い(神経症傾向が高い)場合、不安やストレスに過剰に反応し、停滞感が助長されます。
- ビジネスへの影響:
- ストレス耐性が低く、困難な状況での判断力やパフォーマンスが著しく低下します。
- 他者との摩擦や自己否定感が、職場環境を悪化させます。
3. 停滞を軽減し、組織にポジティブな影響を与える方法
停滞の影響を最小限に抑え、組織や個人の生産性を向上させるための心理学的施策を以下に挙げます。
(1) 自己効力感の向上
- 方法:
- 停滞感を持つ個人に、小さな成功体験を積ませることで、自己効力感(self-efficacy)を高めます。
- 明確な目標設定とフィードバックを提供することで、達成感を感じさせます。
- 期待される効果:
- 自信を持つことで、停滞から抜け出し、積極的に新しい課題に取り組む意欲が生まれます。
(2) チームワークの強化
- 方法:
- チーム内で協調性を高めるためのトレーニングやワークショップを実施します。
- 停滞感を持つ社員をチームのサポート役に配置し、他者との連携を強化します。
- 期待される効果:
- チームの一員としての役割を自覚し、自己中心的な行動が減少します。
(3) キャリア目標の再設定
- 方法:
- 定期的なキャリアカウンセリングを通じて、社員の停滞感を確認し、新しい目標を設定します。
- 成長の機会やスキルアップのプランを提供します。
- 期待される効果:
- 長期的な視野を持ち、個人の成長意欲が再燃します。
(4) 組織文化の変革
- 方法:
- 停滞を助長する要因(官僚的なプロセス、過度な保守性)を取り除きます。
- イノベーションや挑戦を奨励する文化を醸成します。
- 期待される効果:
- 組織全体で停滞感が減少し、創造性や柔軟性が向上します。
4. まとめ
停滞は、ビジネスにおいて個人および組織の成長を妨げる要因となります。
停滞の影響を最小限にするためには、ビッグファイブの特性を理解し、
協調性、外向性、誠実性、開放性を高める施策を講じることが重要です。
また、情緒安定性の低い社員に対してはストレス管理の支援を行う必要があります。
停滞を克服する取り組みは、個人の成長だけでなく、
組織の健全性や競争力の向上にも直結します。
ビジネスの成長を妨げる停滞の影響を抑えるための施策についてお話を進めました。
最後までご覧いただきありがとうございます。
参考資料
Williams, R., & Krendl, A. (2024). 『年齢は可能性である:中年期から後年期における女性の人格変化の軌跡』. 2025年1月25日アクセス.https://www.researchgate.net/publication/332537752_Age_is_opportunity_Women’s_personality_trajectories_from_mid-_to_later-life
年齢は輝きの扉:中年期から始まる女性の心の変革ビジネスへの応用3へつづく