ゴールマンのリーダーシップスタイル

医学教育における異なる階層のリーダーがゴールマンのリーダーシップスタイルを
どのように活用しているかを分析した論文から、
リーダー育成についてのヒントになるお話です。

医学協会 ゴールマンのリーダーシップスタイル

  • 研究の目的
    医学教育におけるリーダー(初級、中級、上級)がゴールマンのリーダーシップスタイルをどのように使用しているかを調査し、
    その適用要因を分析。
  • 方法
    • 42人のリーダーを対象に調査を実施(初級28人、中級8人、上級6人)。
    • さらに8人の上級リーダーと詳細なインタビューを実施。
    • 6つのリーダーシップスタイル(ビジョナリー、コーチング、アフィリエイティブ、
      デモクラティック、ペースセッティング、コマンド)についてランキング評価。

主な発見

  • リーダーレベルごとの傾向
    • 初級リーダー(学生・研修医):デモクラティックスタイル(チームワークと協働を重視)
    • 中級リーダー(プログラム・カリキュラム責任者):コーチングスタイル(個々の成長を支援)
    • 上級リーダー(学部長・副学部長):単一のスタイルに依存せず、状況に応じて複数のスタイルを活用
  • 性別による違い
    • 女性リーダー:デモクラティックスタイルを好む
    • 男性リーダー:コーチングスタイルを好む
  • 上級リーダーの特徴
    • デモクラティックやビジョナリースタイルを多用するが、
      成果を迅速に出すためにペースセッティングやコマンドスタイルも必要に応じて使用。
    • 文脈(組織の状況、関わる人々)に応じてスタイルを変更。
    • 自分自身のリーダーシップスタイルの特性を認識しながら調整する能力が求められる。

結論と示唆

  • 医学教育のリーダーは、多様なリーダーシップスタイルを使い分ける必要がある。
  • 初級・中級リーダー向けのリーダーシップ開発プログラムでは、
    複数のスタイルを学ぶ機会を提供するべき。
  • 自分のリーダーシップスタイルの「本質」に忠実であることが、
    効果的なリーダーシップにつながる。

ゴールマンのリーダーシップスタイルはどこが違う

ゴールマン(Daniel Goleman)のリーダーシップスタイルは、
感情的知性(EI: Emotional Intelligence)に基づいており、
状況に応じてリーダーが適切なスタイルを使い分けることが重要であるとしています。
これは従来の固定的なリーダーシップ論
(例:カリスマ型、トランザクショナル型など)と異なり、
柔軟性を重視する点が特徴です。


ゴールマンの6つのリーダーシップスタイル

スタイル特徴効果的な場面主要な違い
ビジョナリー (Visionary)明確な方向性を示し、共感を呼びながらビジョンを伝える組織の大きな変革や新しい戦略が必要な時トランスフォーメーショナル・リーダーシップに類似
コーチング (Coaching)メンバーの成長を支援し、長期的な能力開発を行う人材育成が求められる場面サーバント・リーダーシップに近い
アフィリエイティブ (Affiliative)人間関係を重視し、調和を促進するチームの士気を高める必要がある時リレーショナル・リーダーシップの要素
デモクラティック (Democratic)メンバーの意見を尊重し、意思決定を共有するクリエイティブなアイデアが求められる場合参加型リーダーシップに近い
ペースセッティング (Pacesetting)高い基準を設定し、迅速な結果を求める即時成果が必要な場合カリスマ型・トランザクショナル型の要素
コマンド (Commanding)指示を明確に出し、短期的な成果を優先危機管理・緊急時のリーダーシップオートクラティック(独裁型)リーダーシップに類似

現在のリーダーシップとの比較


1. トランスフォーメーショナル・リーダーシップとの違い

  • 類似点: ビジョナリースタイルは、
    トランスフォーメーショナル・リーダーシップと似ており、
    ビジョンを共有し、チームを鼓舞する。
  • 違い: ゴールマンのモデルは、単一のスタイルに依存せず、
    状況に応じたリーダーシップの切り替えを推奨。

2. サーバント・リーダーシップとの違い

  • 類似点: コーチングスタイルは、サーバント・リーダーシップ(支援型リーダー)に近く、部下の成長を重視。
  • 違い: ゴールマンは、サーバント型に偏るのではなく、
    必要に応じて指示やペースセッティングも行う柔軟性を重視。

3. トランザクショナル・リーダーシップとの違い

  • 類似点: ペースセッティングスタイルは、
    短期的成果を求める点でトランザクショナル・リーダーシップ(報酬と規律で動かす)に似ている。
  • 違い: トランザクショナル・リーダーシップは主に管理とルールを重視するが、
    ゴールマンのモデルでは、長期的な成長(コーチング)やビジョンの共有(ビジョナリー)も含まれる。

リーダー研修での応用


1. 多様なスタイルの習得

  • ゴールマンのモデルは、リーダーシップ研修で「1つのスタイルに固執しない」ことを教える上で有用。
  • 特定の状況に応じたリーダーシップを選択する能力を高める。

2. エモーショナル・インテリジェンス(EI)の強化

  • 自己認識(Self-awareness): 自分のリーダーシップの強み・弱みを理解。
  • 自己管理(Self-management): ストレス下で適切なリーダーシップを選択。
  • 社会的認識(Social-awareness): チームの状態を把握し、最適なリーダーシップを発揮。
  • 関係管理(Relationship management): スタイルを切り替えながら、メンバーを導く。

3. 具体的なリーダーシップ開発の流れ

ステップ内容
①自己診断自分のリーダーシップスタイルを評価(360度評価など)
②EIトレーニング感情認識や共感能力を高めるワークショップ
③シチュエーション分析適切なリーダーシップスタイルを判断する訓練
④ロールプレイ各スタイルを実践し、フィードバックを受ける
⑤実践とフィードバック実際の職場で試し、改善を続ける

まとめ

  1. ゴールマンのリーダーシップは状況適応型 → どのスタイルも固定的ではなく、
    適宜切り替えが必要。
  2. エモーショナル・インテリジェンスが重要 → 自己認識と状況適応がカギ。
  3. 従来のリーダーシップモデルと違い、単一の方法論ではない → ビジョン型、サーバント型、
    トランザクショナル型の要素を組み合わせる。
  4. リーダー研修では「柔軟なスタイルの切り替え」を重視 → 参加者が各スタイルを意識的に使い分ける訓練が有効。

ゴールマンのリーダーシップスタイルは、現代の組織において非常に実践的で、
Z世代やミレニアル世代の価値観に適したリーダー育成にも役立つため、
研修設計の際には特に有効です。

いかがでしたでしでしょうか。
あなたの企業ではどのようなリーダーを育成していますか。

リーダーの育成ができれば、プレイングマネージャーを減らすことにつながります。
マネージャーはマネージャーとしての仕事をすることが重要です。

役職によってもリーダーシップのあり方は変わってきます。
ゴールマンのリーダーシップスタイルは、パーソナライズなスタイルだと感じました。
あなたのリーダーシップスタイルは。

最後までご覧いただきありがとうございます。

参考資料

Saxena, A., Desanghere, L., Stobart, K., & Walker, K. (2017). 『Goleman’s Leadership Styles at Different Hierarchical Levels in Medical Education』, 2025年2月1日アクセス. https://www.researchgate.net/publication/319922979_Goleman’s_Leadership_styles_at_different_hierarchical_levels_in_medical_education

ゴールマンのリーダーシップスタイル2へつづく