笑いヨガとビッグファイブ2

前回は笑いヨガのやり方についてお話をさせていただきました。

ここではヨガ実践前後における内面の状態について詳しくお話を進めていきます。

実践後と実践前

上記の図は「笑いヨガの実践前後における状態尺度(PANAS, STAI)の平均得点」を示したもので、
実践者と非実践者の変化を比較しています。エラーバー(棒線)は標準誤差を示しています。

図のポイント

  1. 左のグラフ(ポジティブ気分:PANAS-PA)
    • 実践後にポジティブ気分(PA)が有意に増加
    • 実践者・非実践者ともに向上しているが、特に非実践者の上昇幅が大きい
    • 笑いヨガは短時間でポジティブな気持ちを高める効果があることを示唆
  2. 中央のグラフ(ネガティブ気分:PANAS-NA)
    • 実践後にネガティブ気分(NA)が有意に減少
    • 非実践者のほうが、実践前のネガティブ気分が高かった
    • しかし、実践後には実践者と同程度まで低下
    • 笑いヨガは、特にネガティブ気分を持っている人にとって効果的である可能性を示唆
  3. 右のグラフ(状態不安:STAI A-state)
    • 実践後に状態不安が有意に減少
    • 非実践者の状態不安は実践前に高かったが、実践後には実践者と同程度まで低下
    • 笑いヨガがリラックス効果をもたらし、不安軽減に役立つことを示唆

考察

  • 笑いヨガは、ポジティブな感情を増やし、
    ネガティブな感情や不安を軽減するという心理的効果を持つ。
  • 非実践者のほうが実践前のネガティブ気分や不安が高いが、
    実践後に大きく改善しているため、初心者でも即効性のある効果を感じやすい可能性がある。
  • 継続的な実践により、もともとポジティブで不安の少ない状態を維持できるかもしれない。

この結果を踏まえると、
笑いヨガはストレス管理やメンタルヘルスの向上に有効な手法であると考えられます。

笑うということが、ストレスを軽減させ、
メンタルヘルスにも大きな効果があるということが証明されています。

ここでビッグファイブとの関連性をみていきます。

ビッグファイブ(Big Five)と笑いヨガの関連

本研究では、笑いヨガの実践とビッグファイブ(Big Five)性格特性の関連についても分析が行われています。
ビッグファイブとは、以下の5つの性格因子を指します。

  1. 神経症傾向(Neuroticism):ストレスや不安を感じやすいか
  2. 外向性(Extraversion):社交的でエネルギッシュか
  3. 開放性(Openness to Experience):新しい経験に積極的か
  4. 調和性(Agreeableness):協調性があり、他者と良好な関係を築くか
  5. 誠実性(Conscientiousness):計画的で責任感が強いか

本研究の主な結果

  1. 実践者と非実践者の比較
    • 実践者は「調和性」が非実践者より有意に高い
    • 「開放性」も高い傾向にあるが、有意差はなし
    • 神経症傾向は実践者のほうが低いが、有意差はなし
    • 外向性と誠実性は実践者のほうが高いが、有意差はなし
    • 継続的な笑いヨガの実践者は、協調性が高く、他者と円滑な関係を築く傾向がある
  2. 性格特性と心理状態の関連
    • 外向性が高い人ほど、実践前のネガティブ気分(NA)が低かった
    • 調和性が高い人ほど、実践前のネガティブ気分が低い傾向
    • 外向性が高い人は、実践後の状態不安(STAI A-State)も低い傾向
    • 社交的で協調的な人は、もともとネガティブ気分が少なく、笑いヨガによる不安の軽減効果がより高い可能性がある
  3. 笑いヨガの実践頻度・時間との関連
    • 実践時間が長いほど、神経症傾向が高い
    • 実践時間が長いほど、開放性が低い
    • 実践時間が長いほど、調和性も低い傾向
    • 仮説とは逆に、長時間の笑いヨガの実践者ほど、神経症傾向が高く、
      開放性・調和性が低い傾向が示唆された

考察

① 笑いヨガの実践者は協調性が高い

  • 笑いヨガは集団で行うことが多いため、協調性が高い人が継続的に実践しやすい
  • 他者と一緒に笑うことが求められるため、
    人と関わることが好きな人(調和性・外向性が高い人)に向いている
  • 外向的な人は笑いヨガを始める前からポジティブであり、
    心理状態の改善幅は少ない

② 長時間の実践が神経症傾向の増加と関連する可能性

  • 笑いヨガを長時間行う人は、
    不安やストレスを解消するために頻繁に実践している可能性がある
  • 長時間の実践が、笑いヨガへの「依存」のような形になっている可能性も考えられる
  • 神経症傾向が高い人ほど、心理的安定を求めて笑いヨガを多く実践する傾向があるかもしれない

③ 開放性の低下との関連

  • 一般的には、開放性が高い人は新しい経験を好むが、
    笑いヨガを長期間行うと「決まった習慣」となるため、
    新しい刺激を求めにくくなる可能性
  • 長期の実践が、ある種のルーチンワーク化し、
    開放的な態度を抑える可能性も示唆

まとめ

  • 笑いヨガの継続的実践者は協調性(調和性)が高い
  • 外向性が高い人は、もともとポジティブでネガティブ気分が少ない
  • 長時間の実践は、神経症傾向の高さと関連する可能性がある
  • 開放性の低下が見られる可能性があるが、今後の研究が必要

この結果から、「笑いヨガは社交的で協調的な人に向いており、
ポジティブな心理効果が得られやすいが、長時間の実践が必ずしも良い結果につながるとは限らない」という示唆が得られます。

上記の結果から推察すると、
笑いは薬と同じような効果があるということかなとも感じました。

別の見方をすると、笑いばかりの環境だけでなく、
人には笑いとは別の緊張する環境も必要であることが考えられるのではないか。

人は飽きる生き物なので、状態にはバランスが大切であると、個人的には感じました。
あなたはどのように感じましたか。

私は開放性が高いので、同じ環境にいると飽きやすい傾向があります。
自分がストレスを感じており、笑うことが必要だと感じた時にしか行かないなと思いました。
新たな別の刺激を求めていく、やばい方向に行かねば良いのですが。

何事も過度ではなく、適度がいいということがこの結果から導かれています。
とても面白い研究調査ではないでしょうか。

最後までご覧いただきありがとうございます。

参考資料

高田 明(2023). 『対面での笑いヨガの実践による心理状態の変化および性格特性との関連』, 2025年2月15日アクセス.https://www.jstage.jst.go.jp/article/warai/30/0/30_19/_article/-char/ja

笑いヨガとビッグファイブ3へつづく