笑いヨガとビッグファイブ5

前回は笑いヨガとビッグファイブとの関連における心理状態についてお話を進めていきます。

笑いヨガの実践に関する指標と、
心理状態尺度およびBig Five尺度の得点との相関関係についてみて行きます。

表3の詳細解説

この表は、笑いヨガの実践に関する指標(実践期間・実践頻度・実践時間)と、
心理状態尺度(PANAS-PA・PANAS-NA・STAI)およびBig Five尺度の得点との相関係数(r)を示しています。
特に、統計的に有意な相関(p < .05)または有意傾向(p < .10)がある項目に注目して解説します。


1. 表の読み方

  • 相関係数(r)
    • 正の値(+):一方が増えると、もう一方も増える関係(正の相関)
    • 負の値(−):一方が増えると、もう一方は減る関係(負の相関)
    • 統計的有意(*):p < .05(有意な相関)
    • 統計的有意傾向(+):p < .10(弱いが関連がありそうな傾向)

2. 笑いヨガの実践と心理状態(PANAS・STAI)

尺度実践期間実践頻度実践時間解釈
PANAS: PA(ポジティブ気分)-0.129(前)
0.211(後)
0.578*(変化)
0.315(前)
0.420+(後)
0.070(変化)
-0.383(前)
0.174(後)
0.350(変化)
笑いヨガの実践頻度が高いほど、ポジティブ気分が向上する傾向(p < .10)
PANAS: NA(ネガティブ気分)0.022(前)
-0.105(後)
0.080(変化)
0.027(前)
-0.393(後)
-0.070(変化)
-0.239(前)
-0.757*(後)
0.122(変化)
実践時間が長いほど、ネガティブ気分が大幅に低下(p < .05)
STAI: A-State(状態不安)-0.165(前)
0.214(後)
0.257(変化)
-0.397(前)
-0.057(後)
0.397(変化)
-0.666+(前)
0.381(後)
0.523(変化)
笑いヨガの実践時間が長いほど、不安が低下する傾向(p < .10)

◾️ 解釈

  • 笑いヨガの実践頻度が高いほど、ポジティブ気分(PANAS-PA)が向上する傾向がある(p < .10)
    • 「笑いヨガの継続的な実践が、前向きな気持ちを強化する可能性」を示唆。
  • 笑いヨガの実践時間が長いほど、ネガティブ気分(PANAS-NA)が低下する(p < .05)
    • 長時間の実践が、ストレス軽減やメンタルヘルスの向上に効果的であることが統計的に示されている。
  • 笑いヨガの実践時間が長いほど、不安(STAI: A-State)が低下する傾向(p < .10)
    • 笑いヨガがリラックス効果をもたらし、心理的安定に貢献している可能性。

3. 笑いヨガの実践とBig Five(性格特性)の関係

Big Five尺度実践期間実践頻度実践時間解釈
神経症傾向(Neuroticism)-0.1790.2210.611*笑いヨガの実践時間が長いほど、神経症傾向が高い(p < .05)
外向性(Extraversion)-0.067-0.388-0.240笑いヨガの実践頻度が高い人ほど、外向性が低め
開放性(Openness)0.1420.101-0.668*笑いヨガの実践時間が長いほど、開放性が低い(p < .05)
調和性(Agreeableness)-0.062-0.308-0.602+笑いヨガの実践時間が長いほど、調和性が低い傾向(p < .10)
誠実性(Conscientiousness)0.2270.244-0.499笑いヨガの実践時間が長いほど、誠実性はやや低め

◾️ 解釈

  • 笑いヨガの実践時間が長いほど、神経症傾向が高い(p < .05)
    • これは「ストレスを感じやすい人ほど、笑いヨガを積極的に実践している」可能性を示唆。
    • ストレス対策として笑いヨガを行う人が多いと考えられる。
  • 笑いヨガの実践時間が長いほど、開放性が低い(p < .05)
    • 「新しい体験を求める人」よりも、「安定したルーティンを好む人」が笑いヨガを続ける傾向にある可能性。
  • 笑いヨガの実践時間が長いほど、調和性が低い傾向(p < .10)
    • 「周囲との調和よりも、自分のメンタルを整えるために実践している人」が多い可能性。
  • 笑いヨガの実践時間が長いほど、誠実性(Conscientiousness)はやや低め
    • ルーティン化はしやすいが、「計画的な生活」との相性はそこまで高くない可能性。

4. まとめ

結論解釈
笑いヨガの実践頻度が高いほど、ポジティブ気分が向上する(p < .10)継続することでポジティブな感情が増す
笑いヨガの実践時間が長いほど、ネガティブ気分が低下する(p < .05)長時間実践するとストレス軽減効果が高い
笑いヨガの実践時間が長いほど、不安が低下する傾向(p < .10)リラックス効果により、不安が軽減される可能性
笑いヨガの実践時間が長いほど、神経症傾向が高い(p < .05)ストレス対策として笑いヨガを活用する人が多い可能性
笑いヨガの実践時間が長いほど、開放性が低い(p < .05)新しい体験を求める人よりも、安定を求める人が実践しやすい
笑いヨガの実践時間が長いほど、調和性が低い傾向(p < .10)周囲との調和よりも、自分のメンタルを優先して実践している可能性

結論:「笑いヨガは、ストレスを感じやすい人ほど実践しやすく、
続けることでポジティブ気分が向上し、ネガティブな感情が減る可能性が高い」

ストレスの高い環境における「笑いヨガ」の効果

表3の結果を分析すると、ストレスが高い環境にある人ほど、
笑いヨガの恩恵を受けやすい可能性が示唆されています。

特に、ネガティブ気分の低下や、不安の軽減効果が統計的に有意であることから、
笑いヨガは「高ストレス環境」に適したメンタルケアの手法として有望です。


1. ストレスの高い職場で笑いヨガが有効な理由

① ネガティブ感情(PANAS-NA)の低下

実践時間が長いほど、ネガティブ気分が大幅に低下(p < .05)
ストレスの多い職場では、笑いヨガを続けることで感情のコントロールがしやすくなる。
クレーム対応・緊張感のある職場では、ストレス発散に有効。

活用例
コールセンターやカスタマーサポート職 → クレーム対応後に短時間の笑いヨガでリフレッシュ
医療・介護職 → 高ストレス業務後のメンタル回復の一環として導入
金融・証券業(トレード業務) → 精神的負担の高い職場で、ストレスマネジメントツールとして活用


② 状態不安(STAI-A)の軽減

実践時間が長いほど、不安が低下する傾向(p < .10)

精神的な緊張が強い職場において、笑いヨガは不安の軽減に役立つ可能性が高い。
プレッシャーの大きい職種(営業・接客・管理職)に特に有効。
活用例
プレゼン前の営業チーム → 話す前の緊張を和らげるために笑いヨガを実施
接客業(ホテル・飲食業) → スタッフの精神的負担を軽減し、顧客対応の質向上
リーダー・管理職向け → 職場のストレスマネジメントとして、チーム全体に導入


③ 笑いヨガの習慣化によるストレス耐性の向上

神経症傾向が高い人ほど、笑いヨガの実践時間が長い(p < .05)
ストレスを感じやすい人ほど、笑いヨガを長時間実践する傾向にある。
これは、笑いヨガが「ストレスの解消手段」として活用されやすいことを示している。

活用例
朝礼や会議前の短時間セッション → ストレスの軽減・職場の雰囲気を和らげる
シフトの合間に「ミニ笑いヨガ」 → ストレスのたまりやすい業務(コールセンター・医療・介護)で活用
テレワークのストレス対策 → 在宅勤務者向けにオンラインで実施


④ コミュニケーションの円滑化

調和性(Agreeableness)が低い人ほど、笑いヨガの実践時間が長い傾向(p < .10)
職場の人間関係にストレスを感じている人が、笑いヨガを長時間実践する可能性。
笑いを共有することで、チームの一体感が高まり、職場の雰囲気が改善される。
活用例
チームビルディング研修に笑いヨガを導入 → 部署間の連携強化、対人ストレスの軽減
「笑いのワークショップ」実施 → コミュニケーションの促進、チームの結束力向上
上下関係のストレス緩和 → 上司と部下の関係改善に向けたアイスブレイクとして導入


2. ストレスの高い職場での導入方法

ストレスレベルに応じて、導入の仕方を工夫することで、笑いヨガの効果を最大限に引き出せます。

◎低ストレス職場(比較的穏やかな職場環境)

  • 導入の目的ポジティブな気分の向上、クリエイティビティの強化
  • 方法朝のミーティングや昼休みに短時間(3〜5分)導入
  • 対象業種 → IT企業、クリエイティブ職、広報・企画部門

中ストレス職場(適度なプレッシャーがある)

  • 導入の目的業務ストレスの解消、チームワーク向上
  • 方法週1回の定期セッション(15〜20分)を実施
  • 対象業種 → 営業職、接客業、事務職

高ストレス職場(強いプレッシャーがある)

  • 導入の目的ストレス軽減、不安の解消、精神的負担の緩和
  • 方法業務の合間やシフトの切り替え時に「短時間の笑いヨガ(5〜10分)」を実施
  • 対象業種 → 医療・介護、コールセンター、金融・証券業

3. まとめ

ストレスの高い職場ほど、笑いヨガの効果が大きい可能性が高い
長時間実践することで、ネガティブ気分の低下や不安の軽減が顕著
神経症傾向が高い(ストレスを感じやすい)人ほど、笑いヨガを実践しやすい
ストレスレベルに応じて、導入の方法を工夫することで、効果を最大化できる

結論:「笑いヨガは、ストレスの多い職場環境において、
メンタルヘルス対策・チームワーク向上・業務のパフォーマンス改善に大きく貢献する可能性がある」
▶︎「ストレスの多い職場こそ、笑いの力で環境を改善!」
福利厚生や研修の一環として、職場に笑いヨガを導入することで、
社員のストレス軽減・働きやすさ向上につながります!

今はストレス社会、人と触れ合う機会が少なくなっています。
人と笑い合うその環境を共有するという機会も減っています。

そんな環境では人はストレスが高まりネガティブな感情に支配されがちです。
ネガティブな感情に支配されないような環境整備をして、
パフォーマンスを下げないような施策が必要です。

今回は施策の一つとして組織に笑いヨガを取り入れるとどうなるのかをご紹介しています。
私たちのマインドのケアはとても大切です。

あなたの組織には笑いが起こる職場ですか。

最後までご覧いただきありがとうございます。

参考資料

高田 明(2023). 『対面での笑いヨガの実践による心理状態の変化および性格特性との関連』, 2025年2月15日アクセス.https://www.jstage.jst.go.jp/article/warai/30/0/30_19/_article/-char/ja

笑いヨガとビッグファイブ6へつづく