
前回はビッグファイブとBMIの関連についてみていきました。
ここではビッグファイブとBMIの関連において、
欧米と日本の研究結果の相違についてみていきます。
日本のBMIと欧米のBMI
1. 欧米の研究と日本の研究結果の比較
勤勉性がBMIと一貫して負の関連を示したことは、欧米の研究結果と一致しています。
しかし、それ以外の特性については、日本と欧米で異なる傾向が見られます。
(1) 欧米の研究結果
欧米では、以下のパーソナリティ特性とBMIの関連が報告されています。
- 勤勉性(Conscientiousness): BMIと強い負の関連(Brummett et al., 2006; Jokela et al., 2013)。
- 神経症傾向(Neuroticism): 女性においてBMIと正の関連(Sutin & Terracciano, 2016)。
- 外向性(Extraversion): 男女ともにBMIと正の関連(Sutin et al., 2015)。
- 協調性(Agreeableness): BMIと明確な関連なし(ただし、食習慣に影響を与える可能性あり)。
- 開放性(Openness): BMIとの関連が不明瞭(食生活の多様性に影響を与える可能性あり)。
(2) 日本の研究結果との比較
- 勤勉性とBMIの関連は欧米と同様に負の関連を示した。
- 外向性とBMIの関連は、日本では男性のみに見られたが、欧米では男女ともに正の関連が報告されている。
- 神経症傾向とBMIの関連について、
日本では明確な関連が見られなかったが、欧米では女性において正の関連が見られた(Sutin et al., 2015)。 - 協調性とBMIの関連は、日本と欧米ともに明確な関連がなかった。
- 開放性とBMIの関連も、日本と欧米ともに一貫性がなく、明確な関係は示されていない。
👉 総括: 勤勉性の影響は日本と欧米で共通していたが、
外向性の影響は日本の方が限定的だった。
また、神経症傾向とBMIの関連は欧米では女性で強く、日本では見られなかった。
2. 社交的な人ほどBMIに影響するのか?
「社交的な人ほどBMIに影響する」というのは、
一部の状況では当てはまるが、
必ずしも全員に当てはまるわけではありません。
以下のような要因が影響を与えています。
(1) 外向性が高い人の食行動
- 外向性の高い人は社交的であり、外食や飲酒の機会が多い(Feiler & Kleinbaum, 2015)。
- 社交の場では、カロリーの高い食事やアルコール摂取が増える可能性が高い(Sutin et al., 2015)。
- その結果、外向性が高いほどBMIが上昇しやすい。
(2) なぜ日本では外向性とBMIの関連が男性に限定されたのか?
- 日本の社会では、特に男性は仕事関係の会食や飲み会に参加する機会が多い(厚生労働省, 2019)。
- 一方で、日本の女性は外向性が高くても、
美容やダイエットへの意識が強いため、食事量を自己制御する傾向がある(Pike & Dunne, 2015)。 - 女性は外向的でもBMIに影響が少ないが、男性は外向的だと飲食量が増えてBMIが上昇する。
(3) 欧米との違い
- 欧米では、男女ともに外向性とBMIが正の関連を示す(Sutin et al., 2015)。
- これは、欧米の食文化では男女ともにカロリー摂取量が高く、
社交の場での食事量が日本以上に影響を与えるためと考えられる。 - 日本の女性はBMIの管理に対する意識が高いため、外向性がBMIに影響しにくい。
👉 総括: 外向性の高さはBMIに影響する可能性があるが、
日本では特に男性においてその傾向が強い。
女性はダイエット意識が高いため、社交の場でも食事制御をしやすい。
3. 近年の日本の食生活の欧米化と過去の研究との比較
近年の日本の食生活は欧米化が進んでおり、
それがBMIとパーソナリティの関連に影響を与えている可能性があります。
(1) 過去の東アジア研究の結果
韓国や中国での研究(Shim et al., 2014; Sutin et al., 2015)では、以下のような結果が示されました。
- 韓国では勤勉性とBMIに関連がなかった(Shim et al., 2014)。
- 韓国の女性では、神経症傾向や開放性とBMIに負の関連があり、協調性と正の関連があった。
- 中国では、女性のみにおいて勤勉性とBMIが負の関連を示し、
男性では協調性と正の関連があった(Sutin et al., 2015)。 - これらの結果は、欧米の研究と異なり、勤勉性とBMIの関連が明確ではない点が特徴的。
(2) 近年の日本の食生活の変化
- 日本の食生活は1975年頃と比較すると、欧米化が進み、
肥満になりやすい環境に変化している(北野 et al., 2014)。 - 1977年以降、日本の子どもたちの肥満傾向が増加している(小田切 et al., 2013)。
- 食の欧米化により、自己制御が重要になり、
勤勉性の影響が強く現れた可能性がある。
(3) 日本の研究結果と東アジアの研究結果の違い
- 日本では、勤勉性とBMIの負の関連が欧米と同様に見られたが、
韓国や中国ではこの関連が弱かった。 - これは、日本の食文化が欧米化しつつあることが影響している可能性がある(例:ファストフードや加工食品の増加)。
- 日本では、勤勉性が高い人は健康的な食生活を維持しやすく、
その結果BMIが低くなる傾向が見られた。
👉 総括: 過去の東アジア研究では勤勉性とBMIの関連は明確でなかったが、
近年の日本では欧米化が進んだため、勤勉性とBMIの負の関連がより顕著になった可能性がある。
まとめ
✅ 勤勉性とBMIの関連は、日本と欧米で一致。
✅ 外向性とBMIの関連は、日本では男性に限定されたが、欧米では男女ともに見られる。
✅ 神経症傾向は、欧米では女性のBMIと正の関連を示したが、日本では明確な関係が見られなかった。
✅ 近年の日本の食生活の欧米化により、勤勉性の影響がより強調された可能性がある。
✅ 日本では外向性の高い男性は社交の場での飲食行動が多くなり、
BMIが上昇しやすいが、女性は体型管理意識が高いため影響を受けにくい。
このように、日本の食文化や社会的背景の変化が、
パーソナリティとBMIの関連に影響を与えていることが示唆されます。
BMIとビッグファイブについて、日本と欧米、
男女について一致している部分とそうでないところが明確になっています。
私たちが環境に左右されてしまうということが明確になっています。
また、男女では意識の違いがBMIに現れるという結果です。
環境を整えることで、健康でいられるということです。
近年は日本食が見直されています。
健康経営のヒントになる事例となるのではないでしょうか。
最後までご覧いただきありがとうございます。
参考資料
吉野伸哉・小塩真司 (2020). 『日本におけるBig Fiveパーソナリティ特性とBMIの関連』, 2025年2月20日アクセス. https://doi.org/10.4992/jjpsy.91.19320