前回は(全2回)女性がなぜ組織において昇進できないか。
その原因が『壊れたはしご』にあるというお話をしました。
また女性が昇進しリーダーシップを発揮するには、
組織に心理的安全性を担保する必要があることもお伝えしております。
この回ではさらに話を深堀り、今回のレポートの内容の課題解決策のお話をしていきます。
女性のキャリア成長を妨げる障壁
- マイクロアグレッション(細かい偏見や侮辱)
特に有色人種の女性、LGBTQ+女性、障害を持つ女性が、
能力やリーダーシップを疑問視されるなどの偏見を頻繁に受けています。
これらは士気を下げ、キャリアの妨げとなっています。 - セクシャルハラスメント
4人に1人以上の女性が職場でセクハラを経験しています。
若い女性と高齢の女性が同様の頻度で被害を受けており、改善が見られません。 - ワークライフバランス
柔軟な働き方の選択肢が増えたにもかかわらず、
女性は依然として男性よりも家事を担う割合が高く、
上級管理職の女性の35%が家事の大部分を担っています(男性はわずか8%)。
1. マイクロアグレッション
同僚がどのように感じているのか
- 無関心や見て見ぬふり: 多くの同僚は、マイクロアグレッションが日常的に起きている場合、
それを問題視しないことがあります。
特に、無意識の偏見による行動は「冗談」や「当たり前」として見過ごされやすいです。 - 共感の欠如: 被害者が受けた影響に共感を示さず、
「過剰反応」と捉える人も少なくありません。 - 一部の共感: 一方で、多様性に対する感度が高い同僚は、
被害者の立場を理解し、問題解決に向けて声を上げるケースもあります。
経営層や管理職の施策
- 多様性研修の実施:
一部の企業では、無意識の偏見やマイクロアグレッションを
認識するためのトレーニングを導入しています。 - 相談窓口の設置:
人事部や外部機関に相談窓口を設置し、
問題を早期に解決する仕組みを整えている企業もあります。 - 透明性の向上:
昇進や評価プロセスにおける透明性を高めることで、
偏見が介在しにくい環境を作ろうとする取り組みが増えています。
課題
- 取り組みが部分的であるため、全社的な文化改革には至っていない。
- 一部の管理職や経営層が問題を「優先事項」として認識していないケースもあります。
2. セクシャルハラスメント
なぜ改善が見られないのか
- 沈黙の文化:
被害者が報復や評判を恐れて声を上げにくい環境があります。
これにより、問題が可視化されず放置される傾向があります。 - 上司の加担または容認:
一部の経営層や管理職が問題を軽視したり、
自ら加担しているケースもあります。
これが組織全体の無関心を助長します。 - 対策の形式化:
セクハラ防止ポリシーを表面的に設けている企業もありますが、
実効性のある施策が不足している場合が多いです。
若い女性と高齢の女性がターゲットになる理由
- 若い女性: 見た目や年齢が若い女性は、
セクハラのターゲットとして見られやすい傾向があります。
権力関係や社会的な認識が原因です。 - 高齢の女性: 高齢の女性がセクハラの対象となる場合、
その多くは「軽視」や「冗談」の名目で行われるケースが多いです。
年齢に基づく偏見やステレオタイプが影響しています。
ワークライフバランス
他の要因
- 固定観念の影響:
昔からの性別役割分担(男性は働き、女性は家庭を守る)が、
現代でも根強く残っています。 - 職場での柔軟性不足:
柔軟な働き方が増えたといっても、
実際に家事や育児に取り組む男性の割合は依然として少ないです。 - 文化的な期待:
日本を含む多くの文化では、
女性が家庭に対して「最終的な責任」を負うという社会的プレッシャーがあります。
セクハラやワークライフバランスについても、
経営層や管理職の優先順位が低いことが課題です。
4. 上記のようなことが起こる組織の特徴や傾向
- 心理的安全性の欠如:
従業員が問題を声に出しにくい環境では、
マイクロアグレッションやセクハラが助長されます。 - リーダーシップの不在:
経営層や管理職が多様性を重視しない組織では、
改善の取り組みが進みません。 - 透明性の欠如:
評価基準やキャリアパスの透明性が不足していると、
偏見や差別が温存されやすくなります。 - 男性中心の文化: 伝統的な男性中心の文化が残る組織では、
女性が十分に活躍できる環境が整いにくいです。
対応策は
これらの問題は、
多様性を重視しない文化や、
心理的安全性が低い環境に起因しています。
組織全体で透明性を高め、偏見を排除し、
心理的安全性を確保する取り組みが必要です。
マイクロアグレッション、セクハラ、ワークライフバランスに対する、
改善策が取られにくい要因とは。
多様性への企業の取り組みの低下
- 性別や人種の多様性に対する企業の取り組みが低下しており、
特に採用、メンターシップ、キャリア開発プログラムが減少しています。
これは、根本的な変化が必要な時期に起きている点で懸念されます。 - 若い女性は、多様性や包摂性を重要視する傾向が強く、
企業の文化改革に対する新たな期待を示しています。
取り組みの低下の背景にあるもの
多様性への取り組みが停滞している背景には、
経済的、文化的、組織的な課題が複雑に絡んでいます。
若い女性を含む次世代の期待に応えるためには、
トップダウンのリーダーシップと具体的な行動計画が不可欠です。
この問題を「重要な経営課題」として捉え、企業文化全体を変革する必要があります
4. 経営者への推奨事項
これらの課題に対応し、進展を加速させるために、以下の対策が求められます:
- 「壊れたはしご」を修復
公平な昇進制度を導入し、女性が管理職に進出しやすくする。 - マイクロアグレッションへの対処
偏見を認識し緩和するためのトレーニングを実施し、マネージャーに包摂的な文化の醸成を求める。 - メンター・スポンサー制度の強化
女性、とくに有色人種の女性のキャリア開発を支援するプログラムを拡充する。 - 柔軟性とサポートの拡大
育児や介護支援、柔軟な働き方を提供し、女性の負担を軽減する。 - 結果の追跡と評価
性別や人種による採用・昇進・離職率をデータで追跡し、進捗を測定する。
これらの課題を解決するための不可欠な優先的施策
心理的安全性を基盤にした推奨事項
環境を整える第一歩として、心理的安全性の確保が重要です。
これにより、従業員が安心して意見を述べ、
問題を共有できる文化を築くことが可能となります。
心理的安全性の役割
心理的安全性は、これらすべての施策を成功に導くための基盤です。
- 安心感の醸成: 従業員が問題を報告しやすい文化を作る。
- オープンなコミュニケーション: 意見が尊重され、行動につながる環境を提供する。
- リーダーの模範行動: 経営層が率先して心理的安全性を支える行動を示す。
心理的安全性の担保が、対策の効果を最大化する基盤となります。
1. 壊れたはしごを修復
- 公平な昇進制度の導入
- 昇進基準を明確化し、透明性を高める。
- 無意識の偏見を排除するため、昇進評価プロセスに複数の視点を取り入れる(例: 360度評価)。
- 昇進プロセスにおける透明性を確保し、心理的安全性を感じられるようにする。
2. マイクロアグレッションへの対処
- 認識と緩和のためのトレーニング
- 全社員を対象に無意識の偏見やマイクロアグレッションの影響を理解する研修を実施。
- 管理職には包摂的リーダーシップを育むスキルを提供し、
チーム内で心理的安全性を醸成することを求める。
- 早期解決の仕組み
- 匿名報告システムや信頼できる相談窓口を整備し、
従業員が安心して問題を共有できる環境を提供。
- 匿名報告システムや信頼できる相談窓口を整備し、
3. メンター・スポンサー制度の強化
- キャリア開発支援の拡充
- 女性社員や有色人種の女性に特化したメンターやスポンサーを提供し、
キャリア形成を支援。 - ロールモデルとなる女性リーダーを積極的に登用し、
心理的安全性を感じられるようにする。
- 女性社員や有色人種の女性に特化したメンターやスポンサーを提供し、
4. 柔軟性とサポートの拡大
- 柔軟な働き方の提供
- リモートワークや短時間勤務、
フレックスタイムなどの選択肢を拡充。 - 育児や介護を支援する福利厚生を整備し、
特に負担の大きい女性社員が安心してキャリアを続けられる環境を提供。
- リモートワークや短時間勤務、
- チーム内の理解促進
- 管理職がチームメンバーの個別の状況を理解し、
柔軟なサポートを提供することを奨励。
- 管理職がチームメンバーの個別の状況を理解し、
5. 結果の追跡と評価
- データ駆動型のモニタリング
- 採用・昇進・離職率のデータを性別や人種別に追跡し、
改善ポイントを特定。 - 進捗を社員に公開することで、
心理的安全性と透明性を同時に向上させる。
- 採用・昇進・離職率のデータを性別や人種別に追跡し、
- 継続的なフィードバック
- 定期的な社員満足度調査を実施し、
現場の声を反映した改善を行う。
- 定期的な社員満足度調査を実施し、
心理的安全性を高め、担保される環境を整えることがはじめの一歩です。
その上で、公平性を追求し、偏見を排除し、支援プログラムを充実させる施策を進めることで、
多様性を活用した組織成長が実現します。
心理的安全性が担保されることにより、
経営層がこれらの施策を実行するための積極的なリーダーシップを発揮することが可能となります。
あなたの組織やチームには心理的安全性が担保されていますか。
思い当たることがあったのでは…
組織活性化のためのヒントが見つかり、行動のきっかけになれば幸いです。
最後までご覧いただきありがとうございます。
参考資料
マッキンゼー・アンド・カンパニー(2024). Women in the Workplace 2024. https://www.mckinsey.com
(2024年11月10日アクセス)