1973年に心理学者デイヴィッド・マクレランド(David C. McClelland)によって発表された論文、
“Testing for Competence Rather Than for Intelligence”についてです。
“Testing for Competence Rather Than for Intelligence”
従来の知能テスト(IQテスト)に対する批判と、
それに代わる新たな評価手法としてのコンピテンシーの概念を提唱しています。
彼の主張は、単に知能を測定するだけでは、
職場や社会での成功を予測するには不十分であり、
実際の仕事で高い成果を上げるための具体的なスキルや行動、
動機などを評価するべきだというものです。
1. 知能テストへの批判
従来のIQテストや学歴の評価は、
職務における成功の予測には限界があるとマクレランドは指摘しました。
これらのテストは、
知識や推論能力を測定するものの、
実際の職場で必要とされる行動や成果に直結しないため、
職務適性を正確に評価するには不十分であるとされました。
2. コンピテンシーの提唱
マクレランドは、
仕事で成功するために必要なスキルや行動を具体的に定義し、
それに基づく評価方法を「コンピテンシー」として提案しました。
コンピテンシーには、以下のような要素が含まれます:
知識(Knowledge):
その職務を遂行するために必要な理論的および実践的な知識。
スキル(Skills):
具体的な技術や能力。
行動特性(Behaviors):
職務における行動パターンや態度、リーダーシップ。
動機(Motivations):
成果を上げるために内在する動機や価値観。
3. コンピテンシーモデルの実用化
マクレランドは、
職場での成功を予測するために、
行動観察や実際のパフォーマンスに基づく評価が必要だと述べました。
このコンピテンシーモデルは、
特定の業務において成功するために必要なスキルや行動を分析し、
従業員を評価・育成するフレームワークとして発展しました。
たとえば、
ある職務において優秀なパフォーマンスを示す社員の行動特性を分析し、
それを基準に他の社員の育成や採用プロセスを改善することができます。
4. マクレランドの影響
この論文は、
現代の人材開発やパフォーマンス評価の手法に大きな影響を与え、
従来のテストスコアに依存する評価から、
具体的なスキルや行動に基づく評価へとシフトするきっかけとなりました。
彼の理論は、
特にリーダーシップ開発、
パフォーマンス管理、
採用プロセスにおいて広く採用されています。
コンピテンシーモデルがもたらすメリットは、
個人の成長から組織全体のパフォーマンス向上まで多岐にわたります。
以下に、
コンピテンシーモデルが企業や組織にもたらす主なメリットを挙げます。
1. 明確な評価基準
コンピテンシーモデルは、
従業員のパフォーマンスを明確な基準で評価するための枠組みを提供します。
これにより、
主観的な評価ではなく、
具体的なスキルや行動に基づいて公正な評価が可能になります。
これにより、
従業員のパフォーマンス管理がシステム化され、
透明性の高い評価が実現します。
2. 育成計画の効果的な設計
コンピテンシーモデルは、
個々の従業員の強みと弱みを可視化するため、
的確な育成計画を立てることが可能です。
従業員がどのコンピテンシーを伸ばすべきかが明確になるため、
トレーニングや育成プログラムを効果的にデザインすることができます。
また、
個別のキャリアプランを設計するためにも役立ちます。
3. パフォーマンスの向上
コンピテンシーモデルは、
従業員に必要なスキルを正確に特定し、
必要なトレーニングを提供することで、
組織全体のパフォーマンスを向上させます。
従業員が明確な目標を持ち、
それに向けた育成を受けることで、
職務遂行能力が向上し、
組織の生産性や効率が高まります。
4. 採用プロセスの改善
コンピテンシーモデルを使用することで、
特定の役職に必要なスキルや行動特性が事前に明確になるため、
採用プロセスが効率化されます。
これにより、
職務に最も適した候補者を見つけやすくなり、
ミスマッチのリスクが減少します。
採用後のオンボーディングもスムーズに行えるようになります。
5. リーダーシップ開発
コンピテンシーモデルは、
特にリーダーシップ開発において有効です。
リーダーに必要な特定のコンピテンシーを明確にすることで、
リーダー候補の特定や育成が行いやすくなります。
また、
次世代リーダーを育成するためのフレームワークとしても活用できます。
6. 従業員のエンゲージメント向上
コンピテンシーモデルは、
従業員が自身のキャリアや成長目標に対して明確な道筋を持つことを助けます。
これにより、
従業員のモチベーションやエンゲージメントが向上し、
長期的な定着率も高まります。
従業員は、
自分がどのスキルを強化すべきかを知ることで、
自発的に成長を目指しやすくなります。
まとめ:
コンピテンシーモデルは、
個人の成長を支援し、
組織全体のパフォーマンス向上に寄与する強力なツールです。
明確な評価基準を提供することで、
従業員の育成計画を的確に設計し、
組織の採用やリーダーシップ開発、
エンゲージメント向上に貢献します。
このモデルを導入することで、
長期的な成長を実現し、
企業の競争力を強化することができます。
参考サイト
Harvard Business School.Working Knowledge.“Competency and Skills”
IvyPanda.Psychology and Personality.“Big Five Personality Model Analysis Case Study”,2024/07/17
コンピテンシーって3に続く