コンピテンシーってその4

前回の続きからです。

MOSAICアプローチ

Multipurpose Occupational Systems Analysis Inventory – Closed)は、
職務分析を効率的に行うための手法です。

このアプローチは、
さまざまな役職や職務に共通するスキルやコンピテンシーを特定し、
それらを基に一貫性のある人材管理を行うことを目的としています。

特に、
複数の職務にまたがる共通要素を効率的に特定するため、
組織全体でのコスト削減や業務の効率化に寄与します。

MOSAICアプローチの主な特徴

汎用性の高いモデル:

MOSAICアプローチは、
異なる職務に共通するスキルセットを見つけ出し、
それらを統合的に管理するためのフレームワークです。

これにより、
複数の職種にわたって使えるスキルやコンピテンシーが一度に評価され、
人材管理全体が効率化されます。

スキルセットの統一:

多くの職務に共通する能力や行動特性を定義することで、
採用、評価、育成、昇進のプロセスにおいて、
スキルセットの統一基準が確立されます。

これにより、
異なる役職でのスキルミスマッチを防ぎ、
効率的な人事管理が実現します。

効率的な職務分析:

MOSAICは、
従来の職務分析に比べて、
時間とコストを節約できる方法として設計されています。

複数の職務にまたがる共通のスキルを同時に分析し、
不要な重複を省くことで、職務分析プロセスを簡素化します。

人材育成の計画に活用:

MOSAICアプローチでは、
特定の役職だけでなく、
組織全体のスキルやコンピテンシーを横断的に評価します。

これにより、
将来のリーダーシップポジションや他部門での異動を
視野に入れた育成プランを設計する際にも役立ちます。

MOSAICアプローチの実用例

特に、
アメリカの連邦政府機関では、
MOSAICを使用してさまざまな役職のスキル評価を統一し、
連邦職員の採用とパフォーマンス評価を効率化しています。

これにより、
政府全体での統一基準が確立され、
役職ごとに異なるスキル要件が整理され、
全体的なコスト削減や業務の最適化が進められています。

整理すると

MOSAICアプローチは、
異なる役職間で共通するコンピテンシーを効率的に
特定・評価することを可能にするため、
組織全体でのスキル管理や人材育成において非常に有効です。

また、
コスト削減や業務の効率化にも貢献するため、
幅広い組織で導入が進んでいます。

MOSAICアプローチはアメリカで広く活用されていますが、
日本ではそれほど一般的に知られているわけではありません。

アメリカの連邦政府機関などで使われている
職務分析ツールや統合的な人事実践のフレームワークは、
日本の企業や公的機関であまり導入されていないのが現状です。

これは、
日本の人事制度や職務評価の方法がアメリカと異なる背景があるからです。

日本での普及状況

日本では、
アメリカのように職務に基づいた評価システム(ジョブディスクリプションに基づく評価)が
広く導入されているわけではなく、
従来の「年功序列」や「職能給」による評価制度が根強く残っています。

このため、
MOSAICアプローチのような職務に基づいた人事実践が広まっているとは言えません。

しかし、
最近では、
日本でもコンピテンシーモデルの導入が進んでおり、
特にグローバル企業や外資系企業、先進的な企業がこのようなアプローチを取り入れ始めています。

これにより、
徐々に職務分析に基づく評価や人事管理が広まる可能性があります。

今後の展望

日本でも、
職務に基づいた評価制度やジョブ型雇用の導入が進む中で、
MOSAICのようなアプローチが今後注目される可能性はあります。

ただし、
まだ一般的に普及している段階ではないため、
今後の発展に期待が寄せられます。

日本で活かすには

現時点では、
日本でMOSAICアプローチが広く採用されているわけではありませんが、
グローバルな人事管理手法の導入が進む中で、
今後注目される可能性があります。

米国の人事管理局(Office of Personnel Management, OPM)が
連邦政府内で使用しているコンピテンシーモデルは、
人材管理のあらゆる分野において統一されたアプローチを提供し、
職務における能力を評価し、
育成するための基準として幅広く活用されています。

具体的には、以下のような領域で使用されています。

1. 採用

OPMのコンピテンシーモデルは、
連邦政府内での採用プロセスにおいて、
特定の役職に必要なスキルや知識、
行動特性を明確にするために使用されます。

これにより、
採用担当者は各ポジションに適した候補者をより正確に選定できるようになります。

例えば、
特定の職種に求められるコンピテンシー
(リーダーシップ、コミュニケーションスキル、問題解決能力など)が
明確に定義され、採用基準が一貫性を持つようになります。

2. パフォーマンス評価

OPMは、
職務ごとに定義されたコンピテンシーを基に、
従業員のパフォーマンスを評価します。

これにより、
従業員がどのスキルを強化すべきか、
または現在の職務でどのように成功しているかを客観的に判断できます。

パフォーマンス評価が統一されることで、
評価の偏りがなくなり、
個々のパフォーマンス向上に向けた具体的なフィードバックが提供されます。

3. 昇進

昇進プロセスにおいても、
コンピテンシーモデルは重要な役割を果たします。

OPMは、
昇進に必要なスキルや能力を基準として設定しており、
候補者が次のレベルの役職に求められるスキルを持っているかを判断します。

これにより、
従業員の昇進が公平で透明性のあるプロセスとして進行し、
組織内のリーダーシップの質を向上させることができます。

4. トレーニングと育成

OPMのコンピテンシーモデルは、
従業員の成長と開発にも活用されています。

具体的な育成プログラムは、
従業員がどのコンピテンシーを伸ばすべきかに基づいて設計されます。

これにより、
個別のトレーニングニーズに対応し、
従業員が長期的に成功するために必要なスキルを獲得するための計画が策定されます。

5. 人材計画の統一

OPMは、
連邦政府全体で一貫した人材管理を実現するために、
コンピテンシーモデルを使用しています。異なる省庁や部門においても、
統一された基準で人材を評価し、
育成することができるため、
職務間の異動やキャリア開発が円滑に行える仕組みを作り出しています。

OPMをわかりやすく

OPMのコンピテンシーモデルは、
採用、パフォーマンス評価、昇進、育成など、
連邦政府全体の人事プロセスに統一された基準を提供し、
組織全体のパフォーマンス向上に寄与しています。

このモデルを通じて、
個人のスキルや能力が正確に評価され、
組織全体が効率的かつ透明性の高い人材管理を実現しています。

インフォグラフィックで表現すると

コンピテンシーモデルMOSAICフレームワーク
視覚的に整理したインフォグラフィックです。

中央には「Competency Model」が配置されており、
3つの主要な要素(スキル、知識、行動)が強調されています。
また、MOSAICは職務分析やコンピテンシーの特定、
役割マッチング、そして開発プログラムへの流れを視覚的に示し、
組織での役割要求とコンピテンシーベースの発展とのつながりを示しています。

参考資料&サイト

U.S. Office of Personnel Management (OPM)

[Federal Competency Assessment Tool – Management (FCAT-M)]