ゴールマンのリーダーシップスタイル2

前回はゴールマンのリーダーシップスタイルと他のリーダーシップスタイルの違いや、
リーダーシップ育成の流れについてお話を進めました。

ここではリーダーの階層についてからお話を進めていきます。

医学教育におけるリーダーの階層ごとのデータ

Table 1では、医学教育におけるリーダーを3つの階層(初級・中級・上級)に分類し、
それぞれの特性を分析しています。以下、その詳細を解説します。


Table 1のデータ

カテゴリー参加者数性別 (男性:女性比率)年齢範囲 (平均年齢)医学教育リーダーとしての経験年数 (平均年数)リーダー職種の例
初級リーダー (First-level leaders)28名4:323-29歳 (平均25歳)3-5年 (平均3年)研修医 (Chief Residents)、医学生代表 (Undergraduate Student Leaders)
中級リーダー (Middle-level leaders)8名7:137-64歳 (平均52歳)8-19年 (平均13年)プログラム・コース責任者 (Program Coordinators, Course Chairs, Curriculum Directors)
上級リーダー (Senior-level leaders)6名3:349-68歳 (平均57歳)8-24年 (平均18年)副学部長・学部長 (Associate Deans, Deans)

また、追加で8名の上級リーダーへのインタビューも実施され、
全国レベルの教育機関のリーダーが対象となりました。


重要ポイント


1. リーダーシップ階層ごとの年齢と経験の違い

  • 初級リーダーは20代前半が中心で、医学教育リーダー経験は平均3年程度と比較的短い。
  • 中級リーダーは40代〜60代前半で、リーダー経験は約13年と長期的なキャリアを積んでいる。
  • 上級リーダーは50代〜60代後半で、経験年数は最も長く18年。
    キャリアの終盤に位置し、教育機関全体を統括する役割を担っている。

2. 性別の分布

  • 初級・上級レベルでは男女比がほぼ均等(4:3、3:3)。
  • 中級リーダーでは男性が7名、女性が1名と偏りがある
    → これは教育プログラムの責任者の多くが男性であることを示唆している可能性があります。

3. 役割の違い

  • 初級リーダーは、学生や研修医のリーダーで、組織の全体的な管理というより、
    学生や研修医の代表としての役割が中心。
  • 中級リーダーは、特定のプログラムやコースの管理責任者として、
    教育カリキュラムの運営を担う。
  • 上級リーダーは、組織全体の運営を統括する副学部長や学部長であり、
    大学の医学部や教育機関の戦略的なリーダーシップを発揮する。

4. 上級リーダーのインタビュー

  • 追加で全国レベルの医学教育機関のリーダー8名を対象にインタビューを実施。
  • 彼らは国レベルの教育政策やカリキュラム改革に関与している可能性が高い。
  • 地方大学と全国規模の機関ではリーダーシップの役割が異なるため、
    その違いを分析することが本研究の目的の一つとなっています。

当該データの意義

  • 医学教育におけるリーダーシップのキャリアパスを示しており、
    リーダーシップ研修を設計する際の階層ごとのアプローチの違いを考える手がかりになる。
  • リーダーの年齢や経験が階層に応じて異なるため、適切なリーダーシップスタイルも変化する
    (例:初級リーダーはデモクラティック、中級リーダーはコーチング、上級リーダーはビジョナリーを多用)。
  • 男女比の違いは、医学教育リーダーのジェンダーバランスの課題を示唆している可能性があり、
    今後の多様性推進の議論に活用できる。

リーダー研修の視点での考察

① 階層別のリーダーシップ育成の必要性

  • 初級リーダー向け研修: チームワークやコラボレーションのスキルを重視(デモクラティック型リーダーシップの強化)。
  • 中級リーダー向け研修: 教育プログラムの運営能力やコーチングスキルを強化(コーチング型リーダーシップ)。
  • 上級リーダー向け研修: 戦略的思考や組織運営、ビジョン構築(ビジョナリーリーダーシップ)。

② 男女比の違いと女性リーダー支援

  • 中級リーダー層での女性の少なさが、
    医学教育機関のリーダーシップにおける性別の偏りを示唆。
  • 女性リーダーの育成支援として、リーダーシップ開発プログラムやメンタリングが有効。

③ 上級リーダーの国レベルの影響

  • 全国レベルのリーダーの視点を取り入れ、
    教育政策のリーダーシップに関する研究を進めることが、医学教育の発展につながる。

まとめ

  • Table 1は医学教育におけるリーダーの階層ごとの特性を明らかにし、
    リーダーシップの発達プロセスを示しています。
  • 年齢・経験・役割の違いを踏まえたリーダーシップ育成が必要。
  • 中級リーダー層のジェンダーバランスの偏りは、
    医学教育リーダーシップにおける多様性推進の課題として注目すべきポイント。
  • 上級リーダーは、組織の戦略レベルの意思決定を担い、
    全国レベルでの影響力も持つため、リーダー研修ではこの点を考慮する必要がある。

リーダー育成の視点からも、
各階層ごとに適切なリーダーシップスキルを習得させることが重要であり、
これを踏まえた研修設計が望まれます。

リーダー育成に悩んでいる方には、大きなヒントになる内容だと感じています。

年齢や経験を考慮してリーダー育成プログラム作成していただく際のヒントや参考になれば幸いです。

最後までご覧いただきありがとうございます。

参考資料

Saxena, A., Desanghere, L., Stobart, K., & Walker, K. (2017). 『Goleman’s Leadership Styles at Different Hierarchical Levels in Medical Education』, 2025年2月1日アクセス. https://www.researchgate.net/publication/319922979_Goleman’s_Leadership_styles_at_different_hierarchical_levels_in_medical_education

ゴールマンのリーダーシップスタイル3へつづく