上司と部下の関係。どの組織やチームにおいてもこの関係性の悩みが多く、
この手の問題をネタにした記事などをネットで目にします。
そこで課題が挙げられて、解決策のヒントという流れですが、
実践しても解決には至らないということがほとんどです。
実際の場面では人間関係は複雑で、根本にある課題を解決しないと、
問題をクリアすることはできません。
根本にある課題解決には長期的な施策が必要です。
しかし、世間でよく見る解決策は、
短期的かつ一時的な効果しか生まない施策で、続かないということがほとんどです。
今回はリーダーシップの型の1つである、サーバント・リーダーシップ(SL)と
ビッグファイブがフォロワーシップに与える影響についての研究した論文から、
上司と部下の関係性を良好にする、マネジメントについてのお話です。
サーバント・リーダーシップ(SL)と部下の行動
サーバント・リーダーシップという言葉をご存知でしょうか。
世間一般では、どのようなリーダーシップとして認識されているのかを解説。
※サーバント・リーダーシップはSLと表記します。
SLの特徴
定義の焦点:
- リーダーがまず「奉仕者」としての姿勢を示し、その後にリーダーとして導く。
- Robert K. Greenleafによる哲学的概念として広まり、リーダー個人の道徳性や倫理観が強調される傾向があります。
一般的な特性:
ビジョン共有: 組織の目標と価値観を共有する。
奉仕: 他者を最優先に考える。
倫理観: リーダーの誠実さや道徳性。
支援的態度: 部下の成長と幸福を促す支援者。
参加型の意思決定: 部下との共同作業を重視。
一般的な認識では哲学的・倫理的側面が強調される傾向があるということです。
フォロワーシップ行動の3つの型
次に部下の行動について解説していきます。
研究調査では、フォロワーシップの行動とされており、
その行動には3つの型があります。
先行要因の理解
フォロワーシップ行動(受動的忠実型、能動的忠実型、統合型)が
どのような要因によって引き起こされるのかを明確にすることです。
例えば、上司のSL特性や性格特性(ビッグファイブ)が
部下の行動にどのように影響を与えるのかを探ります。
行動の分類
フォロワーシップ行動を3つのタイプに分類することで、
異なるリーダーシップスタイルがどの行動に影響を与えるのかを区別します。
フォロワーシップの行動を3つのタイプに分けることについては、
以下の目的もあります。
3タイプに分けた目的
1.効果的なリーダーシップの設計
リーダーがどのような行動を取るべきかを示すことで、
組織内のフォロワー行動を望ましい方向に導くための指針となります。
2.人材育成と管理
上司の性格特性やリーダーシップスタイルに応じた人材育成戦略の策定が可能になります。
たとえば、調和性の高い上司の下ではフォロワーの行動が全般的に活性化するため、
適切な配属や組織設計に活用できます。
心理的安全性の向上
フォロワーシップ行動のメカニズムを理解することで、
メンタルヘルス問題の予防や職場環境の改善につなげられます。
この研究では「フォロワーシップ行動の先行要因を探索的に検討し、
組織内での行動の理解とリーダーシップの改善を目指す」ためです。
つまり、リーダーシップの問題を見える化し、上司と部下の関係改善をするためです。
リーダーシップにおけるミスや間違いの例
1.倫理観の欠如と不祥事の発生
企業不祥事(例: 会計不正、偽装表示)が、
リーダーの倫理的な判断の欠如から発生することが指摘されています。
2.管理職によるハラスメント
部下への不適切な管理やハラスメント行為が、
リーダーシップの欠如による問題として取り上げられています。
3.リーダーシップの機能不全
組織の方向性や目標を示すべきリーダーが、
その役割を果たせないことで、
部下の行動が消極的になる可能性があると述べられています。
4.不適切な意思決定:
サーバント・リーダーシップの理想的な特性が欠如している場合、
信頼や成長の促進が阻害されると指摘されています。
フォロワーシップ行動の理解の重要性
- リーダーシップのミスや誤解による組織的な混乱を防ぐため、
フォロワーシップ行動の先行要因を明らかにし、
リーダーとフォロワー間の相互作用を最適化する必要があります。 - 具体的には、
リーダーの性格特性(ビッグファイブ)や行動スタイル(SL)が、
部下の行動にどのように影響を与えるかを把握することで、
誤った管理スタイルを是正できるとされています。
さらに深くフォロワーシップ行動3タイプが
リーダーシップにどのような要因で影響を受けるかを詳しく見ていきます。
1. フォロワーシップ行動3タイプ
1-1. 受動的忠実型フォロワーシップ行動
- 要因: 上司の外向性、開放性、調和性が正の影響を与えることが判明。
- 影響の詳細:
- 外向性: 精力的な行動に刺激され、部下は受動的に従う。
- 開放性: 創造的なリーダーに魅力を感じ、部下は積極的に受け入れる。
- 調和性: 共感的な上司に対し、部下は従順な行動を示す。
1-2. 能動的忠実型フォロワーシップ行動
- 要因: 上司の外向性、調和性が正の影響を与え、非サーバント・リーダーシップも強い影響。
- 影響の詳細:
- 外向性・調和性: 部下は積極的な支援を受けると、能動的な従順さを見せる。
- 非サーバント・リーダーシップ: 部下が自発的な忠誠を示し、上司に評価されようとする。
1-3. 統合型フォロワーシップ行動
- 要因: 上司の開放性、調和性が正の影響を与え、誠実性が負の影響。
- 影響の詳細:
- 開放性: 上司の革新的な考え方が部下の自主的な行動を引き出す。
- 調和性: 共感的な上司の下で、部下は自主的な行動に移る。
- 誠実性(負の影響): 厳格すぎる上司は部下の創造的な行動を抑制する。
2. リーダーシップスタイルの影響
研究調査では、上司のサーバント・リーダーシップ特性(SL)と
非サーバント・リーダーシップ(非SL)の影響が次のように区別されています。
2-1. サーバント・リーダーシップの影響
- 受動的忠実型: 部下最重視の姿勢により、部下は指示に忠実に従う。
- 統合型: 部下の成長を促進する上司の行動が、積極的な自律行動を生む。
2-2. 非サーバント・リーダーシップの影響
- 能動的忠実型: 上司が部下を重視しない場合、
部下は評価を得ようと積極的に忠実な行動を取る。
この行動は外的評価を意識した一種の防衛的行動と見なされています。
SLと非SLによって、フォロワーシップ行動、部下の行動に大きく影響しています。
勘の良い方はお気付きかと思いますが、
「社内活性化」には上司の行動が部下の行動に大きく影響しているのです。
まとめ
SLの影響
- SLは受動的忠実型と統合型行動に正の影響。
- 非SLは能動的忠実型行動に正の影響。
サーバント・リーダーシップは、
部下に対する思いやり、信頼、成長促進を通じて、
自律的な人財を育て、組織の持続的な成功を支えます。
一方、非サーバント・リーダーシップは、
評価主義的な文化を助長し、部下を受動的で自己主張の少ない人材にしてしまう可能性があります。
ビッグファイブの影響
調和性: すべての行動に正の影響。
外向性: 受動的忠実型、能動的忠実型に正の影響。
情緒不安定性: 影響なし。
開放性: 受動的忠実型、統合型に正の影響。
誠実性: 統合型に負の影響。
以上のことから、上司のビッグファイブやリーダーシップのあり方が、
部下の行動を大きく左右してしまうということです。
もっとシンプルにすると、
自分を知ることで、相手を知ることが可能となります。また逆もあり得ます。
私は人間関係の改善においては、
孫氏の兵法、「彼を知り己を知れば百戦殆からず」という言葉を常に思い出します。
これが人間関係を最適化する戦略であると思っています。
上司であるあなたの行動が部下にどのような影響を与えているか、
考えてみてください。
一度振り返っていただき、
今回の内容が、あなたの組織やチームの関係性を変えていくキッカケになれば幸いです。
今回はここまでです、最後までご覧いただきありがというございます。
参考資料
松山一紀・白築茉耶・中山敬介 (2023). 『サーバント・リーダーシップと性格特性因子ビッグファイブが,フォロワーシップ行動に与える影響』, 2024年12月13日アクセス.https://doshisha.repo.nii.ac.jp/records/29695