前回は組織を活性化させることについてのお話でした。
一般的に定義されているサーバント・リーダーシップと
研究調査で定義されたサーバント・リーダーシップでは、
どちらが組織活性化には有効なのかという内容です。
ここでは、一般的に定義されているSLでは組織活性化に有効かどうかを解説していきます。
※サーバント・リーダーシップはSLと表記します。
哲学的・倫理的側面が強調されるサーバント・リーダーシップには、
次のような特性と影響が考えられ,
分析結果と、一般的なリーダーシップ理論に基づいています。
哲学的・倫理的SLの特徴
焦点
- 個人の内面的な価値観(倫理、誠実さ、自己犠牲)
- 組織の成果よりも人間としての成長と社会的使命感
- Robert K. Greenleafの「まず奉仕者であれ(Servant First)」という概念に基づく。
影響とリスクの分析
1. 長所(ポジティブな影響)
- 価値観の明確化と共有:
- 組織全体が倫理的価値観に基づいて運営され、社会的責任(CSR)活動が促進される。
- 社内の信頼感と誠実なコミュニケーションが強化される。
- 高い従業員満足度と忠誠心:
- 上司が自己犠牲を示すことで、部下も組織への献身的な行動をとる。
- 部下は上司を信頼し、困難な状況でも団結する。
- 持続可能なリーダーシップの育成:
- 長期的な視点に基づき、リーダーとしての倫理観を高める人材が育成される。
- 短期的な業績よりも社会貢献や人材開発が重視される。
2. 短所(リスクと課題)
- 測定困難と不確実性:
- 哲学的な価値観や倫理観は測定が難しく、組織の成果に結びつけるのが困難。
- 組織目標の達成度が個々の価値観に左右される可能性がある。
- 目標管理の弱体化:
- 倫理観が強調されすぎると、組織の目標管理が曖昧になり、
業績向上の意識が希薄になる可能性。 - 必要な競争意識や結果重視の文化が育ちにくい。
- 倫理観が強調されすぎると、組織の目標管理が曖昧になり、
- 自己犠牲の限界:
- リーダーの自己犠牲が過度になると、バーンアウト(燃え尽き症候群)を招く。
- 自己犠牲が「当然」と見なされると、リーダーへの期待値が不合理に高まり、組織全体のバランスが崩れるリスクがある。
- 経営効率の低下:
- 成果よりも価値観の共有に重点が置かれるため、迅速な意思決定が難しくなる。
- 合意形成に時間がかかり、経営のスピードが鈍化する可能性がある。
双方のバランスの必要性
- 行動科学的な視点: 測定可能で、成果に基づく組織改善がしやすい。
- 哲学的・倫理的視点: 長期的な信頼構築や価値観の共有には有効だが、短期的な業績目標管理には向かない。
したがって、組織構築においては両者を組み合わせ、
倫理観に基づくリーダーシップと成果指標に基づく管理システムを統合することが最も効果的です。
双方のバランスをとりながらフォローワーシップをマネジメントしていくという結論に、
ビッグファイブを合わせることで、より包括的なリーダーシップモデルを構築できると考えます。
以下にその根拠を解説していきます。
1. 行動科学的視点 × ビッグファイブの適用
目的:
測定可能な行動特性をもとに、効果的なリーダーシップを数値化・管理。
ビッグファイブ特性 | 影響(行動科学的視点) |
---|---|
外向性 | 部下を引きつけ、積極的なコミュニケーションを促進。 |
情緒不安定性(低い) | 冷静な判断と安定的な意思決定をサポート。 |
開放性 | 創造性と革新を推進し、イノベーションを促す。 |
誠実性 | 業務の管理能力を高め、信頼性のあるリーダーに。 |
調和性 | 共感的な支援者として部下のモチベーションを高める。 |
期待される成果:
- チームパフォーマンスの向上: 高い外向性と調和性を持つリーダーは、フォロワーの行動を活性化させ、信頼関係を構築します。
- 意思決定の向上: 誠実性と開放性のバランスが、革新と組織運営の効率性を両立させます。
2. 哲学的・倫理的視点 × ビッグファイブの適用
目的:
リーダーシップの価値観と倫理観の強化。
ビッグファイブ特性 | 影響(哲学的・倫理的視点) |
---|---|
外向性 | 人間関係の形成とポジティブな雰囲気の創出。 |
情緒不安定性(低い) | 倫理的な行動規範を持つ、信頼できる存在。 |
開放性 | 多様性の受容と柔軟な思考を通じた公平な判断。 |
誠実性 | 倫理観と道徳的な行動を示すリーダー像の構築。 |
調和性 | 共感的かつ他者を思いやる倫理的な行動。 |
期待される成果:
- 組織の文化醸成: 高い調和性と開放性のリーダーは、公平性と多様性を重視する倫理的な組織文化を育てます。
- 倫理的リーダーの育成: 誠実性の高いリーダーは、組織のミッションを遂行し、社会的責任を果たす行動を強化します。
3. ビッグファイブによる統合的なリーダーシップモデル
- 測定・管理: 誠実性と開放性を測定し、リーダーの成長領域を特定。
- 価値観の醸成: 調和性と倫理観を中心に、リーダー育成プログラムを設計。
- 組織文化の形成: 外向性と開放性を活用し、協力的で創造的な職場環境を構築。
結論: ビッグファイブを取り入れるメリット
- 測定可能な特性: ビッグファイブの性格評価を通じて、
リーダーの特性を数値化し、管理・改善が可能。 - 文化と業績の統合: 行動科学的視点と哲学的・倫理的視点のバランスを取りながら、
価値観主導の持続可能な組織運営が実現。 - ターゲット別の育成戦略: 高い開放性や誠実性を重視することで、
組織文化形成と経営成果の両立を目指せる。
このように、ビッグファイブの性格特性をリーダーシップモデルに組み込むことで、
組織の成果と倫理観を統合する効果的なリーダーシップモデルが構築できます
リーダーシップとビッグファイブがフォロワーシップに与える影響により、
組織活性化をしていくにはという観点から考察していきました。
ここでは語ってはいませんが、組織活性化を実現するには、組織文化や風土に
心理的安全性が担保されていること、自己理解、他者理解があることが前提としてあります。
作物を育てる時に土壌がしっかりできていないと、良い作物はできません。
人を育てるのも同じことなのです。
また、育てる作物のことを知っているからこそ、美味しい作物の育てられます。
それは組織のおける自己理解や他者理解に通ずるものがあります。
私たちがなぜできないと思っていることに対し、自然の法則に目を向けることにより、
どこが間違っていることに気づくことができます。
何度もお伝えしていますが、孫氏の兵法「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」は戦いだけでなく、
全てのことに通じてくるなと確信に変わりつつあります。
自己理解、他者理解が組織を変えていくためにはマストです。
私がお伝えしたかったのは、どんなに良い施策でも、使う組織の土壌がしっかりできていないと、
最初は効果があっても、長くは続かないということも併せて伝わればと思っております。
この記事が組織活性化のヒントになれば、幸いです。
最後までご覧いただきありがとうございます。
参考資料
松山一紀・白築茉耶・中山敬介 (2023). 『サーバント・リーダーシップと性格特性因子ビッグファイブが,フォロワーシップ行動に与える影響』, 2024年12月13日アクセス.https://doshisha.repo.nii.ac.jp/records/29695