
ボストン連邦準備銀行(Federal Reserve Bank of Boston)の公式ワーキングペーパーです。
内容はビッグファイブ性格特性(Big Five Personality Traits) が金融行動(銀行口座の有無、
クレジットカードの所有、リボ払いの利用など)にどのような影響を与えるかを分析しています。
特に、機械学習モデルを用いた分類木(Classification Tree) を活用し、
性格と金融行動の関係を詳細に調査しています。
金融行動とパーソナリティ
主な発見
- 神経質傾向(Neuroticism)が高い人は銀行口座を持たない(Unbanked)確率が高い
- 誠実性(Conscientiousness)が高い人はクレジットカードを持つ確率が高い
- 協調性(Agreeableness)と神経質傾向が高い人はリボ払いを利用する確率が高い
- 機械学習を用いた分析により、性格特性が金融行動を予測する上で重要な要素であることが確認されています
主要な研究結果
(1)銀行口座の有無(Unbanked)
- 性格特性は、銀行口座を持つかどうかにあまり影響しない。
- 所得が低い、教育レベルが低い、金融リテラシーが低い人が無銀行である傾向が強い。
- 唯一、誠実性(Conscientiousness)が高い人ほど銀行口座を持つ傾向があるが、影響は小さい。
(2)クレジットカードの所有(Credit Card Holder)
- 性格特性は、クレジットカードを持つかどうかにも大きな影響はない。
- 年齢・教育レベル・所得・金融リテラシーの影響が強い。
- 唯一、協調性(Agreeableness)が高い人はクレジットカードを持たない傾向がある。
(3)クレジットカードのリボ払い(Credit Card Revolver)
- 性格特性が最も大きな影響を与える金融行動。
- 誠実性(Conscientiousness)が低い人ほど、リボ払いを利用する傾向がある。
- 開放性(Openness)が高い人ほど、リスクを取る傾向があり、リボ払いをする可能性が高い。
- 協調性(Agreeableness)が高い人も、リボ払いを利用しやすい。
- 機械学習の結果も、誠実性がリボ払いを予測する最も重要な要因であることを示している。
性格特性が金融行動に与える影響があるという結果から、
詳細について見ていきます。
口座の有無・カードの所有・リボ払い

Table 1は、銀行口座の有無(Banked / Unbanked)、
クレジットカードの所有(Credit Card Adopter / Non-Adopter)、
およびクレジットカードのリボ払い利用(Revolver / Non-Revolver)に関する人口統計学的な変数の平均値を示しています。
主要な人口統計学的要因の影響
(1) 年齢(Age)
- 銀行口座の有無(Banked vs. Unbanked):
- 無銀行者(Unbanked)は平均年齢が41.45歳で、
銀行口座を持つ人(Banked)の49.13歳より若い(p < 0.01)。 - 25~34歳の層が無銀行者に多い(36%)。
- 無銀行者(Unbanked)は平均年齢が41.45歳で、
- クレジットカード所有(Credit Card Adopter vs. Non-Adopter):
- クレジットカード所有者の平均年齢は50.36歳、非所有者は43.46歳で、
所有者の方が年齢が高い(p < 0.01)。
- クレジットカード所有者の平均年齢は50.36歳、非所有者は43.46歳で、
- リボ払い利用(Revolver vs. Non-Revolver):
- リボ払いを利用している人の平均年齢は49.51歳で、
利用していない人(50.95歳)よりわずかに若い(p < 0.10)。
- リボ払いを利用している人の平均年齢は49.51歳で、
(2) 教育(Education)
- 無銀行者(Unbanked)
- 高卒以下の割合が無銀行者では非常に高い(82%)。
- 大卒以上の割合はほぼ皆無(1%)。
- クレジットカード所有
- 大卒以上の割合がクレジットカード所有者で高い(所有者の20%が大学院卒、非所有者では3%)。
- リボ払い利用
- 大卒以上の割合はリボ払い非利用者の方が高い。
(3) 性別(Gender)
- クレジットカード所有者
- 女性の方がクレジットカードを所有している割合が高い(53% vs. 47%)。
- リボ払い利用
- 男性よりも女性の方がリボ払いを利用する傾向が強い(p < 0.01)(男性41%、女性59%)。
(4) 人種・民族(Race / Ethnicity)
- 無銀行者
- 無銀行者の37%が黒人(p < 0.01)。
- 銀行口座を持つ人は主に白人(72%)。
- クレジットカード所有
- 黒人のクレジットカード非所有率が高い(24%)。
- リボ払い利用
- 黒人はリボ払いを利用する傾向が強い(16% vs. 6%, p < 0.01)。
(5) 雇用状況(Work Status)
- 無銀行者
- 無銀行者の24%が失業者(p < 0.01)。
- クレジットカード所有
- クレジットカード所有者のほとんどは雇用されている(61%)。
- クレジットカード非所有者の32%が障害・その他の理由で働いていない。
- リボ払い利用
- リボ払いを利用する人の方が、雇用率が低い(p < 0.01)。
(6) 既婚率(Marital Status)
- 無銀行者
- 48%が未婚者(p < 0.01)。
- クレジットカード所有
- 59%が既婚者であり、未婚者のクレジットカード所有率が低い。
- リボ払い利用
- 離婚者はリボ払いを利用する傾向がある(17% vs. 9%, p < 0.01)。
(7) 居住地(Urbanicity)
- 無銀行者
- 無銀行者の割合は、都市部(Urban)よりも農村部(Rural)で高い(p < 0.10)。
- クレジットカード所有
- 都市部の住民はクレジットカード所有率が低い(p < 0.05)。
主な結論
- 無銀行者(Unbanked)は、若年層(特に25~34歳)、教育レベルが低い、
黒人の割合が高い、失業している、未婚者が多い。 - クレジットカード所有者は、年齢が高く、
教育レベルが高く、雇用されている人が多い。 - クレジットカードのリボ払い利用者(Revolver)は、
黒人、女性、低所得者、失業者、離婚者に多い。 - 都市部の住民はクレジットカード所有率が低めで、リボ払い利用者の割合が高い。
このデータは、
金融行動が社会経済的要因や人口統計的特性によって大きく影響されることを示しており、
特に金融リテラシー向上や銀行口座普及のための政策立案において重要な示唆を提供すると考えられます。
Table 1の結果とビッグファイブ性格特性
Table 1のデータとビッグファイブ性格特性を関連付けることで、
性格特性が金融行動や社会経済的要因にどのように影響を与えているかを考察できます。
1. ビッグファイブとTable 1の関連性のポイント
Table 1では、銀行口座の有無(Banked / Unbanked)、クレジットカードの所有(Adopter / Non-Adopter)、
リボ払いの利用(Revolver / Non-Revolver)という金融行動と、
年齢、教育、性別、人種、雇用状況などのデモグラフィックな要素の関係を示しています。
ビッグファイブ(Big Five)の性格特性と組み合わせることで、
以下のような関連性が考えられます。
2. 銀行口座の有無(Banked / Unbanked)とビッグファイブ
(1) 神経質傾向(Neuroticism)
▶︎ 無銀行者(Unbanked)と関連が強い
- Table 1では、無銀行者は若年層(25-34歳)、教育レベルが低い、失業者が多い、黒人の割合が高い。
- 機械学習分析(Appendix A)では、神経質傾向(Neuroticism)が無銀行者である最も大きな要因であることが示されている。
- 神経質傾向が高い人は、不安やストレスを感じやすく、計画的な金融行動を取るのが難しい可能性がある。
→ 金融サービスへのアクセスや信用制度への不安が、銀行口座を持たない原因の一つとなる可能性がある。
(2) 誠実性(Conscientiousness)
▶︎ 銀行口座を持つ人(Banked)と強い関連
- Table 1では、銀行口座を持つ人は高学歴・高所得であり、雇用されている割合が高い。
- 誠実性が高い人は、計画的で責任感があり、貯蓄や金融管理をしっかり行う傾向がある。 → 銀行口座を持つ人の特徴と一致している。
3. クレジットカードの所有(Credit Card Adopter)とビッグファイブ
(1) 誠実性(Conscientiousness)
▶︎ クレジットカードを持つ人(Adopter)と強い関連
- Appendix Aの機械学習結果では、クレジットカードを持つかどうかを決定する最大の要因は誠実性(Conscientiousness)である。
- Table 1では、クレジットカード所有者は高学歴・高所得であり、雇用されている割合が高い。 → 誠実性が高い人ほど、クレジットカードを適切に管理できるため、信用を得やすく、所有率が高くなる。
(2) 神経質傾向(Neuroticism)
▶︎ クレジットカードを持たない人(Non-Adopter)と関連
- 機械学習の結果では、神経質傾向が高いとクレジットカードを持たない傾向がある。
- Table 1では、クレジットカード非所有者は低学歴・低所得で、失業率が高い。 → 神経質傾向が高い人は、金融リスクを回避しようとするため、クレジットカードを敬遠する可能性がある。
4. クレジットカードのリボ払い(Revolver)とビッグファイブ
(1) 誠実性(Conscientiousness)
▶︎ リボ払いを利用しない人(Non-Revolver)と強い関連
- 機械学習結果では、誠実性がリボ払いをしない最大の要因である。
- Table 1では、リボ払い非利用者は高学歴・高所得で、雇用率が高い。
→ 誠実性が高い人ほど、計画的にお金を管理し、リボ払いを避ける傾向がある。
(2) 神経質傾向(Neuroticism)
▶︎ リボ払いを利用する人(Revolver)と関連
- 機械学習の結果では、神経質傾向がリボ払い利用の2番目に大きな要因。
- Table 1では、リボ払い利用者は低学歴・低所得で、失業率が高く、女性の割合が高い。
→ 神経質傾向が高い人は衝動的な決断をしやすく、ストレスによる浪費や借金をする可能性が高い。
(3) 協調性(Agreeableness)
▶︎ リボ払いを利用する人(Revolver)と関連
- 機械学習の結果では、協調性がリボ払い利用の3番目に大きな要因。
- 協調性が高い人は、周囲との調和を優先し、お金の貸し借りや衝動買いをしやすい傾向がある。
→ 「頼まれたら断れない」「周囲と同じようにクレジットを使う」といった行動が、リボ払い利用につながる可能性がある。
5. 結論
Table 1の人口統計データとビッグファイブの性格特性の関連性をまとめると、以下のことが言える。
金融行動 | ビッグファイブの影響 |
---|---|
銀行口座を持たない(Unbanked) | ▲ 神経質傾向(Neuroticism)が高いと銀行口座を持たない。 |
銀行口座を持つ(Banked) | ◾️ 誠実性(Conscientiousness)が高いと銀行口座を持ちやすい。 |
クレジットカードを持たない(Non-Adopter) | ▲ 神経質傾向(Neuroticism)が高いと持たない傾向。 |
クレジットカードを持つ(Adopter) | ◾️ 誠実性(Conscientiousness)が高いと持つ傾向。 |
リボ払いを利用する(Revolver) | ▲ 神経質傾向(Neuroticism)と協調性(Agreeableness)が高いと利用しやすい。 |
リボ払いを利用しない(Non-Revolver) | ◾️ 誠実性(Conscientiousness)が高いと利用しない。 |
この研究から、金融行動の背後には、年齢や学歴、所得だけでなく、
個人の性格特性が大きく影響していることが分かります。
特に誠実性が高い人は健全な金融行動を取り、
神経質傾向が高い人はリスク回避や衝動的な支出をする傾向がある。
これは、金融教育やサービス提供において、
個々の性格特性を考慮したアプローチが有効であることを示唆している。
金融行動にも性格特性の影響を受けることがわかっています。
最近は、日本でも学生さんに金融教育をしていますが、
ここまで詳しく調べて、教育をしていないのでは。
私たちの日常にビッグファイブ分析はとても深く関わってくるのです。
海外ではビッグファイブ分析は私たちの日常生活をよくするために、
使われており、研究されています。
こういったデータなや事例を使って、
ビジネスに応用していくことは、今や当たり前に行われています。
デジタルとアナログの融合が新しい価値を生み出しています。
デジタルだけでは決して進歩してはいきません。
使いこなせるアナログがなければ、デジタルだけは進まないのです。
勘と経験も大切ですが、そこにデータという知見を合わせることで、
より最適な判断ができるようになります。
あなたなら、どんな金融教育ができると考えますか。
最後までご覧いただきありがとうございます。
参考資料
サリバン, R. & ヒッチェンコ, M.(2023). 『性格特性と金融成果(Personality Traits and Financial Outcomes)』, ボストン連邦準備銀行, 2024年3月19日アクセス.
https://www.bostonfed.org/publications/research-department-working-paper/2023/personality-traits-and-financial-outcomes.aspx
ビッグファイブと金融行動2へつづく