ビッグファイブ性格特性で離婚の可能性がわかる?

「Does Divorce Change Your Personality? Examining the Effect of Divorce Occurrence on the Big Five Personality Traits Using Panel Surveys from Three Countries」
(離婚は性格を変えるのか?ビッグファイブ性格特性への離婚の影響を3か国のパネル調査を用いて検証する)
という研究論文です。

ビッグファイブで離婚リスクを科学的に予測

  • 目的: 離婚が性格に及ぼす影響を、ビッグファイブ性格特性(外向性、調和性、誠実性、情緒安定性、開放性)を対象に、
    オーストラリア、ドイツ、英国の大規模なパネル調査データを用いて検証。
  • 方法: 結婚生活中に離婚を経験した人と、
    結婚を維持した人の性格変化を比較。
  • 分析手法: 潜在差分スコアモデルを用い、
    性格変化の年齢、性別、国別の差異も評価。

離婚とビッグファイブ性格特性(外向性、調和性、誠実性、情緒安定性、開放性)との間に一貫した関連性は見られませんでした

具体的なポイントは次の通りです。

主な発見の詳細:

  1. 一貫した性格変化の欠如:
    • 離婚後の性格変化は国や性別によって異なり、
      再現可能な変化はほとんど確認されませんでした。
  2. 部分的な変化の例:
    • 調和性の増加:
      • オーストラリアとドイツの男性では、
        調和性のわずかな上昇が観察されました。
    • 開放性の増加:
      • オーストラリアの男性は開放性が上昇しましたが、
        他の国では確認されませんでした。
    • 誠実性の低下:
      • オーストラリアの女性の誠実性が低下しましたが、
        再現性はありませんでした。
  3. 性別による違い:
    • 男女間の性格変化はほとんど見られず、
      例外的に男性の調和性の増加が確認された程度です。
  4. 選択効果の可能性:
    • 離婚後の変化よりも、もともと性格特性が異なる人が離婚しやすい
      「選択効果」が影響している可能性が示唆されました。
    • 特に外向性、開放性が高い人は離婚のリスクが増す一方、
      調和性、誠実性、情緒安定性が高い人は離婚リスクが低いことが確認されました。

離婚と性格

  • 離婚は性格を恒久的に変える要因ではないと考えられます。
    変化があったとしても限定的であり、性格の変化はむしろ
    「離婚する人がもともと持つ性格特性」による選択効果の方が大きい可能性があります。
  • 例外的に、調和性が一部の国と性別で増加しましたが、全体的な影響は小さく、
    再現性のある証拠は見つかりませんでした。

選択効果 (Selection Effect) とは?

選択効果とは、特定の性格特性を持つ人が、
特定の人生の出来事(この場合は離婚)を経験しやすいという理論です。

この効果は、離婚が性格を変える「社会化効果 (Socialization Effect)」とは対照的な視点です。

つまり、離婚によって性格が変わるのではなく、
離婚する人はそもそも性格が異なるために離婚が起こる可能性がある、
という考え方です。

選択効果のメカニズムと解釈:

  1. パートナー選びと性格の一致:
    • 性格が似ている人が結婚する傾向がある(ホモガミー効果)が確認されています。
      しかし、外向性や開放性が高い人同士では、双方が新しい刺激を求めるため、
      関係が安定しにくい可能性があります。
  2. 関係のマンネリ化と変化への欲求:
    • 開放性や外向性が高い人は現状維持に満足せず、
      変化を求めるため、結婚が安定せず、離婚につながりやすいと考えられます。
  3. 性格変化の不均一性:
    • 選択効果が強い場合、結婚する段階で性格が異なるため、
      離婚そのものが性格を変えるわけではなく、
      「もともとの性格」がその後の人生の選択に影響することが示唆されます。

3. 具体的な統計的結果:

選択効果に関連するビッグファイブ特性の統計的有意性:

性格特性離婚リスクの方向性関連する統計結果 (b値, p値, β値)
外向性 (Extraversion)離婚リスク増加b = 0.142, p < 0.05 (UKサンプル)
開放性 (Openness)離婚リスク増加b = 0.144, p = 0.011 (豪男性)
調和性 (Agreeableness)離婚リスク減少b = -0.151, p = 0.011 (独男性)
誠実性 (Conscientiousness)離婚リスク減少b = -0.116, p = 0.031 (豪女性)
情緒安定性 (Neuroticism)離婚リスク増加b = 0.193, p = 0.001 (豪サンプル)

統計的有意性の指標「p値」と「b値」の簡潔な説明


1. p値 (p-value): 結果が偶然かどうかを示す指標
  • 意味: 変数間に関連がないと仮定した場合に、観測されたデータが偶然発生する確率。
  • 基準: 小さいほど偶然ではない → 統計的に意味がある。
    • p < 0.05: 有意 (偶然の確率5%未満)
    • p < 0.01: 非常に有意
    • p < 0.001: 極めて有意
  • 例: p = 0.011 → 偶然の確率が1.1% → 有意 (p < 0.05)

2. b値 (回帰係数): 影響の大きさと方向を示す指標
  • 意味: 説明変数が変化することで、従属変数がどのくらい増減するかを示す。
  • 解釈:
    • b > 0: 増加 (プラスの影響)
    • b < 0: 減少 (マイナスの影響)
  • 例:
    • b = 0.144 → 開放性スコアが 0.144 単位増加
    • b = -0.116 → 誠実性スコアが 0.116 単位減少

値の意味

  • p値: 結果が偶然である確率 → 小さいほど意味がある。
  • b値: 影響の強さと方向 → プラスかマイナスかを見る。

これらを組み合わせることで、データ間の関係がどれくらい強いかを評価します。

ビッグファイブ因子の選択効果を考察

  1. 外向性と開放性:
    • 開放性と外向性が高い人は、離婚リスクが統計的に有意に増加しました。
    • 新しい出会いや経験を求める性質が、結婚の安定性を損なう可能性があります。
  2. 調和性と誠実性:
    • 調和性と誠実性が高い人は、離婚リスクが統計的に有意に減少しました。
    • 調和性が高い人はパートナーとの対立を避け、誠実な人は責任感を持って関係維持に努めるため、結婚生活が安定する傾向が見られました。
  3. 情緒安定性 (逆の神経症的傾向):
    • 情緒安定性が低い(神経症的傾向が高い)人は、感情的な衝動や不安から離婚リスクが増加しました。

選択効果の意味すること:

  • 結婚生活を成功させるには、お互いの性格特性を理解し、適応する努力が必要です。
  • 自己成長や関係の維持の努力は、外向性や開放性が高いパートナー同士では特に重要であり、
    常に刺激を与え合うことが結婚の安定化に寄与します。

5. 離婚後の性格変化と選択効果の比較

  • 離婚の発生前に、すでにこれらの性格特性の違いが観察されたため、
    選択効果の影響が大きいと判断されました。
  • 離婚そのものが性格を変えたと見られるのは、
    「調和性の増加 (男性のみ)」が一部の国で観察された程度であり、
    その他の変化は見られませんでした。

選択効果の有力性

  • 分析結果は、選択効果が強く影響していることを支持しています。
    つまり、「離婚が性格を変える」のではなく、「離婚する人はもともと性格が異なる」ため、
    性格の違いが離婚リスクの差異を生むと結論づけられました。
  • 再現性: 調和性の増加など、いくつかの性格変化が観察されましたが、
    サンプル間での一貫性は確認されませんでした。

研究での選択効果の発見

研究結果では、選択効果として以下の性格特性が特に注目されました。

選択効果に関する学術的裏付け

  • 研究内では、ビッグファイブ性格特性が
    離婚のリスク要因として作用する可能性が統計的に示されました。
  • 離婚による性格変化の一貫性が見られなかったため、
    離婚そのものが性格を変える」という仮説よりも、
    性格が離婚の発生を予測する」という選択効果がより強力な説明であると結論づけられました。

ビッグファイブ性格特性と離婚リスク

  1. 離婚リスクが高まる性格特性:
    • 外向性 (Extraversion):
      • 社交的で新しい出会いや刺激を求める性格のため、
        結婚の安定性が低下する可能性があります。
      • 外向的な人は友人のネットワークを広げるため、
        パートナー以外の人と新しい関係を築くリスクが増えます。
    • 開放性 (Openness to Experience):
      • 新しい経験や変化に対する好奇心が強く、
        結婚生活のルーチン化を嫌う傾向があります。
      • 開放性の高い人はパートナー以外の新しい価値観や経験を求め、
        関係の安定を損なうリスクが高まります。
  2. 離婚リスクが低くなる性格特性:
    • 誠実性 (Conscientiousness):
      • 責任感が強く、コミットメントを維持する意欲が高い人は、
        結婚生活を安定させる傾向があります。
    • 調和性 (Agreeableness):
      • 他人の気持ちに配慮し、対立を避ける性格は、
        結婚生活においてパートナーとの良好な関係を築くのに役立ちます。
    • 情緒安定性 (Emotional Stability/Low Neuroticism):
      • 感情の浮き沈みが少ないため、衝動的な離婚を避ける傾向があります。

離婚するかもしれないと予測できることは、一人ひとりに意味が違ってくるものになるでしょう。

世間では相性と言われるものがあります。
相性とは以前もお伝えしたのですが、相手との距離の取り方であると言えます。

私たちは自己理解ができていないということをまず認識することです。
だから相手も自分と同じ感覚だろうと思い、距離の取り方を間違えて、
仲違いをしてしまったなんてこと、多くの人が経験しています。

自分を知ることで相手と違うことがわかります。まずは己を知る。
人間関係は孫氏の兵法「彼を知り己を知れば百戦殆からず」
という有名な言葉で説明されるのではないでしょうか。

ビッグファイブ分析で自分を知り相手を知ることで、
私たちの日常をより有意義なものにしてくれる。
私はそう確信しています。
たくさんの方にこのビッグファイブを知っていただき、
皆さんの日常がより良くなればと常に願いながら、
活動しております。

最後までご覧いただきありがとうございます。

参考資料

スピキック, S., モーテルマンス, D., & パステールズ, I. (2020). 『離婚は性格を変えるのか? ビッグファイブ性格特性への離婚の影響を3か国のパネル調査を用いて検証する』, 2024年12月8日アクセス. https://www.researchgate.net/publication/346443132