賃上げをすることにはいろいろな理由があります。
中小企業が行うのが防衛的な賃上げです。
どのようなものなのかみていきましょう。
「防衛的な賃上げ」とは
企業が業績の改善が見られないにもかかわらず、
外部環境や労働市場の変動、
物価上昇や人手不足といった状況に対処するために、
やむを得ず賃上げを行うことを指します。
これは企業が競争力を維持し、
労働力を確保するために最低限の措置として行われる賃上げであり、
業績の向上を背景とした「前向きな賃上げ」とは対照的です。
企業に与える影響:
コスト増加:
防衛的な賃上げは、
企業の収益が改善していない状況下で賃金を引き上げるため、
利益率が圧迫されるリスクがあります。
特に中小企業では、
このコスト増加を価格に転嫁するのが難しい場合、
経営を圧迫する可能性があります。
従業員確保:
防衛的な賃上げを行うことで、
他社との賃金競争に遅れを取らずに済むため、
人手不足や離職率の上昇を防ぐ効果があります。
特に労働市場がタイトな場合、
賃金を上げることは従業員の流出を防ぐための防衛策として重要です。
企業の競争力維持:
賃金引き上げにより、
企業は優秀な人材を確保し、
モチベーションを維持することが可能です。
ただし、業績が改善しないまま防衛的な賃上げを続けると、
長期的には企業の競争力が低下するリスクも考えられます。
短期的な対応:
防衛的な賃上げは短期的な効果が期待されますが、
長期的には企業が収益を改善しなければ、
継続的な賃上げを維持するのが困難となります。
そのため、
持続可能な経営のためには、
賃上げに見合う生産性向上や業績の改善が求められます。
防衛的な賃上げは、
企業が厳しい経済環境の中で労働力を維持するための戦略ですが、
コスト圧迫や利益率の低下というリスクを伴い、
長期的な解決策にはならない可能性があります。
「前向きな賃上げ」とは
企業の業績が好調、
もしくは改善しているために実施される賃上げを指します。
これは、
企業が従業員に対して感謝やインセンティブを提供する意図で行われ、
将来の成長や発展を見据えた戦略的な賃上げです。
前向きな賃上げの特徴
業績の向上が背景:
業績が改善している、
あるいは将来的な成長を見込んで行われる賃上げであり、
財務的な余裕を持って行われる。
従業員のモチベーション向上:
賃上げを通じて従業員のモチベーションやエンゲージメントを高め、
生産性を向上させることを期待します。
企業に及ぼす影響
従業員の満足度向上:
賃上げが従業員にとって明確な報酬となり、
働きがいを高めます。
特に、
企業が業績を理由に賃上げを行うことで、
従業員は自分たちの努力が企業の成功に貢献していると感じやすくなり、
エンゲージメントが向上します。
人材の確保と離職率の低下:
給与の引き上げにより、
競争力のある労働市場でも優秀な人材を引きつけやすくなり、
既存の従業員の離職率も下がります。
特に、
業績が好調な時期に行われる賃上げは、
企業が従業員に対して長期的な成長を期待している
というメッセージとして受け取られることが多いです。
生産性と業績の向上:
前向きな賃上げは、
従業員の意欲を高め、
より高い成果を期待するための一つの手段です。
賃金に対する報酬感が従業員のパフォーマンス向上に繋がり、
結果として企業の全体的な業績向上にも寄与します。
企業のイメージ向上:
賃上げを通じて
「従業員を大切にする企業」
というイメージが外部にも伝わり、
採用市場でのブランド力向上にも繋がります。
また、消費者や取引先からも、
健全な経営体質を持つ企業として信頼を得やすくなります。
長期的な成長戦略の一環:
前向きな賃上げは、
短期的なコスト増加を伴う一方で、
長期的には生産性や業績向上に繋がり得るため、
企業の成長戦略の一環として重要な役割を果たします。
企業に対するリスク
コストの増加:
業績が良好な時期には問題ありませんが、
経済環境の変化や業績の悪化が起こった場合、
増加した賃金を維持するためのコスト負担が
重くなる可能性があります。
そのため、
長期的な見通しを立てた賃上げ計画が必要です。
賃上げの持続可能性:
業績が悪化した際、
賃上げを取り消すことが難しいため、
企業は一度上げた賃金を維持する
プレッシャーに直面することがあります。
これは、事業計画や財務状況に強い影響を与えます。
「前向きな賃上」ができれば
前向きな賃上げは、
企業が成長期において行う戦略的な賃上げであり、
従業員のモチベーション向上、
離職率の低下、
企業イメージの向上など多くのプラスの影響を及ぼします。
しかし、財務的な負担や将来のリスクも考慮し、
持続可能な形で行うことが重要です。
中小企業の賃上げ3に続く