中年期における心理的転換点のパーソナリティへの影響

10年間にわたる「ビッグファイブ」のパーソナリティ特性(神経症傾向、外向性、開放性、協調性、誠実性)の変化を調査と、
7つのタイプの心理的転換点がパーソナリティ発達に与える影響を評価する研究内容です。

では内容をみていきます。

7タイプの心理的転換点におけるパーソナリティへの影響

方法論

  • データは「Midlife in the US(MIDUS)」調査から取得され、892人の中年層を対象に実施。
  • パーソナリティ特性は自己記述形容詞を用いて測定され、
    参加者は過去12ヶ月間に経験した転換点(例:キャリアの変化、夢の実現など)を報告しています。

7つの心理的転換点

  1. キャリア(Career)
    • 仕事やキャリアに関わる転換点。例:昇進や新しい仕事の開始、職場での重大な変化など。
  2. 友人に関するショック(Upset for Friend)
    • 親しい友人や親族が自分の思っていた人物ではなかったことを知るような、ネガティブな転換点。
  3. 友人への喜び(Happy for Friend)
    • 親しい友人や親族が自分が想像していた以上に素晴らしい人物であることを発見するような、ポジティブな転換点。
  4. 自己に関するショック(Upset for Self)
    • 自分自身に関してショッキングな事実を知るような転換点。例:過去の失敗や欠点に気づく。
  5. 自己への喜び(Happy for Self)
    • 自分自身に関して良い発見をする転換点。例:自己能力や潜在力に気づく。
  6. 夢を諦める(Give up Dream)
    • 重要な夢や目標を諦めざるを得ないような転換点。
  7. 夢の実現(Fulfill Dream)
    • 重要な夢や目標を実現する転換点。

これらの転換点がパーソナリティに与える影響

  • これらの転換点の多くは、外向性や開放性に影響を与え、
    ポジティブな転換点(例:夢の実現)は一般的により高い外向性や開放性と関連していることが確認されました。
  • 一方で、ネガティブな転換点(例:夢を諦める)は、
    パーソナリティ特性に小さな影響を与える可能性があります。

各転換点の詳細

1. キャリア(Career)

  • 影響: キャリアに関する転換点は、外向性(Extraversion)や誠実性(Conscientiousness)に影響を与えることがあります。
    • ポジティブな変化: 昇進や新しいスキルの習得は、
      自己効力感(self-efficacy)を高め、外向性や誠実性を強化することがあります。
      また、これによりストレス耐性が向上し、神経症傾向(Neuroticism)の低下が期待されます。
    • ネガティブな変化: 解雇やキャリア挫折は、自己評価や自己効力感を低下させ、
      神経症傾向の増加や開放性(Openness)の減少につながる可能性があります。
  • 心理学的視点: 社会投資理論(Social Investment Theory)によれば、
    社会的役割に適応する過程で誠実性が高まるとされますが、
    逆に役割喪失(失業など)はこのプロセスを妨げる可能性があります。

2. 友人に関するショック(Upset for Friend)

  • 影響: 友人や親族に対する期待が裏切られるような出来事は、
    協調性(Agreeableness)や神経症傾向に影響を与えることがあります。
    • ポジティブな影響: 信頼に対する再評価が行われることで、
      より健全な人間関係を構築しようとする適応が促進される場合があります。
    • ネガティブな影響: 深い失望感が心理的負荷を増加させ、
      神経症傾向や疑念の増加、協調性の低下につながる可能性があります。
  • 心理学的視点: 関係性理論(Relational Theory)では、
    社会的絆の断裂が個人のストレスや孤独感を増幅させる一方で、
    対処戦略によって成長や回復のきっかけとなることもあります。

3. 友人への喜び(Happy for Friend)

  • 影響: 友人や親族が想像以上に素晴らしい人物であると知る経験は、
    外向性や開放性にポジティブな影響を与える可能性があります。
    • ポジティブな影響: 他者への信頼感が高まり、
      外向性や社会的なつながりが強化されます。
      また、新しい価値観や視点を学ぶことで、開放性も向上する可能性があります。
  • 心理学的視点: 感謝(gratitude)や共感(empathy)の増加が心理的幸福感を高め、
    パーソナリティのポジティブな変化を促進します。

4. 自己に関するショック(Upset for Self)

  • 影響: 自分自身の欠点や限界に気づく体験は、
    神経症傾向の増加や外向性の低下につながることがあります。
    • ネガティブな影響: 自己否定的な思考が強まると、
      長期的な不安感や自己効力感の低下を引き起こす可能性があります。
    • ポジティブな影響: 自己反省や自己改善への取り組みが進むことで、
      長期的には協調性や誠実性の向上が見られる場合があります。
  • 心理学的視点: 自己概念の破綻(self-concept disruption)は短期的にはストレスを引き起こしますが、
    認知再構築(cognitive restructuring)が行われると成長の機会となることがあります。

5. 自己への喜び(Happy for Self)

  • 影響: 自分自身の新たな可能性や長所に気づく体験は、
    開放性や外向性を向上させる可能性があります。
    • ポジティブな影響: 自己評価の向上が他者との関わりにも好影響を与え、
      外向性や協調性が強化されます。
  • 心理学的視点: ポジティブ心理学の研究では、
    自己認識の向上が幸福感や人生の満足度を増加させることが示されています。

6. 夢を諦める(Give up Dream)

  • 影響: 重要な夢や目標を諦めざるを得ない状況は、
    神経症傾向や誠実性にネガティブな影響を与えることがあります。
    • ネガティブな影響: 無力感や喪失感が強まり、
      長期的な目標追求能力や自己効力感が低下する可能性があります。
    • ポジティブな影響: 現実的な目標を再設定することで、
      精神的な回復力や誠実性が再び高まることがあります。
  • 心理学的視点: レジリエンス(resilience)や目標調整理論(goal adjustment theory)では、
    柔軟な目標の再設定が心理的健康を支える重要な要因とされています。

7. 夢の実現(Fulfill Dream)

  • 影響: 長年の夢や目標を実現する経験は、外向性や開放性を大幅に向上させる可能性があります。
    • ポジティブな影響: 自己効力感の向上が、
      より積極的な行動や新たな挑戦を促進します。
      また、夢を実現したことで他者と共有する喜びが外向性をさらに高めます。
  • 心理学的視点: 目標達成理論(goal achievement theory)では、
    成功体験がモチベーションを高め、さらなる成長を後押しすることが示されています。

結論と応用

これらの心理的転換点は、短期的にはストレスや挑戦を伴う場合がありますが、
適切な対処や視点の転換を通じて、
長期的にはポジティブな成長やパーソナリティ特性の向上につながることがあります。

心理学的介入や支援を活用することで、
個人が転換点をより建設的に活用できる可能性があります。

転換点が自信を成長するためのものとして捉えることで、
人生におけるポジティブなものとなり、
ネガティブなものであっても支援があることで、
回復することが可能であるということです。

最後までご覧いただきありがとうございます。

参考資料

アレマンド, M., ゴメス, V., & ジャクソン, J.J. (2010). 『中年期におけるパーソナリティ特性の発達: 心理的転換点の影響を探る』, 2025年1月10日アクセス. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5547353/

中年期(40~60歳)における心理的転換点のパーソナリティへの影響2へつづく