グローバル・ミニマム課税の導入および設備投資促進税制の拡充の詳細について、
まずはお話を進めていきます。
法人課税の改正内容と詳細解説
1. グローバル・ミニマム課税の導入
(1) 制度の概要
- グローバル・ミニマム課税は、国際的な租税回避を防ぐために、
OECD/G20が提唱するBEPS(税源浸食と利益移転)対策の一環。 - 最低税率を設定し、一定水準以下の法人税を課している国で活動する多国籍企業に対して、
その差額を補填する形で課税を行う仕組み。
(2) 具体的な仕組み
- 対象企業
- 年間連結売上高7.5億ユーロ以上(約1,000億円超)の多国籍企業。
- 主にグローバル企業や巨大テクノロジー企業が対象。
- 最低税率の設定
- 15%の最低税率を基準に、実効税率がこれを下回る場合、その差額分を追加課税。
- 課税方法
- 親会社所在地国で課税: 子会社が低税率国で活動している場合、
親会社所在地で不足分を補填課税。 - 課税権の共有: 親会社所在地が課税を行わない場合、
他の関係国が課税権を行使可能。
- 親会社所在地国で課税: 子会社が低税率国で活動している場合、
(3) 影響と課題
- 多国籍企業への影響
- 税率の低いタックスヘイブンを利用した租税回避が制限され、税負担が増加。
- 各国の税制との整合性を確保するため、複雑な会計・税務処理が必要。
- 日本国内企業への影響
- 日本企業の海外子会社や関連会社も対象となるため、
グローバル企業は対応コスト増加が見込まれる。 - 特に海外事業展開を行う企業は、詳細な税制対応計画が求められる。
- 日本企業の海外子会社や関連会社も対象となるため、
- 課題
- 実効税率15%に調整するための制度整備が各国で異なる可能性があり、
統一基準の確立が必要。 - 日本国内の多国籍企業において、コスト負担が競争力に影響する懸念。
- 実効税率15%に調整するための制度整備が各国で異なる可能性があり、
注意点
- 対象となるのは、大規模多国籍企業(売上7.5億ユーロ以上)のみで、
詳細な実施方法は各国で異なる場合があります。
- 確認が必要な点:
- 日本国内の具体的な課税手順や関連手続きの詳細は、
最終的に財務省や国税庁から発表される具体的なガイドラインによります。 - 現行の法人税制との整合性や、新たな会計基準の採用の有無も確認が必要です。
- 日本国内の具体的な課税手順や関連手続きの詳細は、
2. 設備投資促進税制の拡充
(1) 制度の概要
- 中小企業が生産性向上や地域活性化を目的として設備投資を行う際、
税負担を軽減するための優遇措置。 - 今回の改正では、対象範囲の拡大と優遇措置の強化が行われる。
(2) 具体的な内容
- 優遇措置の概要
- 設備投資を行った企業に対し、特別償却や税額控除を適用。
- 特別償却: 設備投資額の最大30%を一括で償却可能。
- 税額控除: 設備投資額の7%~10%を法人税額から控除可能。
- 設備投資を行った企業に対し、特別償却や税額控除を適用。
- 対象設備
- 生産性向上設備: 新技術や省エネ設備、デジタル化を目的とした機器やシステム。
- 地域活性化設備: 地域社会や地方創生に寄与する施設や設備。
- 対象企業
- 中小企業基本法で定義される資本金1億円以下の企業が中心。
- 地方経済を支える中小企業が主な対象。
- 申請要件
- 投資計画の提出および、投資対象が生産性向上や地域振興に寄与することを証明。
- 税務署への申請が必要で、税理士などの専門家のサポートが推奨される。
(3) 中小企業が設備投資を促進できる仕組みとなっているか
メリット
- 初期投資負担の軽減
- 設備投資の税負担が軽減されるため、資金に余裕がない中小企業でも投資しやすくなる。
- 地域振興とデジタル化推進
- 地方創生や地域産業のデジタル化が進むことで、競争力向上が期待される。
- 生産性の向上
- 新設備の導入により効率化が進み、業務コスト削減や利益率の向上が可能。
課題
- 利用率の低さ
- 税制優遇措置の認知度が低く、申請が複雑なため利用率が上がらない可能性。
- 税理士やFPのサポートなしでは手続きが難しい場合が多い。
- 初期投資のハードル
- 税制優遇が適用されるとはいえ、資金不足や経済的不安から設備投資に踏み切れない中小企業も多い。
- 計画策定の難しさ
- 投資計画の策定や要件を満たすための手続きが煩雑で、負担が重いと感じる企業もある。
注意点
- 確認が必要な点:
- 対象となる設備や要件(生産性向上設備、地域振興設備など)の定義が詳細に示される予定であり、
現時点での一般的な解釈が具体的にどう適用されるかは確認が必要です。 - 手続きの簡素化や適用条件の実効性について、制度利用の具体例や実績が重要です。
- 対象となる設備や要件(生産性向上設備、地域振興設備など)の定義が詳細に示される予定であり、
3. FPの観点から
- グローバル・ミニマム課税への対応
- 海外進出企業には、グローバル課税に対応した税務戦略を再構築する必要がある。
- 会計基準の整備や税務リスクの評価を早期に行うべき。
- 設備投資促進税制の活用
- 中小企業は専門家(税理士)に相談し、設備投資のメリットを明確化。
- 税制優遇の申請手続きや計画書作成は、
FPや税理士の助言を受けることでスムーズに進められる。
- 地域創生への貢献
- 地方中小企業は、地域資源や産業に基づいた投資計画を策定し、
地方創生の観点から税制優遇を活用。
- 地方中小企業は、地域資源や産業に基づいた投資計画を策定し、
- 法改正は施行されるまで細部が変更される可能性がある:
- 法案が通過する段階や実施運用の詳細が変更されることがあるため、
最終的な内容は政府の公式発表を確認する必要があります。
- 法案が通過する段階や実施運用の詳細が変更されることがあるため、
- 対象企業や設備の定義が異なる場合がある:
- グローバル・ミニマム課税については、
多国籍企業の活動内容や所在国の課税状況による影響が異なります。 - 設備投資促進税制は、企業が計画する投資内容や規模によって適用可否が変わるため、
詳細要件の確認が必要です。
- グローバル・ミニマム課税については、
4. まとめ
令和7年度税制改正の法人課税において、
グローバル企業と中小企業の双方が影響を受ける内容となっています。
- グローバル・ミニマム課税は国際競争力と税務負担のバランスが課題。
- 設備投資促進税制は中小企業にとって大きなチャンスだが、
利用を進めるための周知と手続き支援が必要です。
最後までご覧いただきありがとうございます。
参考資料